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ハーラーダービー・トップタイのヤンキース田中。自身初の20勝の可能性大

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ハーラーダービー・トップタイで4月を終えたヤンキースの田中将大(三尾圭撮影)

 4月は6試合に先発して、リーグトップ・タイの4勝(2敗)を上げたニューヨーク・ヤンキースの田中将大。日本では2013年の24勝無敗を始め、2度最多勝投手に輝いているが、メジャーに来てからは2016年の14勝(4敗)が自己最多だ。

 今季はメジャーでの自己最多勝記録の更新だけでなく、自身メジャー初となる20勝にも手が届きそうだ。

 田中はここまで6試合投げて防御率が4.37(アメリカン・リーグ32位)と奮わないが、それでも4勝と勝ち星には恵まれている。ア・リーグには4月に4勝を上げた投手は田中を含めて12人いるが、防御率4点台は田中1人だけで、1点台が3人、2点台も5投手もいる。田中は防御率こそ悪いが、防御率よりも投手の実力を正確に表すと言われるWHIP(イニング辺りに許した走者数)は1.029で、これはリーグ15位にランクする。

 田中の防御率が悪いのは、投球内容が良いときと悪いときの差が激しいから。6回を3安打以下、1失点で抑えた試合が3度ある一方で、5回を7安打、6失点以上と大きく崩れた試合も2回ある。

今季はここまで好不調の波が大きい田中将大だが、ようやく調子を取り戻してきた(三尾圭撮影)
今季はここまで好不調の波が大きい田中将大だが、ようやく調子を取り戻してきた(三尾圭撮影)

 ここ2試合は調子も上向きで、本来の投球を取り戻している。アーロン・ブーン監督と田中は「速球の制球力が生命線」と声を揃えて言うが、直近の2試合は速球を狙ったロケーションに投げることができており、それが好結果に繋がった。速球でストライクが取れると、フォークやスライダーなどの変化球の破壊力が増す。速球で打者を追い込んでから、切れ味鋭い変化球で仕留められる。

 田中自身は「(速球の調子が)特別に上がったとは思わないが、ゲームで投げられるものにはなってきた」と速球の精度がまだまだ向上することを匂わせる。

 また、6失点以上を喫した2試合はともに試合開始時の気温が7℃以下で、田中は否定するが悪天候の影響もあるはず。今年のアメリカ東海岸は4月だと言うのに異常な寒波に見舞われたが、最近は気温も暖かくなり、温度の上昇と共に田中の調子も上がるだろう。

 田中が今季20勝を上げられると思わせる最大の要因は、ヤンキースの強力打線にある。ヤンキースの打線は打率こそリーグ6位の.255と平凡だが、出塁率は.341でリーグ1位。長打率.456もリーグトップで、得点数も1位だ。

 試合平均5.86点を奪っているヤンキース打線だが、田中が先発した試合では特に好調で、平均7.13点を記録。なんと、6試合中半分の3試合で二桁得点を記録している。これだけ打線が好調であれば、田中も失敗や失点を必要以上に恐れることなく、余裕を持って投げられる。一発病が多いのは相変わらずなので、そこだけは気をつけたい。

昨季はメジャーの新人記録を塗り替える52本塁打を放ち、今季も4月に7本塁打を打っているアーロン・ジャッジ率いる強力打線が田中将大を援護している(三尾圭撮影)
昨季はメジャーの新人記録を塗り替える52本塁打を放ち、今季も4月に7本塁打を打っているアーロン・ジャッジ率いる強力打線が田中将大を援護している(三尾圭撮影)

 日本で無傷の24連勝を飾った翌年の2014年にメジャーデビューを飾った田中は、デビュー戦から6連勝と破竹の勢いで勝ち進み、6月には11勝1敗、防御率1.99でサイ・ヤング賞の最有力候補と騒がれた。しかし、その後は2勝4敗と勢いも止まり、夏には右肘の靭帯部分断裂で2ヶ月半も故障者リストに入った。

 あれから4年が過ぎ、田中はメジャーで頂点もどん底も味わい、試練を乗り越えることでメジャーリーガーとして生き抜く力を身に着けてきた。

 田中に抑えられたロサンゼルス・エンゼルスのマイク・ソーシア監督は「メジャーに来た当初はもっとハードに投げていたが、今では投球を熟知した投手となった」と田中の成熟ぶりを指摘。

 メジャー5年目。今年の11月には30歳の誕生日を迎える田中は円熟味ある投球術で、今季は自己最多勝を更新してくれるはずだ。

円熟味を増し、投球の幅が広がってきた田中将大(三尾圭撮影)
円熟味を増し、投球の幅が広がってきた田中将大(三尾圭撮影)
スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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