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今更聞けないあの言葉:この時期よく見る「コミケ」とは何なのか?

小新井涼アニメウォッチャー
コミケが開かれる東京ビッグサイト(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

日本最大級の表現者の祭典、夏のコミックマーケット・通称夏コミが本日閉会しました。いつもより日数の多い4日間に渡り開催された今回の夏コミは、厳しい猛暑の中での開催にもかかわらず、入場者数は過去最高の73万人を記録したとのことです。

…といったニュースと共に、夏のこの時期と年末によく耳にする「コミケ」という言葉ですが、全くその文化に触れたことがない人にとっては何となくこんなものだろうなというイメージはあるものの、いまいち実態の掴めないイベントだと思います。

2005年放送のテレビドラマ「電車男」で登場して以降、メディアに取り上げられる機会も増えて、確かに一般的な認知度はそれまで以上に高まってきました。

それでもまだ多くの人にとっては、"どうやらあの逆三角形の建物でコスプレをしている人がいたり、漫画を売ったりしている人がいて、そこにとんでもない人数の人があつまるイベントらしい”というふわっとしたイメージがあるだけのように思います。

ではコミケとは一体、具体的にはどんなイベントなのでしょうか。

コミケことコミックマーケットは、現在年に2回、東京ビッグサイトで行われている世界最大の同人誌即売会です。

こう一言で説明されても、そもそも同人誌?即売会?同じビッグサイトで行われる「東京モーターショー」や幕張メッセで行われる「東京ゲームショウ」の漫画版?と思う人もいるのではないでしょうか。

確かに似ていないこともありませんが、コミケは上記のイベントのような”見本市”というよりも、そのシステムはどちらかというと”文化祭”を想像してもらった方が近いような気がします。

見本市や一般的な商業イベントと違って、コミケには”お客様”という立場が存在しません。

来場者は主に買い物をする一般参加者、主に出展をするサークル参加者、スタッフ参加者、コスプレ参加者、企業参加者など、全員がイベントの参加者として扱われます。

よくコミケが大きな事件や事故もなく運営され続ける理由として、この参加者のモラルの高さが取り上げられることがありますが、それも恐らく、生徒や教師、その家族や友達など、基本的には身内によって運営される文化祭と同様に、参加者全員がイベントを存続させ、楽しむための一員として、この場を壊してはいけないという自覚があるからなのでしょう。

かといってコミケは決して身内だけに限定した閉鎖的なイベントでもなく、大抵の文化祭がそうであるように、外部からの来場者=新たな参加者にも開かれた場でもあります。

ですので、文化祭に来て「こっちは金を払ってる客だぞ」「このレベルの食べ物でこんな金額とるのかよ」といった、「文化祭でそれを言う?」といったその場にそぐわない態度をとって他の参加者に迷惑をかける人でなければ、一見さんお断り、なんてこともありません。

ただ一つ注意しなければいけないのは、その文化祭は乗り越えるのにかなりの体力が必要な地獄の山道を超えた先の学校で行われているので、初めて参加する人は食料や装備もなしにヒールなどで気軽に来てしまうと大変な目にあうということです。

およそ50万人規模の文化祭の様子(カワドン撮影):万全な体調と十分な準備をしての参加が安心です
およそ50万人規模の文化祭の様子(カワドン撮影):万全な体調と十分な準備をしての参加が安心です

企業以外がコミケで出展をするためには、まず”サークル参加”をする必要があります。

このサークルというのは、文化祭でいうとクラスや部活などの出し物をするための最小単位といったところです。

複数人で構成されるサークルもあれば、例え1人で構成されていても出展の際はサークルとして扱われます。

サークルとして出展をするためには、”スペース”を申請しなければいけません。

このスペースというのは、文化祭でいうところの教室ですとか講堂、体育館など、出し物をするために学校や生徒会に申請して確保する出展場所のことです。

無事に申請が通り、スペースの確保ができたら次はスペースで頒布するもの、文化祭でいう出し物を決めます。

頒布物はサークル参加者が創作した同人誌(漫画だけでなく小説や評論、写真集など内容は多様です)だけでなく、CDやゲームやグッズなど様々です。

そこで行われる金銭のやりとりはあくまでも、原則として非営利目的であるため、販売ではなく頒布という言葉が使われています。

文化祭で食べ物や手作りの品を売買するのと同じく、自分達が作ったものを味わってもらう、楽しんでもらうことが主な目的なので、例え価格がついていてもそれは儲けるためではなく、あくまで原料費や手間賃といった創作費用の回収とされるのです。

上記はサークル参加者の出展例ですが、企業参加者による出展においては、コミケ限定グッズの販売など、通常の商品の売買が行われています。

それは文化祭でいうところの、購買部や食堂による文化祭のための特別営業のようなものであり、そこでは一部営利目的の売買が行われているのです。

少々強引ではありますが、こうして文化祭に近いものを想像していただけると、とにかく人が大勢集まるなんだかよくわからないイベントというよりは具体的な、コミケのイメージを抱くこともできるのではないでしょうか。

他にもコスプレ参加者や、あれだけ過酷な環境の中ボランティアで運営を行うスタッフ参加者など、様々な形でコミケに関わる参加者が存在し、それぞれが違った目的や役割を持ってイベントに参加しています。

ここではあくまでコミケの表面的な、ごく一部分の紹介しかできておりませんので、気になる方は下記の資料などをご参照のうえ、深掘りしてみてください。

コミックマーケットとは何か? / コミックマーケット準備会による公開資料(外部サイト)

https://www.comiket.co.jp/info-a/WhatIsJpn201401.pdf

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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