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メジャー移籍後、最悪の投球でKO降板した菊池雄星。課題は走者を背負った場面での投球内容

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
パドレス戦に先発して4回5失点で降板したマリナーズの菊池雄星(三尾圭撮影)

 シアトル・マリナーズの菊池雄星が、9月18日(日本時間19日)のサンディエゴ・パドレス戦に先発したが、6与四球、3暴投と制球が大きく乱れ、4回で5点を奪われて今季4敗目を喫した。

 当初はシアトルで行われる予定だったこの試合だが、大規模な山火事の影響で大気汚染が深刻化。15日、16日にシアトルで開催予定だったサンフランシスコ・ジャイアンツ戦をサンフランシスコでの開催に変更したのに続いて、今週末のパドレスとの3連戦も舞台をサンディエゴに移して開催された。

 慣れ親しんだホームのT-モバイル・パークのマウンドでは投げられなくなった菊池だが、サンディエゴのペトコ・パークは8月27日に今季初勝利を挙げた球場。

 敵地なのにホームチーム扱いのマリナーズは、ビジター用の紺のユニフォームに身を包んで試合に臨んだ。

試合開始前にブルペンからベンチへ向かう菊池雄星(三尾圭撮影)
試合開始前にブルペンからベンチへ向かう菊池雄星(三尾圭撮影)

 初回はリーグ・トップの得点を誇るフェルナンド・タティースJr.を空振り三振、MVP候補のマニー・マチャドを三塁ゴロ、前回のパドレス戦ではバッテリーを組んだオースティン・ノラもショートゴロに打ち取り、菊池は僅か10球で三者凡退に抑えた。

初回は10球で三者凡退に抑え、上々のスタートを切った菊池雄星(三尾圭撮影)
初回は10球で三者凡退に抑え、上々のスタートを切った菊池雄星(三尾圭撮影)

 「初回の入りは良かった」と菊池本人も1回の投球内容には手応を感じ、好スタートを切ったが、2回から徐々に歯車が崩れていく。

 2回は先頭打者のミッチ・モアランドにカットボールを打たれてセンター前に運ばれると、フォーシームがすっぽ抜けて、この試合1つ目の暴投で二塁を許した。

 5番打者のウィル・マイヤーズの一塁ゴロでモアランドは三塁まで進み、続くトミー・ファムを簡単に歩かせて、1死1、3塁のピンチを迎えた。

 新人王有力候補のジェイク・クロネンワースを浅いレフトフライ、ジュリクソン・プロファーもショートライナーに打ち取り、なんとか無失点で切り抜けた。

1死走者1、3塁のピンチを迎えた2回を無失点で切り抜けた菊池雄星(三尾圭撮影)
1死走者1、3塁のピンチを迎えた2回を無失点で切り抜けた菊池雄星(三尾圭撮影)

 3回もトレント・グリシャムを四球で歩かせ、2イニング続けて先頭打者を出塁させてしまう。

 タティースは右飛に抑えたが、マチャドにも四球を与えると、ダブルスチールで1死2、3塁に。ワイルドピッチで3塁走者のグリシャムが生還して、この回は無安打で先制点を奪われた。

 「打たれたというよりフォアボールで崩れてしまったのは悔しい」と菊池は反省の言葉を口にしたが、この試合では一度崩れた投球を修正できなかった。

菊池雄星の暴投でホームを奪ったパドレスのトレント・グリシャム(三尾圭撮影)
菊池雄星の暴投でホームを奪ったパドレスのトレント・グリシャム(三尾圭撮影)

 4回にも四球とヒットで走者を許すと、マチャドに3点本塁打を打たれて、この回限りでマウンドを降りた。

 マチャドにホームランを打たれたのは84マイル(約134キロ)の低めのスライダー。「ボール自体は悪くなかった」と菊池は振り返ったが、10年間総額3億ドル(約315億円)の超大型契約を手にするマチャドを「リーグを代表するバッター」と言い、「相手が上だった」と潔く負けを認めた。

マニー・マチャドに3点本塁打を打たれた菊池雄星(三尾圭撮影)
マニー・マチャドに3点本塁打を打たれた菊池雄星(三尾圭撮影)

