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京アニ最新作:映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」はどんな作品?

小新井涼アニメウォッチャー
(筆者撮影)

京都アニメーションの最新作・劇場版アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-」が、先週9月6日に公開されました。

3週間限定で劇場上映される「外伝」と称された本作では、2018年に放送されたテレビアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のその後のエピソードが描かれています。

この「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とは、一体どのような作品で、「外伝」である本作は、初見の人が観ても楽しめる作品なのでしょうか。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とは

”ヴァイオレット・エヴァーガーデン”は、本作の主人公である少女の名前です。

舞台となるのは19世紀のヨーロッパを連想させる、とある時代のとある国。

大きな戦争の終結後、ガス灯が電気灯に、電流が電波に変わりゆく時代を背景に、戦争の面影を残しながらも訪れた平穏の中で生きていく人々と主人公の姿を描いた群像劇となっています。

初見でも楽しめるのか?

テレビシリーズを視たことがない人にとって一番気になるのは、「外伝」である本作から観ても楽しめるのか、というところだと思います。

結論からお伝えすると、本作は「外伝」からでも十分に楽しめる作品です。

確かに、物語の世界観や用語、テレビシリーズで描かれてきた主人公の背景を知っているからこそ味わえる感動というのはありました。

しかし「外伝」というだけあって、本作で中心的に描かれるのは、劇場版で初めて登場する2人の少女達の物語であり、テレビシリーズの核であった主人公の物語は知っている人は気づける程度にとどめられています。

2人の少女の生い立ちや境遇に関しては劇場版で全て語られますので、彼女たちの物語として鑑賞をすれば、テレビシリーズを知らなくても”置いてけぼり感”で物語に感情移入できない、なんてこともないでしょう。

もしも内容を少しでも知ったうえで鑑賞したい場合には、テレビシリーズの配信はもちろん、事前にこちらの公式動画をご覧いただくのもいいかもしれません。

5分で分かるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第1回(外部リンク)

5分で分かるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第2回(外部リンク)

”世界中で評価される京アニ”とは

本作は、京アニの最新作ということで、どうしても従来とは違った注目も集まる作品となりました。

しかしその一方で、同じく現在公開中の「天気の子」や「ONE PIECE STAMPEDE」、「トイ・ストーリー4」といったマスにも向けた作品よりは間口が狭く、普段からアニメを視ている特定のファン層に向けた作品だと思われている節もあるようです。

確かに本作には、アニメファンでなくとも手を出しやすい国民的な漫画原作や世界を変えるほどの恋愛描写、迫力のアクション、アドベンチャーやファンタジーといった、いわゆる”ドエンタメ”な要素はありません。

しかし人々の生きる姿がただひたすら真摯に、美しく描かれた本作の90分間は、そうした大衆的な作品とはまた違った静かな感動を、確かに私達に味わわせてくれます。

たとえメジャー作品やディズニーとは知名度や規模が違っても、世界中で評価される京アニ作品の魅力というのは、そうしたところにもあるのだと思います。

本作は、普段メジャー作品以外のアニメをあまりみない人たちにも、そんな京アニ作品の魅力の一端を、理屈や難しい専門知識抜きに感じさせてくれる作品です。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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