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今春撮影が始まる『ブリジャートン家』シーズン2の内容を予測。鍵はアンソニーの恋の行方か?

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
シーズン2の主役、アンソニー役のジョナサン・ベイリー(写真:Shutterstock/アフロ)

 Netflixで現在配信中の『ブリジャートン家』は、昨年12月25日の配信開始から2週間で当初予測されていたビューを大きく上回る8300万世帯が視聴したことが判明した。Netflixはこのデータについて同社史上最高の数字だと説明している。19世紀初頭のロンドン社交界で展開する、結婚のために策を巡らす女性たちの攻防に、世界中の人々が強く反応した結果である。劇中に散りばめられた性差別や人種問題、大胆な性描写と斬新な衣装も、話題の的である。人気シリーズは間を置かずに新シーズンをスタートさせなければならない。そこで、去る1月21日、早速シーズン2の製作が発表された。今は、世界中のメディアが挙って新シーズンの内容についてリポートしている時期だ。その内容はシリーズの関係者が認めている事実と、こうなるであろうという憶測によって構成されている。そこで、それらの情報を精査して、予想されるシーズン2の流れをここに記してみたい。

 Netflixはシーズン2の主役が、ブリジャートン家の長女、ダフネと夫のサイモン・ヘイスティングス公爵から、ブリジャートン家の長兄、アンソニー・ブリジャートン子爵へとシフトすることを認めている。父親のいないブリジャートン家を守りたい一心から、母親や妹たちを管理しようとする一方、自らは複数の女性と関係を持つ、ある意味不幸な公爵家の後継だ。シーズン1では、オペラ歌手、シエナとの報われない恋に傷ついたアンソニーだが、シーズン2での新たな展開について、アンソニーを演じるジョナサン・ベイリーは、共演者たちを交えたビデオ・チャットで、「アンソニーの人生はよりいい方向へ向かうと思う。僕も期待しているんだ」とコメント。これに呼応するように、シリーズのクリエイター、クリス・ヴァン・デューセンも、「来るシーズンでアンソニーには新たな恋の対象が出現するだろうし、恐らくそれは視聴者の期待を裏切らない、美しく感動的なものになると思う」と明言している。

放蕩者のアンソニーが何と結婚を決意する(Netflix)
放蕩者のアンソニーが何と結婚を決意する(Netflix)

 関係者たちの言葉には裏付けがある。原作になっているジュリア・クインのロマンス小説は全8編で構成されていて、シーズン1は社交界にデビューしたダフネが予想外の運命に翻弄される第1作『恋のたくらみは公爵と』をベースにしていた。シーズン2はクインの第2作『不機嫌な子爵のみる夢は』を基に、不機嫌な子爵、つまりアンソニーが物語を牽引していくことになる。それはどんな物語なのか?原作を手がかりに予測してみよう。

 放蕩者として社交界に名を馳せるアンソニーだが、30歳を目前にして結婚を考え始める。それには理由があって、アンソニーは若くして父親を亡くした身。そのトラウマから自分も短命かもしれないと考えた彼が、公爵家の血を途絶えさせてはいけないとの思いから、結婚を決意したとしても不思議はない。彼には結婚相手に望む3つの条件があった。1、魅力的であること。2、愚か者ではないこと。3、(ここが重要) 自分から恋に落ちる心配がないこと。何という身勝手ぶり。つまり、要はシーズン1でダフネがサイモンと交わした、付き合っているふりをして互いに美味しい思いをしたいという”密約”に近い条件を、兄のアンソニーも結婚相手に求めているというわけだ。そして、理想的な相手がすぐ近くにいた。シェフィールド家の次女、エドウィーナだ。彼女との結婚を勝手に決めてしまうアンソニーだったが、そこに邪魔者が入る。エドウィーナの腹違いの姉、ケイトだ。自分とは真逆の美しい妹を放蕩者の子爵のもとに嫁がせてはいけないと考えたケイトは、アンソニーをことごとくブロック。そんなケイトに苛つきながらも、アンソニーは彼女の頭の良さや辛辣だが魅力的な言葉遣いに次第に魅せられていく。そして、ケイトも、アンソニーの家族思いの素顔に触れ、徐々に心を開いていった。なんとアンソニーは結婚の条件の半分しか満たしていない相手に、あろうことか、一番大事な条件を破って、本気で恋してしまうのである。まるで、契約結婚したサイモンに惹かれて行った最愛の妹、ダフネのように。

『ブリジャートン家』にどんな変化が訪れる?(Netflix)
『ブリジャートン家』にどんな変化が訪れる?(Netflix)

 男女が自分たちも予想しなかった関係に没入していく時のおかしさと熱量を描いて秀逸なジュリア・クインの原作小説を、待望のシーズン2はどこまで踏襲し、どうアレンジするのか?期待値は高いが、ヴァン・デューセンはそれに加えて、シーズン2では新しいキャラクターが数多く登場すること(その中にはシーズン1ではあまり語られなかった亡きブリジャートン家の家長、エドムンドも含まれる模様)、そして、ダフネとサイモンが物語の一部を引き続き担うことを明言している。

ローレンス・オリビエ賞授賞式でのJ.ベイリー
ローレンス・オリビエ賞授賞式でのJ.ベイリー写真:REX/アフロ

 そうなると、アンソニーを演じるジョナサン・ベイリーに対する注目度が必然的にアップするのは必至だ。ここで改めて彼のプロフィールを紹介しておこう。ベイリーは1988年4月25日生まれの現在32歳。5歳の時、ウエストエンドでミュージカル『オリバー!』を観て子供ながらに感動したという彼は、2年後、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『クリスマス・キャロル』のオーディションに合格して弱冠7歳で舞台デビューを飾る。その後、BBCの人気TVシリーズ等でキャリアを積んだ彼は、映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(07)や、コリン・ファース主演の『希望峰の風に乗せて』(18) に出演。2018年には、スティーヴン・ソンドハイムが音楽を手がけたブロードウェー・ミュージカル『カンパニー』がウエストエンドで再演された際、同性愛カップルの片割れを演じて、イギリス演劇界で最も栄誉ある2019年のローレンス・オリビエ賞の最優秀助演男優賞に輝いている。そして、同年、アンソニー・ブリジャートン役を手に入れた。オーディションには当初サイモン役で臨んだが、ヴァン・デューセンと家族のことや社会における男性の立場や女性の立場について、また自分自身の個人的な経験について話しているうちに、アンソニー役がより相応しいという結論に至ったのだという。英断だったと思う。そして、結果はご承知の通り。恐らく、俳優人生で最高の当たり役を手に入れたベイリーは、シーズン2でさらに過激に暴れ回ってくれるはず。ヴァン・デューセンによると、間もなく今春、撮影が始まる予定だ。

Netflixオリジナルシリーズ『ブリジャートン家』独占配信中

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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