Yahoo!ニュース

絶妙なキャッチコピーとポスターが観る気をそそる秋のホラー映画3本!!

清藤秀人映画ライター/コメンテーター

今年の秋は話題のホラー映画が相次いで公開される。どれも、そそるキャッチコピーと衝撃画像を前面に打ち出して"怖いもの好き"を劇場に吸い取ろうという作戦だ。そこで、公開に向けて各々が展開するコピーとポスターをヒントに、映画のさわりを紹介しよう。

コピー・その1

"子供が消える町に、"それ"は現れる。"

 まずは、「IT イット "それ"が見えたら、終わり。」。タイトルからして何やら意味深なこの映画、モダンホラーの旗手、スティーヴン・キング史上最恐小説(これもキャッチコピー)の1つで、1990年に一度ドラマ化されている作品のリメイクだ。いわゆるファン待望の1作は今年遂に完成し、さる9月8日に全米公開されるや否や、初登場1位、興収1億2000万ドル超を稼ぎ出し、その後8日間の全興収は9月に公開された作品中、史上最高額を記録してしまう。因みに、今週のボックスオフィスでも依然2位をキープ。つまり、今アメリカはちょっとした「IT」ブームなのだ。

 物語の舞台は、1989年、アメリカ東部のメイン州、デリー。内気な少年、ビルの弟、ジョージーが、ある雨の日、外出した先の道路上におびただしい血痕を残したまま、忽然と姿を消す。それ以来、町では不可解な子供の失踪事件が相次いでいた。そんな中、自責の念に駆られるビルの前に"それ"は現れるようになる。ビルが属するいじめられっ子グループ"ルーザーズ・クラブ"の面々も、自分の部屋で、学校で、町中で、何かの恐怖を感じた時、"それ"に遭遇していた。やがて、同じ恐怖を共有する子供たちは、勇気を振り絞って"それ"に立ち向かっていくのだが。。

子供たちだけに見える
子供たちだけに見える"それ"って。。。

 なぜか大人には見えない、子供独特の視覚がとらえる"それ"の正体は、何なのか?そのもやもやとして不気味なイメージを体現するのが、映画全体のイメージ戦略にも使われている白塗りのピエロ、ペニーワイズだ。日本公開用のポスターにデザインされた赤い風船をよーく見ると、そのおぞましい顔がうっすらと浮かび上がってくる仕掛けだ。1990年のTV版に登場したのをきっかけに、少年少女たちの新たなホラーアイコンになったと言われるペニーワイズだが、最新作でのペニーワイズこそ過去最恐という噂。ライバル候補を蹴落として伝説のホラーアイコン役を手に入れたビル・スカルスガルド(アレクサンダーの弟)の鬼気迫る怪演は、見終わった後もしばらく後を引くはずだ。

赤い風船@「イット」のポスター
赤い風船@「イット」のポスター

コピー・その2

"何かがおかしい"

 その「IT」にも勝る高評価を獲得しているのが、映画批評サイト、Rotten Tomatoes で現時点で今年最高の99%をゲットした「ゲット・アウト」だ。とある深夜の高級住宅地、歩道を歩いていた黒人青年が、通りかかった車から降りてきた暴漢にいきなり襲われ、どこへともなく運び去られる。時間が経過し、黒人の写真家、クリスは白人の恋人、ローズの実家を訪れるため、サイドシートにローズを乗せて田舎道を郊外に向けて車を走らせている。クリスは彼女の両親が自分をにこやかに迎え入れてくれるかどうか不安だったが、それは取り越し苦労だったようで、両親は笑顔で彼を歓迎してくれた。。

目覚めた時には。。。
目覚めた時には。。。

 でも、"何かがおかしい"。邸宅には黒人の使用人がいるのだが、なぜか、その顔には表情が乏しいし、ローズの弟はクリスに対して敵意丸出し。パーティに現れた人々(全員白人)のクリスに対する視線は、興味を超えて不自然にギラギラしている。やがて、クリスはローズの母親が操る催眠術にかかり、気がつくと拘束されていた。ポスターに使われているクリスが椅子に座って絶叫している画像は、"おかしい"が"助けて!"に変わる瞬間をとらえた、これまた震えるベストショット。同時に、かつてホラー映画のテーマにはなり得になった"何か"に通じるイメージショットでもある。

恐怖の絶叫@「ゲット・アウト」のポスター
恐怖の絶叫@「ゲット・アウト」のポスター

コビー・その3

"死ヌマデ、離レナイ。"

少女と人形@「アナベル」のポスター
少女と人形@「アナベル」のポスター

 2013年の「死霊館」に登場する実在の人形、アナベルの誕生秘話を描いた「アナベル 死霊館の人形」(15)の続編が「アナベル 死霊人形の誕生」だ。前作のコピーは"死ヌマデ、遊ンデ。"だったので、人形の執念はさらに強固になった模様。12年前に幼い娘を亡くした人形師とその妻がひっそりと暮らす家が孤児院として提供され、そこに、閉鎖された孤児院から6人の少女とシスターがやって来て、平穏な暮らしが始まる、かと思いきや、少女の前で開かずの扉が開いて、中の暗がりでは人形師がかつて作った人形、アナベルが鋭い目を光らせていた。こうして、呪いの封印を解かれたアナベルが脅える少女たちを次々餌食にしていく。まるで、叶えられなかった思いを晴らすが如く。。

来日していたアナベル!!!
来日していたアナベル!!!

 アナベルは本当に実在する人形で、実物は今もアメリカ、コネチカット州にある世界最大のオカルト博物館(オーナーのウォーレン夫妻は「悪魔の棲む家」のモデルになった悪魔研究家と霊媒師)に厳重に保管されているらしい。プレス試写が行われた東京、神谷町のワーナー試写室のロビーでは、試写後、レプリカのアナベルが椅子に座って記者たちを見送るという"粋"な演出が。人形は人間に近ければ近いほど、怖い。恐怖映画・秋の陣を彩るには最適の作品ではないだろうか?

  • 気になる予告編は各作品のホームページから。

アナベル 死霊人形の誕生

公式HPhttp://wwws.warnerbros.co.jp/annabelle-creation/

10月13日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

配給:ワーナーブラザーズ映画

(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ゲット・アウト

公式HPhttp://getout.jp/

10月27日(金) TOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショー

配給:東宝東和

(C) 2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

IT イット "それ"が見えたら、終わり。

公式HPhttp://wwws.warnerbros.co.jp/itthemovie/

11月3日(金・祝)より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

配給:ワーナーブラザース映画

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

清藤秀人の最近の記事