 「(ストライク)ゾーンで勝負できなかった。そこに尽きる」と菊池が敗因を語ったように、この夜はすべての球種がストライクゾーンを大きく外れた。

 6四球はメジャー2年目で自己ワースト。これまでは昨年6月23日のボルティモア・オリオールズ戦で与えた5四球が自己最多だったが、この時は6イニングを投げての5四球で、今回は4イニングで6四球。ゾーンぎりぎりの際どいボールではなく、明らかにボールと分かる球が多かった。

 コントロールが乱れた理由は「メカニックの部分が大きいと思う。普段なら修正しながらやるんですが、今日は最後まで修正できずに終わってしまった」と菊池は説明。

 具体的には「すごく横振りになっている。いろんな引き出しを使いながら、今季は修正できたんですが……。横振りの原因は頭では分かってるんですけど、体ではうまく表現できないまま、最後まで修正できなかった」と腕の使い方に問題があったと自己分析した。

 マリナーズのスコット・サーバイス監督も「1イング目はとても良かったのに、制球力の問題で四球を連発した。メカニックが崩れ、速球もスライダーも勝負できる球ではなかった」とコメント。

腕が横振りになったために制球力を乱したと菊池雄星は乱調ぶりを自己分析した(三尾圭撮影)
腕が横振りになったために制球力を乱したと菊池雄星は乱調ぶりを自己分析した(三尾圭撮影)

 

 これで菊池の今季成績は2勝4敗、防御率5.93。防御率はメジャー1年目だった昨季の5.46よりも悪化しており、今季マリナーズで5試合以上に先発登板した6投手の中でも最悪の数字。

 ローテーションを守って8試合に先発登板しながらも、早い回での降板も多いので投球回数は41.0イニングで、菊池は規定投球回数には達していない。

 

 今季の菊池の問題は、走者を背負ったときの投球にある。

 走者なしの場面では被打率.191、被長打率.281、三振/四球比率3.63と優秀なのに、走者を背負うと被打率.317、被長打率.492、三振/四球比率1.44と別人のようになり、走者がスコアリング・ポジションにいるときには被打率.364、被長打率.515、三振/四球比率1.29とさらに悪化する。

 壊滅的に酷いのが2死で走者がスコアリング・ポジションにいる場面で、被打率.417、被長打率.667、三振/四球比率0.67と気持ちの優しさがデータにも現れてしまっている。

 そんな菊池にとって鍵となるのが各打者に対する初球。

 初球を振らせたときには三振/四球比率が11.00なのに対して、初球を見送られたときは1.94まで下がってしまう。

 ただし、初球がインプレーになったときの被打率は.545なので、甘い球を投げて簡単に初球ストライクを取りに行くことだけは避けたい。

菊池雄星の課題は走者を背負った場面での投球(三尾圭撮影)
菊池雄星の課題は走者を背負った場面での投球(三尾圭撮影)

 短縮60シーズン制の今季、22勝29敗のマリナーズの残り試合は9試合。今季は特別ルールで地区2位のチームにもプレイオフ出場権が与えられるが、現在アメリカン・リーグ西地区3位のマリナーズと2位のヒューストン・アストロズのゲーム差は3.0ゲーム。9月21日からはそのアストロズとの直接対決3連戦があるので、プレイオフへの望みはまだある。

 菊池の先発登板予定は残り1試合。次の試合までに修正して、次こそはチームに勢いを与える投球を披露して汚名を返上したい。

 「修正しなきゃいけないポイントっていうのは、ピッチングコーチと僕自身、一緒の答えを持っている。イニングの間にそこを直しましょう、という話はしたんですが、試合中では難しかった。明日から取り組めば、(次の先発までには)修正できると捉えてます」

 メジャーではまだビッグゲームでの登板経験がない菊池にとって、アストロズとの直接対決の結果次第では、次の先発登板がマリナーズのシーズンの命運を左右するビッグゲームになる可能性は高い。

 気持ちの優しさをマウンドで見せることなく、絶対に仕留めるという「キラー・メンタリティ」を持ってマウンドに登らないとビッグゲームでは勝てない。次の先発まではメカニックの修正はもちろんのこと、メンタル面も鍛えて、何事にも動じない強い精神力を持って登板したい。

 「ポストシーズンをチーム全員が目指してますし、可能性が残っているので、チームの力になれるように。その思いを持って投げたい」

 チームのために全力を尽くす。その強い気持ちとともにマウンドに上がれば、ビッグゲームで一回り大きく成長した菊池の姿を見られるはずだ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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