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息子がNFLで大活躍。元横浜ベイスターズのパット・マホームズの心境は?

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NFLのカンザスシティ・チーフスのQBパトリック・マホームズが素晴らしい活躍をしている。今季3試合で13TDパスを記録。2013年にペイトン・マニングスが記録した開幕3試合12TDパスを上回った。

 パトリック・マホームズは、1997-98年に横浜ベイスターズに在籍していたピッチャー、パット・マホームズの息子だ。

 息子のパトリックは、2017年のドラフトでチーフスから一巡目の指名を受けた。今季が2シーズン目の23歳。昨季はあまり出場機会がなかったが、チーフスはQBのアレックス・スミスを放出し、マホームズを抜擢した。

 米国でも息子・パトリックの活躍は大きく取り上げられている。その報道の中には、アメリカンフットボール担当記者ではなく、名物野球記者のボブ・ナイチンゲールさんが書いた記事があった。

 記事は9月18日付のUSAトゥデー電子版に掲載された。

 父マホームズはナイチンゲール記者にこのように話したそうだ。「息子が子どものときにやっていたのは野球。バスケットボールもやっていた。その2種目が彼のスポーツだった。僕は息子にフットボールをさせないようにしてきたが、高校のジュニアの時(11年生)にQBをやりたいと言ってきた」。自分も歩んできた野球の道に進んで欲しいという希望と、アメリカンフットボールで怪我をすることが心配だったのだろう。

 それから、父マホームズは大きく息をついて「息子は正しい選択をしたと、僕は認めなければいけない」と言ったという。

 息子の高校時代は、アメリカンフットボールをすることに難色を示したが、大学進学は息子の決断に任せ、NFLに入る時点では、もはや反対する理由はなかった。息子は高校卒業時の2014年にデトロイト・タイガースから37巡目という下位だったがドラフト指名された。父は野球選手になっていても、少なくとも自分と同じかそれ以上の成績を残しただろうと考えている。

 父マホームズは現役時代から最も縁起担ぎをする選手として有名だったらしい。息子の試合を観戦するときも、縁起担ぎを継続しており、勝ち続けているときには、同じ服装で試合を観戦しているという。冬のカンザスシティは寒いが、そのときはどんな服装をするのかなどとジョークも飛び出しての取材だったことがうかがえる。

 

 ナイチンゲール記者は、この記事を書くのにツインズなどで長く活躍したピッチャーのラトロイ・ホーキンスにも取材している。

 息子パトリックのゴッドファザー(洗礼時の代父)がホーキンスなのだという。マホームズとホーキンスは親友。42歳までメジャーリーガーだったホーキンスも2015年を最後に現役を引退し、チーフスのシーズンチケットを買い込んでマホームズとともに彼を応援している。

 ホーキンスは親友の息子がNFLを志望したとき、「君は、他の選手たちを引っ張っていく準備ができているのか。俺は大人の男たちの話をしている。家族を養っている彼らの選手生命は、君のパフォーマンスにかかっている。覚悟できているんだな」と言い聞かせたそうだ。今季は、息子パトリックの冷静なプレーに感心し、称賛のテキストメッセージを送った。

 息子パトリックは早くもチーフスを背負う看板選手になった。高校時代まではアメリカンフットボール選手になるのを嫌がっていたマホームズはこう言ったそうだ。「僕は僕の選手生活を誇りに思っているけども、息子はすでにそれを追い越してしまったと言わなければいけないね」。マホームズのうれしそうな顔が目に浮かぶようだ。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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