今年もCOVID-19の流行のため、ふるさとに帰るかどうかは難しい判断になるかと思いますが、この時期、1年の中でも最も正座する機会が多いのではないでしょうか。

ふだん、椅子の生活に慣れていると、正座は結構きつく感じます。特に、あのしびれが切れる独特の感覚は、どうして起こるのでしょう。

正座しているときのしびれと、足をくずした後のしびれは違う

"しびれ"という感覚は本人にしか分からない、主観的な感覚で、しかも人によって表現している感覚が違うことがしばしばあります。

進行した糖尿病や、椎間板ヘルニアなどの脊髄・脊椎の病気、抗がん剤の副作用でも"しびれ"と表現される不快な感覚が問題になりますが、麻痺して動かない状態を「しびれ」と言っている場合もあります。

その中で「正座の後のしびれ」は比較的、共通認識が得やすい、分かりやすいしびれではないでしょうか。

この誰もが経験し、共感が得られやすそうな「正座後のしびれ」ですが、それでもジンジン、ピリピリ、チクチクなど表現に幅があります。

また、実際には正座している最中に起こってくる、感覚が無くなったようなしびれと、足をくずした後で感じるちょっと痛みを伴うようなしびれとは少し異なっています。

具体的には、「ジンジン」と表現されることが多い感覚は、正座を始めてしばらくして感じ始め、足をくずした後もしばらく続きます。

一方、「ピリピリ」とか「チクチク」という痛みに似た感覚は、足をくずした後に起こってきます。

正座のしびれはどうして起こる?

正座すると、膝から上の体重がふくらはぎの上に乗った状態になります。すると、膝から下の神経や血管が圧迫されます。

特に膝の裏を通る膝窩動脈は骨と筋肉の間に挟まれる形になり、また足の甲を通る足背動脈は床との間で圧迫されます。

神経が”直接”圧迫されてもしびれが起こりますが、正座の場合は、むしろ動脈が圧迫されることによって起こる血流不足と、足をくずすことによってふたたび血液が流れ出すことが原因と考えられています。

京都大学のグループが、ネズミを使った研究でこのしびれが起こる仕組みを調べています。

ネズミは正座ができないので、実験ではネズミの後ろ足を一時的に糸でしばって、血液の流れを悪くするという方法がとられました。

「足を糸でしばるなんて、かわいそう」と思われるかもしれませんが、もちろん足が壊死したり後遺症が残ったりする強さや時間ではありません。余談ですが、整形外科で手や足の手術を行う時には、出血量を抑えるために、二の腕や太ももを強く圧迫した状態で処置を行うことがあります。これも、圧迫している時間が長くなりすぎるとトラブルになるため、時間を計りながら行います。

また、病院などで血圧を測ったことがあるかもしれませんが、二の腕に巻いた布が、最初にぐーっと硬く、強く腕を圧迫します。この強く圧迫した状態を長く続けると、やっぱり手がしびれてきます。

ネズミでこの状態を再現しているわけです。

もちろんマウスに「しびれ切れた?」と聞くわけにもいきません。しかし、縛っている状態では、後ろ足を触っても、(おそらく)感覚が鈍くなっているため、後ろ足を引っ込めるような動きが見られなくなります(ジンジン期)。

また、縛っている糸を切ると、この後ろ足を必死にペロペロなめる行動が見られますが、きっと正座後にしびれが切れたのと同じか似た状態と考えられます。

この研究では「TRPA1」という、酸欠などの刺激で活性化される蛋白が、足をくずした後のようなピリピリするしびれの感覚に関わっていることが分かりました。

つまり、しびれが「おい、足の血流が足りていなかったから、問題ないか確認しろ!!」「こんなことにならないように注意しろ」という警告になっているのかもしれません。

多くの場合、しびれや痛み、イヤな臭いなどの不快な感覚は、本来は生命の維持に必要だから身体に備わっているはずです。

しびれや痛みが無ければ、いつまででも正座していることも可能かもしれません。

しかし、しびれが「足の血流が悪くなっているぞ」という警告・サインになっているので、「そろそろヤバいから、足をくずそう」という判断につながるわけです。

しびれがなくて、長時間圧迫が続くと、最悪、筋肉が壊死したり、床ずれができたりする可能性があります。

*しびれが切れる程度の正座では起こりません。

正座でしびれないためには

ところで、正座が避けられないシーンは色々あります。それに、かなり長時間正座していても大丈夫な人もよく見かけます。

どうすれば正座でしびれずに済むでしょうか?

足の血流が悪くなることが主な原因だとすると、ふくらはぎの圧迫を少なくして、血流が悪くならないようにすればよいことになります。

まず、ジーンズのような厚めの生地で、膝裏が圧迫されるような衣類はしびれやすいため、正座することが分かっているときは避ける方がよいでしょう。

その上で、

重心を前(ひざ側)にしてお尻を浮かせるようなバランスにする

かかととおしりの間に紙を1枚挟むようなつもりで上半身を上に引き上げる、

かかとの間を開いてすわる。

足の親指を重ねる

親指を重ねることで、足の甲にある足背動脈と床の間にすき間ができると言われています。

正座用いすを使う

正座用の椅子は、あらかじめ断っておけば、最もしびれにくい方法といえます。お年を召してくると、膝関節に不調がある方も多いので、膝に負担をかけないという意味でもおすすめです。

また実際に正座中にしびれてきた場合には、親指の上下を入れ替えたり、重心を左右の足のうえにかけかえたりすることで、血流を回復させるのが有効です。

足を横に出すのも、血流回復には有効ですが、目立たないようにしましょう。

長時間正座するためには「慣れておく」というのが有効なようです。

普段から正座に慣れておくことで、太い動脈が圧迫されても大丈夫なようにバイパス血管が発達するのかもしれません。

背筋がすっと伸びた正座姿は、凛としたかっこよさがありますが、コツをつかんで真似したいものです。

参考文献

1. 佐藤一美, 中村美知子. <資料> 健康人の正座によるしびれ感と末梢血流状態との関係. 山梨大学看護学会誌. 2007;6(1):53-57.

2. So K, Tei Y, Zhao M, Miyake T, Hiyama H, Shirakawa H, Imai S, Mori Y, Nakagawa T, Matsubara K, Kaneko S. Hypoxia-induced sensitisation of TRPA1 in painful dysesthesia evoked by transient hindlimb ischemia/reperfusion in mice. Sci Rep. 2016 Mar 17;6:23261. doi: 10.1038/srep23261.

3. しびれにくい正座のコツ. Published 2010. Accessed August 4, 2021. https://style.nikkei.com/article/DGXDZO05453420Z00C10A4W08100/?channel=DF130120166128

4. 日本正座協会. Accessed August 4, 2021. https://www.seiza.net

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】