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活動はコミコミで週18時間まで。違反は「スパイ」が告発も 米国学校運動部2

谷口輝世子スポーツライター
米国の中学クロスカントリー部の学校対抗戦

加盟校全運動部の練習時間を制限

日本では、学校運動部の長時間に及ぶ活動が問題になっている。

米国カリフォルニア州では、高校運動部をまとめる連盟(California Interscholastic Federation)が、加盟校全運動部の活動時間を「1日4時間まで。1週間に18時間まで」とする規則を定めた。この規則は2014-15年度から適用されている。

カリフォルニア州のポータービルレコーダー紙(Poterville Recorder 2014年5月14日付)によると、これまで連盟と学校には練習時間が長すぎることについて、保護者からの苦情が届いていたという。連盟では、議論を重ねて投票を行い、規則導入を決めた。前年度までは練習時間に関する規則はなかったが、生徒の心身の健康と家族や学業の時間を確保するための制限だ。

コミコミで週18時間

週18時間は、ほとんどの運動部にとっては、試合や練習試合を含めても十分な練習時間といえる。この規則では、試合、ミーティング、ウエイトトレーニング、小人数グループ練習なども含めて活動時間を週18時間と定めている。詳細なルールは以下のようなものだ。

  • 練習は1日最長で4時間まで。

ゴルフ部の18ホールラウンド練習は例外とし、これを4時間と計算する。18ホールラウンド練習は週に2度まで。

  • 1日に2回練習を行う二部練習は2日続けて行ってはいけない。1日に2回に分けて練習するときは3時間以上の休憩をはさむこと。
  • 試合や競技会は「練習3時間」と計算する。(地区によって少し異なるが、練習試合も時間制限があり、これも練習時間とみなす)
  • ウエイトトレーニング、ランニング、ミーティングなども運動部の顧問(コーチ、監督)が指示したり、付き添ったりしているものは練習時間として計算する。

「スパイ」が偵察も

これらの規則は遵守されているのか。州の連盟が監視するのは容易なことではない。

しかし、この練習制限規則の存在を学校、生徒、保護者、地域が知ることで、違反があれば内外部から連盟に訴えることができる。規則違反の練習状況をデジタル端末を使用して記録することもできる。筆者はミシガン州の高校運動部の顧問から「強豪校や相手校からマークされている学校の場合は、違反していないかどうか、対戦相手側から様子を見にくることがあるようです」と聞いた。ライバル校が規則違反をしていないかを調査する「スパイ作戦」ともいえるだろう。

規則違反が明らかになった場合には、一定期間の練習停止処分などが科されることになっている。

州の競技規則として一斉に練習時間を制限するので、対戦校と練習時間で大幅な差がつくことはない。「ライバル校よりも練習をしなければならない」という考えに縛られないことも規則の効力だろう。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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