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戦前と戦後を生きる。日系カナダ人とカーリング

谷口輝世子スポーツライター
筆者撮影

今年3月末から4月にかけてカーリングの男子世界選手権がカナダのレスブリッジという街で行われた。レスブリッジは、カルガリーから南に200キロメートルほど離れたところにある小さな都市である。

日本代表のコンサドーレは総当たりの一次リーグで強豪カナダを破るなどの快進撃を見せ、最終的には4位に食い込んだ。

この一部始終を見つめていたベテランカーラーがいる。

レスブリッジ在住の日系カナダ人のトッシュ・カナシロさんだ。80歳。世界選手権の開催にも協力しているレスブリッジ・カーリング・クラブに籍を置いており、カーリング歴は50年以上。同クラブの旧会場が閉鎖されるとき、最後にストーンを投じるというセレモニーの大役を果たした。(現在、同クラブは市の中心から少し離れた新しい施設を使っており、ここは2017年のミックスダブルスの世界選手権の会場としても使われた)

カナシロさんは沖縄にルーツを持つ日系2世。カナダで生まれ育ち、日本にルーツを持つというアイデンティティが、カナシロさんのカーリングの応援にも反映されている。

カナシロさんは総当たりの1次リーグで日本のコンサドーレがカナダを破ったときには、「正直、がっかりしました」と苦笑い。それから「運が味方したから日本が勝ったという試合ではなかった。さすがだと感心しました」と付け加えた。日本がカナダ以外の国と対戦するときには、日本を応援。日本ースイスの3位決定戦は、日本に肩入れして観戦した。「カーリングだけでなく、他のスポーツを見る時も、日本人選手や日本チームは特別な関心を持って見ていますね」と言う。4位に入ったコンサドーレを「ドローショットの技術がとても良い」と分析していた。

日本代表チームだけを応援しているわけではない。レスブリッジ・カーリング・クラブの一員として、日本のクラブとも直接つながっている。1980年代の半ばにレスブリッジ・カーリング・クラブと、帯広カーリング協会が姉妹クラブとして提携を結ぶにあたっても尽力。その後も、帯広カーリング協会がレスブリッジに来た時には、何かとサポートしてきた。

御年80歳。第二次世界大戦中に日系カナダ人であるがゆえに強制収容所に隔離された歴史も背負っている。戦時の弾圧と排除も生きてきた。今日は終戦記念日。カナシロさんがカナダチームも、日本チームもうれしそうに応援していた姿をふと思い出した。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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