無観客試合のホームランボールはどこに行っているのか。

(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグは開幕してから10日あまりが経過した。8月4日までに333本のホームランが出ている。

 これまでなら、外野席にホームランボールが飛び込むと、観客がボールを捕球しようとしたり、追いかけたりしていた。観客同士で争奪戦が起こることもあった。ホームランボールは、捕球した人の物になるからだろう

 新型コロナウイルス感染予防のため無観客で試合を開催している今シーズンは、ホームランボールを捕球しようと手を伸ばす観客はいない。ボールはいったいどこへ行っているのか。

 今、ホームランボールを拾っているのは球団や球場の職員だ。そのボールをどうするかは各球団によって異なり、オークションにかけてファンに売る、ファンにプレゼントする、または再利用するなどされている。

 7月28日のスポーツイラストレイテッド電子版は、いくつかの事例を取り上げている。

 ツインズは特別な記録のかかったホームランボールや初ホームランの場合は保管し、それ以外は公式オークションへ。カージナルス、ロイヤルズ、ナショナルズ、メッツ、レッズ、エンゼルス、ロッキーズ、ホワイトソックスなども同様で、ホームランボールの多くを公式オークションにかけて売っている。(入場料収入がないので、ホームランボールをオークションにかけて売ることで、少しでも収益の足しにしたいという意向だろう)

 インディアンスは1試合あたり最大10球までのホームランボールと4つのファウルボールを慈善団体に寄付。

 アストロズはシーズンチケットの購入者へ郵送。カブスも、ファウルボールは、落下地点の最も近い席のシーズンチケットホルダーに郵送。(シーズンチケット購入者に特別なプレミア感を持ってもらうためには良い策だろう)

 カットアウトと呼ばれる観客をかたどった「ハリボテの観客」を席に座らせている球場も少なくない。

 レッドソックスは左翼のグリーンモンスター上のカットアウトに、ホームランボールが当たった場合は、ハリボテの観客として席を買った人にそのボール、ユニホーム、本塁打シーンのリプレー映像、2021年の入場券をプレゼント。マリナーズ、アスレチックスでもカットアウトにファウルボールや本塁打ボールが当たった場合に、ハリボテの観客として席を買った人にそのボールをプレゼントしている。

 私は打球が「ハリボテの観客」に当たったら、その「ハリボテの観客」として席を購入した人がボールをもらえるサービスを好んでいる。

 場内での観戦は、ふだんは何のつながりもない大勢の観客といっしょになって、同じチームを応援することに醍醐味がある。

 チームや選手は、その大勢の観客とつながっている。

 しかし、ファンと選手との1対1の関係が生まれることがある。選手の放ったホームランボールを捕って、そのボールが自分のものになる瞬間、自分と選手だけの関係が生まれる。記録のかかった一打ならば、特別なホームランを打った選手と、大勢のなかで自分だけが、ボールを通じてつながったことになる。もちろん、見物人でありながら、ゲームの一部になったかのような気分にも味わえるのも魅力だ。

 オークションでお金を払い、ボールを競り落とすことで、その選手と自分とだけのつながりを得るのも良い。しかし、そこには、ゲームの偶然性の要素は入り込めない。打球がたまたま自分の座席近くに飛んできたという偶然によって、ボールを手にするのとは少し違う。

 「ハリボテの観客」になることで、チームへの愛とサポートを示し、他のファンとのバーチャルな一体感や、自分もファンの一員であるという帰属意識を感じることができる。

 それと同時に、打球が偶然に自分のところに飛んできたという、他のファンには巡ってこなかった幸運によって、自分と選手だけのつながりが欲しい。だから、私はやっぱり、ハリボテの観客に打球が当たったら、その人にプレゼントするサービスを推す。