Yahoo!ニュース

衆院選の投票日まで1週間。今観ておくべき"選挙映画"はコレだ!!

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
演説するサラ・ペイリン!!(写真:ロイター/アフロ)

 衆院議員選挙の投票日まで後1週間。少し前は政権交代の可能性すら取り沙汰されたのに、先週あたりから堅実な自民vs劣勢の希望vs躍進する立憲民主という予期しなかった状況が顕著になって来た感が。誰かが言ったように、政治の世界は一寸先は闇。それは有権者にも言えることで、いったい誰に、どの党に投票すればいいのか?悩み多き2017年・秋は、反面、考えようによっては悩む価値が大いにある選択の季節でもある。

 こんな時は、映画でも観て選挙というものを改めて考えてみてもいいかも知れないと思い、映画情報サイトの"ハリウッド選挙映画ベスト10"をヒントに、投票前に観ておいて損はない何作かを紹介してみたい。偶然か否か、物語の主役はやっぱり女性だった!!以下が主なラインナップだ。

★SCREEN RANTによる選挙映画ベスト10

1、ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女

http://www.wowow.co.jp/detail/101774

2、候補者ビル・マッケイ

http://eiga.com/movie/44379/

3、デーヴ

http://eiga.com/movie/20520/

4、パーフェクト・カップル

http://eiga.com/movie/47767/

5、ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ

http://eiga.com/movie/5532/

6、スーパー・チューズデー 正義を売った日

http://eiga.com/movie/53188/

7、NO

http://www.magichour.co.jp/no/

8、ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!

http://eiga.com/movie/57739/

9、ザ・シークレットサービス

http://eiga.com/movie/44769/

10、ブルワース

http://eiga.com/movie/48983/

★THE WIRELESSの選挙映画ベスト10

1、ウィーナー懲りない男の選挙ウォーズ

http://eiga.com/movie/86180/

2、ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!

3、ミルク

http://eiga.com/movie/53227/

4、影なき狙撃者

http://eiga.com/movie/7788/

5、スーパー・チューズデー 正義を売った日

6、ナポレオン・ダイナマイト

http://eiga.com/movie/57853/

7、大統領の陰謀

http://eiga.com/movie/19063/

8、俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!

http://eiga.com/movie/77212/

9、The War Room

http://www.imdb.com/title/tt0108515/

10、ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女

 こうしてみると、選挙が映画のテーマになり易いことがよく分かる。社会のメカニズムと人間の本性がこれ程露わになる場面はそうないからだ。各作品の概要をざっと紹介しながら、今回の衆院選との類似点を挙げてみたい。まずは、若くてハンサムな弁護士が民主党の切り札として選挙戦で操り人形になっていく「候補者ビル・マッケイ」(若くてハンサムな青年政治家、いますよね)、理想に燃える活動家が情報操作に加担して政界の汚れた実態を目の当たりにしていく「スーパー・チューズデー」(情報操作は森加計問題の時によく話題になりましたっけ)、大統領選に出馬した矢先に下半身スキャンダルに巻き込まれる州知事とその妻の闘争を描いた「パーフェクト・カップル」や、同じく、SNS上に下半身を露出した写真を載せてしまったために失脚して行く元民主党・希望の星を徹底追跡するドキュメンタリー「ウィーナー~」(日本の不倫議員たちの運命や如何に!)、等々、まるで、過去の選挙映画が来たる衆院選前後の様相を予知していたかのようではないか!?メディアには是非、「大統領の陰謀」でニクソン大統領を失脚に導いたワシントン・ポスト紙の記者たちのように、報道する側のモラルを遵守して欲しいと願うばかりだ。

 さて、2つのベストテン・リストの両方にランクインしている映画が3本ある。1本は前記の「スーパー・チューズテー」で、残りの2本はどちらも女性がキーパーソンだ。これが、どちらも超オススメなのである。

 1本めの「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」は、「サイドウェイ」や「ファミリー・ツリー」等、人生の危機に瀕したオヤジたちの苦闘ぶりをペーソス溢れるタッチで描いてコアなファンを持つ監督、アレクサンダー・ペインの初期の代表作。主人公は他のペイン作品にも必ず登場するような、マシュー・ブロデリック演じる冴えない高校の社会科教師、ジムなのだが、凄いのは、絵に描いたような優等生ぶりで日頃からジムを苛つかせるエリート女子高生、トレイシーの方だ。リース・ウィザースプーンが快活&コケティッシュに演じるこの女子高生、生徒会長選挙を勝ち切るためなら手段を選ばない末恐ろしいほどの戦略家である。単に彼女がいけ好かないという理由で選挙の邪魔をするジムが、まるで罰が当たったかのようにツキに見放されて行く一方で、トレイシーはどうなるか?執念と戦略に事欠かない女性には適わないし、人には各々与えられた生き方があることを示して、映画は終わるのだが。

 2本目の「ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女」は、お馴染みの実録もの。2008年のアメリカ大統領選で民主党の有力候補者、バラク・オバマに対抗して、共和党の候補者、ビル・マケインが副大統領候補に指名したサラ・ペイリン(本物にそっくりなジュリアン・ムーアがこれでエミー賞とゴールデングローブ賞をW受賞)にスポットを当てる。オバマのカリスマ性に立ち向かうには女性票の取り込みと見た目が大事だと判断した共和党は、普通は一月かける身辺調査をたったの5日で済ませ、ペイリンに希望を託したまではよかったが、やがて、彼女がイギリス政治のリーダーをエリザベス女王だと勘違いしていたり、ドイツの位置をしらない等の無知ぶりが発覚。それがメディアの批判の対象になる一方で、ペイリンはその見た目で男性有権者たちのセックスシンボルと化していく。興味深いのは、ペイリンのキャラクターだ。自信家で、頑固で、打たれ弱く、調子に乗ると思わず自信過剰なコメントを吐いてしまい、ひんしゅくと反発を買う。

 トレイシーとペイリンを結ぶライン上には、衆院選を戦う特定個人の顔が見えてこないだろうか?執念と戦略、自信過剰、打たれ弱さetc、政治の世界で生きる女性として、決してそれは珍しいキャラクターではないのかも知れないと思ってしまう。以上、厳選された選挙映画解説、投票前の参考になっただろうか?

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

清藤秀人の最近の記事