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大谷翔平がオールスターでMVPを獲得するための条件とは

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
オールスターゲームで先発する大谷翔平(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 明日、7月13日(日本時間14日朝)に開催されるMLBオールスターゲームで、史上初の二刀流選手として出場するロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平。

 「大谷ルール」とも呼ぶべき特別ルールが作られたことで、1回表には1番指名打者として打席に立ち、1回裏にはアメリカン・リーグの先発投手としてマウンドに上る。

 「大谷狂想曲」は日本国内だけでなく、全米にも広がりを見せ、このオールスターゲームは「大谷のためのオールスターゲーム」といった雰囲気になってきつつある。

 オールスターゲームでも主役を務める大谷が、MVPに選ばれる最低条件を過去の例から検証してみたい。

先発投手として

 過去3大会のオールスターゲームでは、先発投手が1イニングを投げたケースが4回、2イニングは2回あった。前回大会の2019年はア・リーグ、ナ・リーグの先発投手ともに1イニングでマウンドを降りている。

 二刀流の大谷翔平も1イニングを投げると思われる。対戦するのは、大谷に並んで現在のメジャーリーグで最もホットな選手であるフェルナンド・タティースJr.(サンディエゴ・パドレス)、昨季のワールドチャンピオンの一員であるマックス・マンシー(ロサンゼルス・ドジャース)、今オールスターの舞台であるコロラドで昨季まで活躍を続けたノーラン・アレナドの3選手。走者を出すようだと昨季のMVP選手で、ナ・リーグの4番を務めるフレディ・フリーマン(アトランタ・ブレーブス)以降まで打順が回る。

 大谷が3者連続三振を奪うようだと、MVPの有力候補になる。

 前回大会の2019年のオールスターゲームはクリーブランドで行われたが、MVPに選ばれたのはア・リーグの5番手として登板したシェーン・ビーバー(クリーブランド・インディアンズ)。ビーバーは1イニング3者連続三振に斬って、MVPに選ばれている。この試合では最後を締めてセーブを挙げたアロディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)もビーバーと同じく1イニングを無安打3三振で抑えたが、MVPは地元選手のビーバーに譲っている。

 実はオールスターゲームで投手がMVPに選ばれるのは難しい。

 ビーバー以前だと、2013年のマリアーノ・リベラ(ヤンキース)、その前は1999年のペドロ・マルチネス(ボストン・レッドソックス)までさかのぼる。

 13年のリベラは1イニングを3者凡退に抑えたが、三振はゼロ。試合はニューヨーク・メッツの本拠地のシティ・フィールドで行われたので、リベラのホーム・スタジアムではないが、ホームタウンでの試合だった。リベラがMVPに選ばれた最大の理由は、このシーズン限りでリベラが現役引退を表明していたこと。今年のオールスターが「大谷祭り」と化すように、この年のオールスターはリベラのためのものだった。

 99年のペドロは地元フェンウェイ・パークでのオールスターで、2回を投げて無安打5奪三振と圧巻の投球で、文句なしのMVPを獲得。この1999年のオールスターは、試合前に「20世紀最強チーム」に選ばれた過去の名選手が勢揃いして、ボストンの英雄であり、最後の4割打者でもあるテッド・ウイリアムズが始球式を行い、最高の雰囲気の中で試合が開始された。ウイリアムズからマウンドを託されたマルチネスは、ホームラン争いでリーグを沸かしていたサミー・ソーサとマーク・マグワイアを含む4打者連続、5つの三振を奪った。筆者が初めてスタジアムでオールスターを生観戦したのが、このときのオールスターだが、このときのペドロのパフォーマンスは、個人的にはオールスター史上最高のものだった。

 二刀流選手の大谷は3者連続三振を奪えなくても、投手として3者凡退に抑えれば、打者との合せ技でMVPに選ばれそうだ。

 この試合の注目点の1つである先頭打者タティースJr.との対決には完勝しておきたいので、タティースJr.から三振を奪えれば大きなアピール・ポイントとなる。

打者として

 最近のオールスターは、先発選手は2打席を終えると交代するケースが多いので、大谷の打席も2打席だと予想する。

 ここでホームランを打てれば、2本の満塁本塁打を打つなど大活躍をする選手が出ない限り、MVPの有力選手となる。

 2018年のオールスターでは、途中出場のアレックス・ブレグマン(ヒューストン・アストロズ)は3打数1安打ながら、その1本の安打が延長10回の勝ち越しソロ本塁打だったためにMVPを受賞。

 2017年のMVP、ロビンソン・カノー(シアトル・マリナーズ)も途中出場で2打数1安打だったが、延長10回の勝ち越しソロ本塁打がMVPの決め手となった。

 2016年はエリック・ホズマー(当時カンザスシティ・ロイヤルズ、現サンディエゴ・パドレス)が同点ソロ本塁打と適時シングルの2安打でMVPを獲得した。

 大谷の本塁打は、試合開始直後の1回先頭打者弾が望ましい。

 オールスターでの投打の二刀流選手は大谷が初めてだが(過去に投手として打席に立ったものも、安打を放った投手もいるが、二刀流選手として登録されてプレーする選手は初めて)、過去に二刀流選手がオールスターのMVPに選ばれたことはある。

 それはMLBとNFLの二刀流選手、ボー・ジャクソン(当時ロイヤルズ)で、1989年のこと。1回表にレフトの守備でファインプレーを披露すると、ア・リーグの先頭打者として1回裏の打席に入ったジャクソンはセンターのバックスクリーンに特大ホームランを放つ。自慢のスピードを生かして盗塁も記録。走攻守の三刀流の活躍でオールスター初出場ながらMVPを獲得している。

 仮に大谷がホームランを打てなくても、他に大活躍する選手がいなく、長打を含めて2安打できれば、話題性を含めてMVPに選ばれるかもしれない。

絶対条件?

 大谷がMVPを獲得するのに「絶対条件」となるのが、所属するアメリカン・リーグが勝利することかもしれない。

 過去に敗戦チームからMVPに選ばれたのは、1966年のブルックス・ロビンソン(ボルティモア・オリオールズ)と1970年のカル・ヤストロムスキー(ボストン・レッドソックス)の2人だけで、50年以上も出ていない。

 しかし、メジャーで100年以上も出ていない偉業を次々にクリアしてきた大谷ならば、負けてMVPもあるかもしれない。

 投手として投げ、指名打者として打つ。このことだけでも、MVPに値する功業なので、MVP獲得のためのハードルは他の選手たちに比べると低い。

 投手として三者凡退&打者として二塁打1本でも、他の選手の活躍度次第では、MVPに選ばれることもありえる。

 もちろん99年のペドロのように、3者連続三振&先頭打者本塁打&盗塁のような文句なしの活躍でMVPに選ばれるのが理想だし、大谷ならばそれも可能だろう。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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