ラグビーW杯決勝間近。今見るべき"ブライトンの奇跡"を描く実録映画の中身

去る10月20日、南アフリカ戦のホイッスル後は、労りと抱擁で埋め尽くされた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 いよいよ今週末、11月2日に迫ったラグビー・ワールドカップ日本大会決勝。エディ・ジョーンズ率いるイングランドと、同じく、日本とは因縁がある南アフリカとの激突は、ベテランだろうがにわかだろうが、すべてのラグビーファンにとって等しく見逃せない1戦であることは間違いない。

 

『インビクタス/負けざる者たち』だけじゃない。ラグビー映画には秀作が多い

 さて、改めてこのタイミングでファンの観戦気運を高めるラグビー映画はないだろうかと考えた。まず、クリント・イーストウッドの『インビクタス/負けざる者たち』(09)がある。南アフリカ初の黒人大統領、ネルソン・マンデラ指揮の下、黒人と白人で構成されたナショナルチーム、スプリングボクスが、母国で開催された1995年のワールドカップで予想外の快進撃を続ける。その内幕を描いた実録ドラマだ。今大会の準々決勝で我がブレイブ・ブロッサムズの前に立ちはだかった南アフリカ・チームの苦難の歴史を知るには絶好の作品ではないだろうか。

 また、ラグビーを扱ったドキュメンタリー映画には優れた作品が多い。オールブラックスのスタンドオフとして3度の年間最優秀選手に選ばれ、2018年からは神戸製鋼コベルコスティーラーズでプレーするダン・カーターの私生活も含めた実像に迫る『Dan Carter:A Perfect 10』(19)、日本大会でも数多くの名プレーと並外れたフィジカルを見せつけたフィジー、トンガ、サモアのポリネシア、メラネシア軍団の現在と過去を紐解く『Pacific Warriors』(15)、2003年のオーストラリア大会で、ホスト国相手に延長戦残り30秒からドロップゴールを決めて、母国イングランドを劇的優勝に導いた伝説のスタンドオフ、ジョニー・ウィルキンソンの偉業に迫る『Building Jerusalem』(15)、等々。1987年の第1回オーストラリア/ニュージーランド大会から日本大会まで、数えて32年の歴史が、どんな選手とプレーによって形成されて来たかが、これらのラグビー映画やドキュメンタリーを観れば分かるはずだ。

"ブライトンの奇跡"を描いた作品にはエディやリーチ本人が登場する

 しかし、以上の作品にも増して、映画サイトで格別の高評価(IMDbで9.0)を獲得しているラグビー映画がある。『The Brighton Miracle ブライトン・ミラクル』 (19)だ。そう、タイトルからも分かる通り、前回のイギリス大会で"ジャイアント・キリング"を演じた日本の勝利までの道のりを描いた実録ドラマである。物語は、度重なる敗戦に慣れてしまった日本チームの新コーチとして招かれたエディ・ジョーンズ(演じるのは『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)や『アクアマン』(18)等で知られるニュージーランド人俳優、テムエラ・モリソン)と、そのエディから新キャプテンに指名されるリーチ・マイケル(『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)のオーストラリア人俳優、ラザラス・ラトゥーリー)を主軸に展開する。自身もオーストラリアと日本にルーツを持つエディが、人種にこだわらないチーム編成を巡ってラグビー協会と対立する様子と、母国ニュージーランドから日本にやって来た当初、露骨な差別に苦しんだリーチの過去とを交互に見せながら、やがて、彼らの熱意が日本ラグビーの古い体質に変革をもたらしていくプロセスは、説得力と高揚感に満ちている。その理由は2つある。まず、監督と脚本のマックス・マニックスが元ラガーマンで、同時に、黒沢清の『トウキョウソナタ』(08)の脚本や、監督も兼任した『レイン・フォール/雨の牙』(09)等で日本文化を熟知していること。そして、驚くべきことに、劇中にはエディやリーチ、また、ブライトンの奇跡をベンチから見守った廣瀬俊朗、五郎丸歩等本人が、コメンテーターとして出演していることだ。それが、作品にリアリティを持ち込んでいることは言うまでもない。

 様々な困難を乗り越え、奇跡を呼び込んだ彼らの言葉の中には、"メイク・ヒストリー"、"ハードワーク"、"チャレンジ"、そして、日本大会に於けるチーム・ジャパンを象徴するキーワード、"信じる"等が熱く散りばめられている。結果、あの時奇跡と呼ばれた偉業は、4年後、この日本で、"ワンチーム"として結束した桜戦士たちによって、チャレンジした結果の必然として、改めて記録されたわけだ。

 イングランドvs南アフリカ戦のホイッスルが鳴る前に、ラグビーの歴史とスポーツマン・スピリッツが学べる映画たちを、是非チェックしてみてはいかがだろう。