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殿堂入りブラディミール・ゲレーロのトレードマークは、超有望選手の息子ではなく甥へ。そのわけを聞く

谷口輝世子スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 エクスポズ、エンゼルスなどで、強打と強肩で活躍したブラディミール・ゲレーロが今年1月に米国野球殿堂入りした。

 メジャーリーグファンなら、すでにご存じかと思うが、今シーズン、彼の息子ブラディミール・ジュニアがマイナーで驚異的な成績を残した。来シーズンにはメジャーリーグに昇格するだろう。

 ジュニアはまだ19歳。右投げ右打ち。父がエクスポズでプレーしていた時にカナダのモントリオールで生まれ、ドミニカ共和国で育った。2015年7月にブルージェイズと契約し、傘下のマイナーでプレーしている。今季は、ルーキーリーグから1A、2A,3Aと駆け上がり、4チームで計95試合に出場し、打率3割8分1厘、20本塁打、78打点を記録。

 ロースターが拡張した9月初めにメジャー昇格するものと思われたが見送られ、選手会が球団を「経営上の理由で昇格させなかったのだろう」と批判した。

 超有望選手のジュニアに代わって、一足先にブラディミール・ゲレーロの甥、ガブリエル・ゲレーロが9月4日、レッズからメジャー昇格を果たした。右投げ右打ちの24歳。

 ゲレーロ一家は野球ファミリーである。殿堂入りしたブラディミールの兄、ウィルトン・ゲレーロもドジャースやエクスポスなどでプレーしたメジャーリーガーだ。ガブリエルの父は、ウィルトン、ブラディミールの兄である。他にもゲレーロ家にはマイナーリーグでプレーしていた選手がいる。何だか歌舞伎役者の紹介に使われるような家系図が書けそうだ。

 ガブリエルは9月11日のドジャース戦で8番センターで先発起用され、メジャー初安打を放った。がっちりとした肩、それに比べると腰のあたりは細く、背が高い。叔父のブラディミールにそっくりである。レッズのリグルマン代行監督も「息子のジュニアよりも、彼のほうが似ているくらいだね」と言う。確かにジュニアは身長は父親ほど高くはなくて182センチメートルほど。父親にそっくりと言うわけではない。また、ブラディミールは外野手だったが、ジュニアは三塁手。ちなみに甥のガブリエルは外野手だ。

 ガブリエルに「ブラディミール叔父さんにそっくりですね」と話しかけた。

 彼は「僕の父が叔父のブラディミールにそっくりなんですよ。だから、僕もブラディミールおじさんに似ているんだと思う」と笑う。

 父親からも野球を教わったとは思うが、元メジャーリーガーの2人の叔父からも野球の手ほどきを受けたのか、と聞いた。

 すると、彼は「ウィルトン叔父さんがドミニカ共和国で野球アカデミーをやっているんだ。だから、僕もそのアカデミーにいた。僕は父からも教えてもらったし、もちろん、ブラディミールの叔父にもたくさん教えてもらった」と贅沢な育成環境を披露してくれた。

 ガブリエルは打席に入るときは、バッティンググローブははめずに素手でバットを握る。それは、ブラディミールのトレードマークでもあった。私が映像で確認した限り、息子のジュニアはバッティンググローブを使用している。

 甥はちょっと肩をすくめる仕草をしてこう言った。「バッティンググローブをしていないのは、別に叔父のまねをしているわけではないんだけど、バッティンググローブなしの方が僕にはしっくりくる」。

 ガブリエルは従弟のジュニアとはよく連絡を取りあっっているそうだ。マイナーで対戦する機会はなかったが「ドミニカでのウインターリーグはよく対戦した。来年はメジャーで対戦したい」と言った。

 来シーズンは、次世代ゲレーロファミリーの活躍が見られるか。家系図に新な歴史が書き加えられるか。

 

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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