なぜエンゼルスはこのタイミングでプホルスを解雇するのか
ロサンゼルス・エンゼルスは5月6日(日本時間7日)にアルバート・プホルスを40人枠から外したと発表した。
41歳のプホルスは今季が10年総額2億4000万ドル(約261億円)の長期契約の最終年。年俸3000万ドル(約32億7000万円)の今季は、ここまで24試合に出場して打率.198、5本塁打、17打点だった。
2001年にセントルイス・カージナルスでメジャー・デビューを果たしたプホルスは、カージナルスでの11年間でMVPを3度獲得して、カージナルスを2度のワールドシリーズ制覇に導いた。11年オフにエンゼルスへFA移籍してきたが、エンゼルスでの10年間では超大型契約に見合った働きができず、とくに近年は打撃が低迷していた。
プホルスはエンゼルスをワールドシリーズに連れていくために招かれたが、カージナルスでは7度も出場したプレイオフも、エンゼルス時代は1度だけしか出場できずに、エンゼルスをリーグチャンピオンシップシリーズに連れていくこともできなかった。
エンゼルスをプレイオフに導けなかったのはプホルスだけの責任ではないが、カージナルス時代は在籍11年間全てでrWAR5.0以上を記録して、MVP投票で10位以内(5位以内は10度)に入ったのに、エンゼルスでの10年間ではrWAR5.0以上もMVP投票10位以内も皆無で、カージナルス時代の眩いばかりの輝きは失ってしまった。
プホルスの通算667本塁打はメジャー歴代5位、2112打点は歴代3位、3253安打は歴代14位で、彼がメジャーの歴史に名前を残す大打者であることは疑いの余地がない。チャリティ活動にも積極的に取り組み、チームメイトや相手選手からも尊敬され、ファンからも愛されたレジェンドだった。
エンゼルスは球団の顔だった名選手を契約最終年の半ばになぜ解雇するのだろうか?
大谷とウォルシュの台頭
41歳のプホルスは本来ならば指名打者として打撃に専念するべきだが、今季のエンゼルスは26歳の二刀流選手、大谷翔平が指名打者として出場を続けている。
過去3年は大谷のケガや起用方法などで、プホルスと大谷の両者を指名打者として使い分けてこれたが、今季は大谷の打撃が絶好調で、大谷をラインナップから外すことができない。
となると、プホルスを本職の一塁手として起用することになるが、27歳のジャレッド・ウォルシュが打率.333、6本塁打、OPS.988と大活躍しており、プホルスの出番を奪ってしまった。
それでも、プホルスの打撃がそこそこであれば、代打要員としてベンチにキープしておく術もあるが、打率2割を切るベテランの居場所は今のエンゼルスにはない。
大谷が投手として先発登板した5月5日(日本時間6日)の試合では、当初は指名打者制を解除して投手・大谷を打たせる予定だったが、「今日、打たないのは監督である私の選択。ベンチの状況を考えて決めた」とジョー・マドン監督が説明したように、エンゼルスは大谷を投手に専念させて、DH制を採用した。
そして、この試合では相手投手との相性も考慮されて、プホルスが先発するはずだったが、フロントオフィスからの指示によりプホルスが先発から外されたと報道されている。
エンゼルスのマイナーリーグには、トッププロスペクトのジョー・アデルやブランドン・マーシュが控えており、プホルスではなくアデルやマーシュをベンチ入りさせた方がチームへの貢献度は高いとフロント陣は考えているようだ。
昨夜の試合で4連敗を喫したエンゼルスはアメリカン・リーグ西地区で最下位に転落したが、まだ首位のオークランド・アスレチックスとのゲーム差は4.5で、チームの立て直しは十分に可能。そのためには不振のプホルスではなく、若手選手をベンチに置いた方が良いとチームは判断した。
マイク・トラウト、大谷、ウォルシュが好調な今季こそ7年も遠ざかっているプレイオフに出場したいとの願いが、チーム功労者のプホルスを切るという非情な決断につながった。