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巨人・坂本はジーターを超えられるか? 日米を代表する名遊撃手の成績を徹底比較

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
巨人・坂本勇人とヤンキースのデレク・ジーター(撮影:三尾圭)

 日本プロ野球史上2番目の若さで通算2000安打を記録した読売ジャイアンツの坂本勇人。

 NPB歴代でも最高の遊撃手の一人に名乗りを上げ、引退するまでには誰もが認める史上最高の遊撃手になれる可能性を秘めている。

 高校生ドラフトで1巡目指名を受けて巨人に入団して、日本で最も注目度の高いチームのショートを守る坂本には、メジャーリーグのあの名選手の姿が重なる。

 高校卒業後に名門球団のニューヨーク・ヤンキースから1巡目指名を受け、坂本と同じ右投げ右打ちのショートとしてヤンキース一筋で引退したデレク・ジーターだ。2014年シーズンを最後に40歳で現役を引退したジーターは、今年1月に打者としては歴代最高投票率(99.75%)で殿堂入り。メジャー歴代最高のショートストップの座を確実なものにした。

 日米の球界を代表する名ショートストップの成績を比較しながら、坂本がジーターを上回っている部分を探し出すとともに、今後の坂本の成績を予測していきたい。

坂本勇人とデレク・ジーターの節目記録達成年齢(表作成:三尾圭)
坂本勇人とデレク・ジーターの節目記録達成年齢(表作成:三尾圭)

 日米の名門球団からドラフト1巡目で指名されたのは、坂本もジーターも同じ17歳のときだが、ジーターがメジャー・デビューしたのが20歳のときだったのに対して、坂本は2歳若い18歳で1軍デビューを果たした。

 2人はデビュー翌年の開幕戦でスタメン・デビュー。ジーターは9番ショートだったが、坂本は8番二塁だった。

 先発の座を掴んだのも坂本の方が2歳若かったが、MLBの公式戦162試合に対してNPBは143試合(2014年までは144試合)と10%ほど少ない。

 このため、500安打の達成は坂本の方が2歳若かったが、1000本安打では1歳差、2000本安打はともに31歳と年齢差は追いつかれた。

 坂本の通算打率は.292、ジーターは.310とジーターの方が2分ほど打率は高い。ジーターの打率を31歳でシーズンを終えた2005年までと、32歳で開幕を迎えた2006年以降に分けると、2005年までは.314で、2006年以降は.304とキャリア後期は若干落ちている。

 31歳まで似たような歩みをしてきた坂本とジーター。坂本が来季からジーターと同じく打率を1分落として打率.282のペースで安打を放ち、各シーズンで500打席を記録すると仮定した場合、年間の安打数は141本となり、7シーズンで987安打という計算になる。39歳までこのペースを保てれば3000本安打に到達できそうだ。

 ジーターは40歳で引退したが、坂本がジーターの3465安打を抜くには42歳まで現役を続けなければならない。

坂本勇人が年間143安打を7年間続けられれば3000安打に到達できる(写真:三尾圭)
坂本勇人が年間143安打を7年間続けられれば3000安打に到達できる(写真:三尾圭)

 年齢を重ねるとケガの心配も高まるが、ケガに強いのも坂本とジーターの共通点。坂本は662試合連続出場、シーズン・フル出場が7回を経験。15試合以上欠場したのは脇腹を痛めて出場選手登録を抹消させた2018年(34試合欠場)の1回しかない。ジーターもケガは少なく、フル出場は1度もないが、20試合以上の欠場は3シーズンだけ。長期欠場は足首と大腿四頭筋を痛めて149試合を欠場した2013年の1回のみだった。

 年齢とともに増えてくるもう一つの懸念材料は負担の大きなショートという守備位置。鉄人と呼ばれたカル・リプケンを筆頭にキャリア晩年になると三塁へ転向するショートは多いが、ジーターはメジャー生活20年間でショート以外の守備位置を守ったことがなかった。

 坂本は一塁で3試合、二塁で1試合の経験があるが、引退するまでショートを守るのは難しそう。NPBは身体に大きな負担がかかる人工芝の球場が多く、30代半ばになれば一塁へ転向を真剣に検討した方が良さそうだ。

ジーターは引退までショートを守り続けたが、坂本はいつまで遊撃手を続けられるか?(写真:三尾圭)
ジーターは引退までショートを守り続けたが、坂本はいつまで遊撃手を続けられるか?(写真:三尾圭)

 MLBとNPB、海を挟んだ2つのリーグの成績を単純に比較することにあまり意味はないかもしれないが、それぞれの選手が所属リーグにとってどれだけ大きな価値を持った選手なのか、その存在価値の大きさを比べてみたい。

 坂本がジーターを超えるためには、ワールドシリーズに7回出場して5度世界一になったジーターの優勝回数は超えておきたい。ここまで日本シリーズに5回出場して2度優勝。今季も優勝すれば6回出場の3度優勝となり、ジーターが31歳だったときの6回出場4度優勝に近づく。球団数がMLBの半分以下のNPBはそれだけ優勝できる割合も高く、次の10年で優勝回数で坂本がジーターを超えられる可能性は高い。

 華々しいキャリアを送ってきたジーターに足りないものは個人賞。チームプレーに徹して、何よりもチームの勝利を優先してきたジーターらしいが、主な個人賞は新人王だけで、主要な個人タイトルとも縁がなかった。坂本はMVPに1回、首位打者のタイトルも1回手にしており、今後10年間で個人タイトルをもっと積み上げたい。

ここまでMVPと首位打者をそれぞれ1回ずつ獲得している坂本勇人(写真:三尾圭)
ここまでMVPと首位打者をそれぞれ1回ずつ獲得している坂本勇人(写真:三尾圭)

 真の意味で坂本がジーターを超えたといえるのは殿堂入りの際の投票率ではないだろうか。

 今年1月に資格初年度で殿堂入りしたジーターは397票中396票を集めたが、野手初の満票には1票足りなかった。

 日本の野球殿堂での最高投票率は1960年の第1回の競技者表彰で97.3%だったビクトル・スタルヒン。2025年に殿堂入り資格を得るイチローが史上初の満票を得る可能性は高いが、坂本が引退後に満票で殿堂入りを果たせたら、NPBにおける存在感の高さではMLBでのジーターを超えたと言ってもいいだろう。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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