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かき氷一気食いで頭がキーン…「アイスクリーム頭痛」が早くおさまる方法とは?

木村俊運脳外科医
(写真:PantherMedia/イメージマート)

かき氷頭痛はなぜ起こるのか?

うだるような暑い日が続いていますが、この時期、冷たいかき氷やよく冷えたビールは余計に美味しく感じますよね。

しかし、調子に乗ってかき氷をかき込んだり、キンキンに冷えたビールをぐいぐい飲んで、ガーンという頭痛に見舞われたことはないでしょうか?

普段、頭痛とは無縁の人でも、このような頭痛を経験することがあります。

健康番組などで「普段経験したことのない激しい頭痛は要注意!」などと取り上げられているのを連想して、「もしかして救急車呼ぶ方がいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。

ご安心ください。

かき氷など、冷たいものを食べたり飲んだりすることで起こる頭痛は、海外でも”アイスクリーム頭痛(icecream headache)”とか、frozen brain(凍った脳)として知られていて、くも膜下出血や脳腫瘍といった重大な病気との関連はありません。

多くの場合、冷たい食べ物や飲み物を飲んで十数秒で起こり、1分以内に一番ひどい状態は終わります。

このタイプの頭痛が5分以上続くことは稀で、筆者の経験からもそんなところでしょう。

こめかみ周辺や、おでこが痛くなることが多いですが、両側とも痛くなったり、後頭部が痛くなる人もいます。

このアイスクリーム頭痛、だれでも経験するものだと思っていましたが、実際に調べてみるとそうでもないようです。

いくつかアンケートによる研究結果がありますが、台湾の学生を調べた大規模な研究では、約4割の生徒にアイスクリーム頭痛を経験したことがあるという結果でした。

つまり、意外にも5人に3人は経験したことが無いということです。

また、いくつかの研究で、片頭痛がある人の方が、普段から頭痛がない人よりもアイスクリーム頭痛を起こしやすいと言われています。

どうして起こるの?

アイスクリーム頭痛が起こる仕組みは、実はよく分かっていませんが、二つの説が有力です。

舌で口の中の天井に当たる部分をさわると、硬い骨に触れることができます。口蓋(こうがい)という部分ですが、この口蓋や、のどちんこの奥側にあたる咽頭(いんとう)と呼ばれる部分に、氷や冷たい飲み物が流れ込むことがきっかけとなります。

一つの説は、温度に敏感に反応する神経が、冷たいものに直接刺激されて、三叉神経という顔の感覚を支配している神経に信号が伝わり、頭痛が起こるというものです。

もう一つは、血管が刺激されて収縮し、冷たいのに慣れて広がるときに、痛みを感じる、という説です。片頭痛の患者さんでは、刺激によって血管が広がることで頭痛が起こると言われていますが、アイスクリーム頭痛でも同じような仕組みで起こるのかもしれません。

では、アイスクリーム頭痛を起こしやすい食べ物、というのはあるのでしょうか。

個人的には圧倒的にかき氷だと思っていましたが、わざとこの頭痛を起こした研究があります。

口蓋(口の中の上側の硬い部分)に氷のブロックを押し当てる方法と、氷水を一気に飲む方法で比べた場合、どちらの方が痛いかを調べたものです。

その研究によると、氷を口蓋に直接当てて刺激するよりも、氷水を一気に飲む方が、頭痛を起こしやすく、しかも”氷水の方が痛い”という結果でした。

具体的には、氷水だと平均15秒で頭痛が起こるところが、氷のブロックだと68秒かかったということです。

口の中が冷えるスピードが速く、冷やされる面積が広い方が、より痛いようです。

つまり、かき氷よりキンキンに冷えたビールの方が、頭痛を起こしやすいということですね。

どうやったら治る?

最初に書いたように、このアイスクリーム頭痛はだいたい1分くらいでおさまります。なので、通常、痛み止めを飲んだり、予防薬を内服したりする必要はありません。

実際に経験した人は、何となく自然にやっていると思いますが、舌を口蓋に押し当てるのが有効です。舌の温度で、冷えた口蓋の温度を元に戻してあげるのです。

同じように、温かいお茶を飲むというのも効くみたいですが、暑いから冷たいものを食べたり飲んだりしていることを考えると、現実的ではないでしょう。

起こらないようにする方法は?

確実なのは、冷たい食べ物や飲み物を食べない・飲まないことです。

かき氷やアイスクリームを食べないようにすれば、この頭痛は起こりません!

しかし、ひどい暑さを少しでもなんとかしたい、ひとときの涼を楽しみたいというのが、人情です。

なんとかして、かき氷や冷えたビールを楽しみたいですよね。

これも頻繁に起こる人は自然とやっていることですが、「ゆっくり食べる(飲む)」というのが正解です。

つまり、氷水を一気飲みしたりして、急激に口の中の温度が下がることで痛みが出るので、もともとの口の中の温度で、氷なり、ビールなりの温度を少しなじませてあげることで、頭痛は起こりにくくなります。

冷たいものではないのに激痛が…

余談ではありますが、冷たいものでもないのに、噛むと激痛が起こる「三叉神経痛」という病気があります。

比較的稀な病気ですが、噛む動作とか、顔を洗ったり、化粧をしたりする刺激が、激痛として感じられる病気です。

アイスクリーム頭痛も三叉神経という神経が関与している説がありますが、三叉神経痛はその「三叉神経」が直接関わる痛みです。

頭痛というよりは奥歯のあたりや顔面の激痛であり、ヒトが経験する中で最も強い痛みとも言われます。

典型的には、頭の中で、三叉神経が動脈に圧迫されているせいで、噛んだり触ったりした感覚が、間違って痛みとして認識されてしまう病気です。

かつては治療法がなかったものの、現在ではいくつか治療法があります。

まず、神経の興奮を抑えるような薬で痛みを抑えられることが多いです。また、神経ブロックと呼ばれる麻酔のような方法、もしくは放射線治療(ガンマナイフ)で三叉神経自体のはたらきを抑える方法の他、手術で痛みの元になっている動脈を神経から離れさせる方法があります。

それぞれメリット・デメリットがありますが、虫歯でもないのに噛むと激痛がするとか、顔に風が当たっても痛いような場合には、脳外科や神経内科、ペインクリニックの医師に相談しましょう。

参考文献

A, Dilli E. Cold Stimulus Headache. Curr Neurol Neurosci Rep. 2019 Jun 6;19(7):46. doi: 10.1007/s11910-019-0956-5.

Mages S, Hensel O, Zierz AM, Kraya T, Zierz S. Experimental provocation of 'ice-cream headache' by ice cubes and ice water. Cephalalgia. 2017 Apr;37(5):464-469. doi: 10.1177/0333102416650704.

Fuh JL, Wang SJ, Lu SR, Juang KD. Ice-cream headache--a large survey of 8359 adolescents. Cephalalgia. 2003 Dec;23(10):977-81. doi: 10.1046/j.1468-2982.2003.00620.x.

Celeste Robb-Nicholson. What causes ice cream headache? Harvard Health Publishing. URL; https://www.health.harvard.edu/pain/what-causes-ice-cream-headache (accessed 2021 Aug 1)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

脳外科医

脳神経外科医。脳動脈瘤・良性腫瘍・バイパス手術・微小血管減圧術(顔面痙攣・三叉神経痛)など、微細操作が必用な手術が得意。日本赤十字社医療センター(渋谷)。

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