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勝利貢献度を示す「WPA」から見る、投打両面で活躍する大谷翔平と”正反対”の選手は誰だ?

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
9月7日のパドレス戦で内野安打を放つエンゼルスの大谷翔平(撮影:三尾圭)

 メジャーリーグに関するあらゆるデータを網羅するBaseball-Reference。データに関しては、質、量ともにMLB公式サイトを越えており、リーグ関係者、メディア関係者、そしてコアなファンにとって必要不可欠なサイトとして知られている。

 そのBaseball-Referenceが、現地9月7日に投稿したツイートが話題になっている。

 このグラフは、勝利貢献度を示す「WPA」を投球部門と打撃部門に分けて示したもの。X軸は打撃でのWPA値、Y軸は投球でのWPA値値を示している。

 野手の場合は打撃でのWPAは高くても、投球部門はゼロ。逆に投手の場合は打撃部門がゼロからマイナス1の間にまとまっている。

WPAって何?

 このグラフの中身を見る前に、WPAの説明から始めたい。

 WPAとは「Win Probability Added」の略で、日本語に訳すと「勝利期待率加算値」のような感じになる。

 勝利貢献度を表す指標としては「WAR」が有名だが、WARは代替可能レベル選手との差を表したものであるのに対して、WPAは勝利期待値をどれだけ増やしたかを示している。

 勝利期待値とは、試合のあらゆる状況で起こったプレーによって、勝利する確率がどれだけ変わったかを計ったもの。例えば同じ9回裏に打った3ラン本塁打でも、10点差で負けている状況と、2点差を追いかける状態で打った逆転サヨナラ3ランでは勝利期待値は大きく異る。

今季のWPA上位選手は?

 打撃部門での1位はジョージ・ポランコ(ミネソタ・ツインズ)の4.3で、大谷は4.0で2位にランクインしている。ナショナル・リーグでホームラン1位のフェルナンド・タティースJr(サンディエゴ・パドレス)も4.0で3位、アメリカン・リーグのホームラン王争いで大谷を追いかけるサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)が3.6で4位、ブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)が3.5で5位に入っている。

2021年WPA打撃部門MLBトップ5

1位:ジョージ・ポランコ 4.3

2位:大谷翔平 4.0

3位:フェルナンド・タティースJr. 4.0

4位:サルバドール・ペレス 3.6

5位:ブラディミール・ゲレーロJr. 3.5

2021年9月7日時点

 投球部門では、ミルウォーキー・ブリュワーズの守護神、ジョシュ・ヘイダーが4.1で1位、シーズン途中にワシントン・ナショナルズからロサンゼルス・ドジャースへ移籍したマックス・シャーザーが4.0で2位、ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)が3.7で3位、ウォーカー・ビューラー(ドジャース)とブランドン・ウッドラフ(ブリュワーズ)が3.6でトップ5に名前を連ねた。ちなみに大谷の投球部門でのWPAは2.7である。

2021年WPA投球部門MLBトップ5

1位:ジョシュ・ヘイダー 4.1

2位:マックス・シャーザー 4.0

3位:ゲリット・コール 3.7

4位:ウォーカー・ビューラー 3.6

5位:ブランドン・ウッドラフ 3.6

参考:大谷翔平 2.7

2021年9月7日時点

大谷と”正反対”の選手は?

 上記の図では、打撃部門のWPAが4.0、投球部門のWPAが2.7の大谷は、グラフの右上に一人だけおり、二刀流選手として活躍する大谷が異例で特別な存在であることが改めて確認できる。

 大谷とは正反対の左下には、打撃と投球の両部門でマイナス値の選手がいるが、その中に投球部門ではマイナス3に近く、打撃部門でもマイナス1に近い位置にいる選手がいる。この選手こそが大谷の”正反対”に位置する選手だが、誰なのだろうか?

 正解はナショナルズのパトリック・コービン。7勝14敗、防御率6.14の投球部門でのWPAのはメジャーワーストの-2.8。打撃成績は54打席で4安打、2四球、打率.089、出塁率.128と、投手としてはそこまで酷い打撃成績ではないが、チャンスに凡退する場面が多いのでWPAは-0.8を記録している。

 2018年のオフにナショナルズと6年総額1億4000万ドル(約154億円)の大型契約を結んだコービンだが、今季は投打ともに精彩を欠き、大谷と”正反対”でチームの足を引っ張っている。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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