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メジャーのベテラン捕手2人に聞きました。テクノロジーと肉眼と対話の使い方。

谷口輝世子スポーツライター
昨年のドジャースのキャンプから。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

NPBからやや遅れて、メジャーリーグ全球団もキャンプインした。

ブルペンでは、投手たちの投げるボールがキャッチャーミットに収まり、心地よい補球音が響いている。今では、どの球団もラプソードなどの機器を設置して、投球に関するさまざまなデータを取得するのが当たり前。すぐにはじきだされたデータを見てフィードバックを得ているピッチャーもいる。

昨年3月、メジャーで10年以上もマスクを被ってきた2人に、テクノロジー時代のキャンプのブルペンで捕手は何を重要視しているのか質問した。投手は新しい球種やフォームに取り組んだり、オープン戦では打者の反応や状況を見ながら、レギュラーシーズンで使えるかを試している時期だ

今年はまだ、どの球団とも契約していないが(引退表明もしていない)、06年にメジャーデビューし、昨年までドジャースなどで活躍した37歳のラッセル・マーティンの話はこうだ。

「キャンプ中は、まず自分の目で観察する。ボールを捕球していないときでも、ベンチや、テレビで見る。僕がピッチャーたちを最も学べるのは自分の目で見ることなんだ。それとコーチから各ピッチャーがどのようなことをしたいのかレジュメのようなものをもらう。初めてボールを捕るピッチャーの場合は、ビデオルームへ行くこともあるけどね」

マーティンは、キャンプからオープン戦にかけて最も重要なことは「ピッチャーとコミュニケーションを取ること」だと言う。

「実際にグラウンドへ出ていくときには、信頼感が鍵を握る。僕が出すサインに対してピッチャーたちが気持ちよく投げられるか。何かを心配したり、疑問を持ったりすることなしピッチャーが投げられるか。それができるとピッチャーはリズムをつかむことができ、自信を得て、よりよいピッチングができるから」と説明してくれた。

09年にメジャーデビューし、タイガース時代にはバーランダーやシャーザーとバッテリーを組んだアレックス・アビラ。33歳の今季はツインズでプレーする。昨年3月には、ダイヤモンドバックスでマスクを被っていたアビラにも、データ時代にキャンプからオープン戦にかけて捕手として重要なことは何かを聞いた。

彼もまたマーティンと同じ答えだ。

「ブルペンの前やブルペンの後で、ピッチャーと十分に話をすることが大切。ひとりひとりのピッチャーがどんなことを重要だと感じているのか。映像やデータを見ることもするけど、僕は直接、見ることを好んでいる」

「オープン戦に入ると、試合のなかで僕がキャッチャーとして見たことを、どのようにしたらピッチャーの成功に活かせるのかを考えてコミュニケーションを取る」

今のようにデータが少ない時代からやってきたからこそ、うまくデータを使えるという自負もある。

「シーズンに入って、具体的に、特定の打者にどのように対戦するかを考えるときには映像も見る。10年前よりも得られるデータの数は明らかに増えている。僕は今のようなデータなしに、どうしたらいいのかを考えてきたのだから、データを手にできることで、よりアドバンテージを得ていると思うよ」

テクノロジーとデータ時代の野球。それでも、話をして、分かり合わなければ、データを活用することはできない。今年も対話し、信頼関係を築きながら捕手たちはキャンプ地でボールをうけている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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