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ヤンキースからFAになった田中将大に最適なチームはホワイトソックス?

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ヤンキースからFAになった田中将大(撮影:三尾圭)

 今オフのメジャーリーグのフリーエージェント(FA)市場には有力な先発投手が少ない。

 今季のナショナル・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたトレバー・バウアーが最大の目玉なのは間違いないが、A評価を得ている投手はバウアーしかいない。

 ニューヨーク・メッツのマーカス・ストローマンとサンフランシスコ・ジャイアンツのケビン・ゴーズマンの2投手が、球団から提示されていた1890万ドル(約19億6560万円)のクオリファイング・オファー(QO)を受け入れて残留が決定。ただでさえ市場に少ない先発投手が2人も消えてしまった。

 MLB公式サイトのFAランキングでは投手陣の2位にニューヨーク・ヤンキースからQOを提示されなかった田中将大が浮上した。

 今季、田中がもらうはずだった年俸は2300万ドル(約23億9200万円)。ヤンキースは田中に来季の年俸として1890万ドルを払うことは拒んだが、もう少し安い額での再契約を望んでいる。田中もニューヨークの街とヤンキースには愛着を感じており、再契約交渉には前向きに応じるはずだ。年俸1200万ドル(約12億4800万円)から1500万ドル(約15億6000万円)あたりの攻防戦になるだろう。

 田中との再契約を望むヤンキース以外にも、メジャー7年間で78勝を挙げ、オールスターに2度選ばれた田中を獲得したい球団は多い。短縮シーズンだった今季を除けば1年目の20先発が最低で、30先発以上のシーズンが3度もあるようにローテーションに大きな穴を開けることもなかった。6年連続で二桁勝利を挙げているように、田中はある程度の勝ち星を計算できる投手だ。

 ヤンキースで過ごした7年間で一度もワールドシリーズに到達できなかった田中にとって、移籍先を決める大きな条件はワールドシリーズ優勝に近いチームとなる。

 田中が活躍できて、ワールドシリーズ優勝の可能性も高いチームとなると、ヤンキースに残留するよりもシカゴ・ホワイトソックスへの移籍を勧めたい。

 メジャーに移籍してから田中の防御率が良かった球場のトップ5は以下の通り。

田中将大の球場別、通算成績トップ5と本拠地球場での成績(表作成:三尾圭)
田中将大の球場別、通算成績トップ5と本拠地球場での成績(表作成:三尾圭)

 1位のサントラスト・パークは、僅か1先発、5イニングしか投げていないので参考にはならないが、2位のギャランティード・レート・フィールドでは3試合、20イニングを投げている。負けなしで勝率10割を記録している球場は7つあるが、4つは1勝しか挙げていない。

 相性が最も良い球場は5勝無敗のセーフコ・フィールドで、その次は3勝無敗のギャランティード・レート・フィールドだろう。

 ヤンキースの同地区であるアメリカン・リーグ東地区のチームの本拠地とは相性が悪く、その5球場の中ではヤンキー・スタジアムが最も勝率も防御率も良い。

 セーフコ・フィールドで成績が良いのは、相手のシアトル・マリナーズの貧打も大きな理由で、マリナーズとは通算8勝無敗、防御率1.89と無双ぶりを発揮してきた。

 ホワイトソックスとの通算成績は4勝2敗、防御率3.53で、ヤンキー・スタジアムでの試合では1勝2敗と負け越している。

 相手打線の力も考慮すると、田中が最も相性の良い球場はセーフコ・フィールドではなく、ギャランティード・レート・フィールドだと言える。

 また、もしも田中がマリナーズに移籍すれば、エースの座は手にできても、打線の援護は期待できないし、ワールドシリーズ出場の道のりもとても険しいものになってしまう。

 その点、ホワイトソックスは今季のMVPに選ばれたホセ・アブレイユを中心とした打線は強力で、今季はヤンキースに次ぐリーグ2位の得点を叩き出し、来季もワールドシリーズ制覇の可能性を感じさせるチームだ。

2020年ホワイトソックス先発投手陣の成績(年俸の単位は万ドル)(表作成:三尾圭)
2020年ホワイトソックス先発投手陣の成績(年俸の単位は万ドル)(表作成:三尾圭)

 先発ローテーションには、今季ノーヒットノーランを達成したルーカス・ジオリトがエースに君臨して、2番手には2015年のサイ・ヤング賞左腕のダラス・カイケルが控える。

 ホワイトソックスの問題は頼りになる先発3番手の不在で、今年のプレイオフ、オークランド・アスレチックスと1勝1敗で迎えたワイルドカード・シリーズ第3戦では、9投手を小刻みに継投しながらも6点を奪われて敗退した。

 ここにプレイオフでの経験が豊富な田中が入れば、とても心強い。ローテーションには20代半ばの若い投手が多く、彼らが田中から学ぶべき点も多い。とくに将来のエース候補と期待されるマイケル・コペックにとって、田中の存在は大きなものになる。

 若手とベテランのバランスが良く、来季は勝負の年を迎えるホワイトソックスにとって、プレイオフで強い田中は理想的な先発3番手だ。今季は全休したコペックも右投手なので、左右のバランスが悪いことだけが気がかり。

 守護神のアレックス・コロメはFAなのでチームを去りそうだが、ホワイトソックスのブルペン陣は層が厚く、コロメの穴も100マイル投手のアーロン・バマーが埋めてくれそうだ。

 田中と同じ年のカイケルは2015年に20勝を挙げてサイ・ヤング賞に輝いて以降は調子を落としていたが、ホワイトソックスに移籍した今季は見事に復活した。田中も慣れ親しんだヤンキースを離れてみて、環境を変えることでプラス効果が期待できそうだ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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