続々と話題作が放送され、近頃毎週のように盛り上がりをみせている「金曜ロードショー」。

今夜からは「3週連続細田守SP」として、「おおかみこどもの雨と雪」、「バケモノの子」、「サマーウォーズ」が放送されます。

作品ファンにとって嬉しい企画である一方、しかし中には、『名前はよく聞くしタイトルは知っているけど、実は細田監督をあまりよく知らない…』という人もいるかもしれません。

一体細田守監督とは、これまでどんな作品を手掛けてきて、どんな評価を受けてきた監督なのでしょうか。いくつかの代表作と共に概観してみましょう。

よく知らないと思っていた人にも、“無意識に知っていた”細田守監督作品が、きっとみつかると思います。

■この夏みておきたい代表作:「サマーウォーズ」

恐らく、細田監督について詳しく知らない人や普段アニメをみないという人でも、一番ぴんとくるタイトルが、この「サマーウォーズ」ではないでしょうか。

本作は、憧れの先輩に“フィアンセのふり”を頼まれた主人公の男子高校生が、紹介された先の先輩の親戚達と共に、現実世界を巻き込んだネット空間での大事件に挑む物語。

旧家の親族一同が集まる現実の田園風景と近未来的なオンライン空間という両極端な世界のギャップと融合、そこで繰り広げられる熱い“合戦”が、アニメファンはもちろん、幅広い観客層から今も高い支持を得ている人気作です。

当時からジブリ作品などで声優としても活躍していた主演の神木隆之介さんへの評価も高く、彼がその後声優としても更に活躍の機会を増やすひとつのターニングポイントでもあったと思います。

そんな本作は、今夜からの「3週連続細田守SP」では最終週の7月16日に放送予定。

劇中の季節にもぴったりなのはもちろん、同日に公開予定の細田守監督最新作「竜とそばかすの姫」同様、ネット空間と現実世界を描いた作品でもあるので、初見の人にとってもこのタイミングでチェックするには最適な作品かもしれません。

■同じ主題が異なる角度から描かれる:「おおかみこどもの雨と雪」と「バケモノの子」

「3週連続細田守SP」で同じく放送予定のこの2作も、「サマーウォーズ」に続いて、タイトルを知る人が多い作品ではないでしょうか。

今夜放送される「おおかみこどもの雨と雪」は、夫を亡くした若い母親が、悩み奮闘しながら二人の子供達を育てていく物語。

…と聞くと、シングルマザーの子育てを描いた社会的な人間ドラマが想像されるかもしれませんが、主人公が母親になる経緯や子供達の成長に伴う悩みにはとても“変化球”なファンタジー色もあり、実写映画等ではなかなか味わえない新鮮で複雑な読後感が味わえる作品です。

来週放送予定の「バケモノの子」は、人間の子供と“バケモノ”の熊男が、ぶつかり合いながらも絆を紡いでいく物語。

血の繋がりどころか生きる世界すら違う二人がたどり着く、不器用だけど血縁以上に強い親子の繋がりに家族の形の多様性がみえたり、そこまで深読みせずとも、魅力的なキャラや迫力のアクションといったエンタメ要素も満載で、子供も一緒に楽しめる作品です。

共に“親子”という共通の主題を持ちながらも、かなり違った角度でそれが描かれている両作。

実は他にも宮崎あおいさんと染谷将太さんがそれぞれの作品で全く違ったキャラクターを演じているという共通点もあるので、今週と来週の放送で見比べてみるのも面白いかもしれません。

■小規模上映から話題作に:「時をかける少女」

この「時をかける少女」(時かけ)は、タイトルこそ知っていたけど『これも細田守監督作品だったんだ』と、“無意識に知っていた”方も少なくないと思います。

実写化もされた筒井康隆さんによる同名小説を原作とする本作は、原作小説の少し未来にあたる時代を舞台に、高校生の主人公達による、時をかける不思議な能力をきっかけとした友情や恋愛の葛藤を瑞々しく描いたSF青春物語。

2006年の公開当時、その評判の高さによって、わずか6館での劇場上映から100館以上約10ヶ月のロングランを記録するほどの話題作となり、それ以降、細田監督が長編アニメ映画の監督として名前が知られていく大きなきっかけともなった作品です。

「未来で待ってる」という有名なセリフや奥華子さんによる主題歌「ガーネット」は、公開当時丁度高校生だった筆者の周りでも、本作をみたことがない人達でさえ知っているほどの認知度の高さでした。

■「デジモン」「おジャ魔女」「ナージャ」:更に“無意識に知っていた”?細田守監督作品

この辺りのタイトルも、当時リアルタイムでみていた世代にとっては「時かけ」以上に、“無意識に知っていた”細田守監督による作品達ではないでしょうか。

「時かけ」とのリンクも感じられる「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」40話の「どれみと魔女をやめた魔女」や、「明日のナージャ」のOPなどは、制作から10年以上を経て改めて映画祭で紹介されるなど、業界内やファンの間で今も評価されています。※

また、同じころ制作された「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」は、当時まだISDNを使っていた時代を描いていながらも、既に「サマーウォーズ」を彷彿させるネット空間が描かれていたりと、今みても改めて新鮮に楽しめる作品です。

今でこそオリジナルのアニメ映画を多く手掛ける監督として知られていますが、こうしてみると、細田監督はそれ以前から幅広いジャンルの映像作品を手掛けており、また我々も知らないうちからそれらの作品を無意識に楽しんでいたことがよく分かります。

※「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」では監督(シリーズディレクター)ではなく各話演出、「明日のナージャ」OPとEDでは演出・絵コンテ

■実は「金ロー」視聴者は誰でも知っていた?

そして恐らく、普段アニメをみない人や細田監督作品を全く知らない人が、今一番“無意識に知っている”監督作品がこちらだと思います。

現在放送されている金曜ロードショーOPの“少女が扉を開けてのぞき込むと赤いドレスを着た女性達がタイトルロゴの映るスクリーン前に集まっている…”というショートアニメ。

実はこれを手掛けているのも細田守監督なのです。

気にしてみないとなかなか気づけないので、こちらは知る人ぞ知る“サブリミナル細田監督作品”となっています。

■無色であり多彩

時にアニメ監督には、「〇〇監督が作るのはこういう作品!」といった、世間による“作品イメージ”も付与されがちです。

しかし上記作品ラインナップからも分かる通り、どちらかというと細田監督は、共通するテーマやリンクする描写はあるものの、作品の色は多様で、だからこそ作品毎に観客の反応や主要なファン層も大きく変わる珍しい監督でもあると思っています。

捉えどころのない無色であり、しかしかつ多彩でもある。

だからこそアニメファン以外の様々な層にまで、『実はこれも細田監督作品だったんだ』と、作品が無意識に知られていることが多い存在なのかもしれません。

それもあって、細田監督作品を気に入るかどうかは、みる人の好みや作品との相性でかなり変わるところがあります。選りすぐりの作品が放送される「3週連続細田守SP」は、自分好みの作品に改めて出合えるいい機会になるのではないでしょうか。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】