「Zoom疲れ」 誰も知らないビデオ会議の恐ろしい「落とし穴」と簡単過ぎる解決策

コロナ危機で利用者が激増したZoom(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」はどうして実際の会議より疲れるのか――。

米スタンフォード大学仮想ヒューマン・インタラクション・ラボ創設ディレクター、ジェレミー・ベイレンソン教授らは、リモートワークの在宅勤務者がビデオ通話で自分自身を見つめていることに過度のストレスを感じているという研究結果を報告した。

コロナ危機で接触制限やリモートワークが日常となり、Zoom、マイクロソフト・チームズ、グーグル・ミートなどビデオ会議の需要は激増。ベイレンソン教授らは1日に数時間、Zoomのビデオ会議に参加した場合の肉体的な影響について調査した。

それによると、いわゆる「Zoom疲れ」には4つの原因があり、簡単に緩和できるという。

(1)過剰なクローズアップ・アイコンタクト

通常の会議では参加者はさまざまな発言者を見たり、メモを取ったり、他の場所に目をやったりしている。しかしZoom会議ではそれぞれの参加者が常に他の参加者全員の顔と向き合っている。

会議で実際には一度も発言しなくても、自分を見ている参加者の視線を浴びることになる。人前で話すことは緊張を伴うため、Zoom会議でアイコンタクトが増えるのに伴って参加者が感じるストレスも膨れ上がる。

同僚や初めての人と1対1で会話している場合、モニターに映し出される相手の顔が大きすぎて、脳が「交尾」や「対立」につながる状況と解釈する。Zoomを何時間にもわたって使用していると脳は非常に興奮した状態に陥る。

【解消法】モニターに映し出される参加者の顔を小さくするため、Zoomを全画面表示ではなく、ウィンドウのサイズを縮小して利用する。

(2)チャット中に常にリアルタイムで自分自身の姿を見ることに疲れる

実際の会話や会議では参加者は自分の姿を見ることはないが、ビデオ会議ではモニターにウェブカムで撮影された自分自身がリアルタイムで映し出される。これはずっと鏡の前に座って会話や会議に参加するという異常な状況を作り出す。

自分自身の反射を見るとより自分自身に対して批判的になる。自分自身の姿を常に見ることは自分自身に負担となり、ストレスがたまる。

【解消法】セルフビューを非表示にする。

(3)ビデオチャットは参加者の活動範囲を劇的に低下させる

対面や携帯電話で会話する場合、参加者は歩き回ることができる。しかしビデオ会議ではパソコンのウェブカムが撮影できる範囲内に釘付けされる。人はじっとしているより動いている時に認知能力はアップする。

【解消法】パソコンから離れた場所に外付けカメラを設置すると、実際の会議と同じように余裕ができる。ひと息つくために会議中に定期的にビデオをオフにすることもお勧め。

(4)ビデオチャットにより認知的負荷がはるかに重くなる

通常の対面のやり取りでは、私たちは無意識のうちにジェスチャーやボディランゲージで信号を送り、相手もそれを自然に解釈している。ビデオ会議では同意を示したい場合、大げさにうなずくか、親指を立てる必要がある。コミュニケーションのため、対面のやり取りでは必要のない精神的なカロリーを消費する。

実際の会議で誰かを横目で見るのと、ビデオ会議の最中に仕事部屋に入ってきた子供やペットを見るのとでは全く持つ意味が異なる。

【解消法】長時間の会議では自分で「音声のみ」の休憩を取る。単にウェブカムをオフにするだけでなく体をモニターから遠ざける。そうすることによって無意味なジェスチャーによって窒息することから解放される。

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実際にビデオ会議で1対1の面接を行った際、妙に馴れ馴れしくなってプライバシーに立ち入った質問をして問題になるケースが筆者の周りでも報告されている。モニターに映し出される相手の顔が大きくなると、脳が「交尾」や「対立」につながる状況と解釈してしまうというのは恐ろしい落とし穴だ。

かと言って相手の顔を小さく表示するためウィンドウのサイズを縮小すると、今度は相手のジャスチャーやボディランゲージによる重要なシグナルを見落としてしまう。ベイレンソン教授らの研究は、ビデオ会議のおけるコミュニケーション術の難しさに改めて気付かさせてくれる。

Zoomの利用者は2019年12月には1日1千万人に過ぎなかったが、昨年10月には3億人に拡大。株価は昨年ほぼ4倍になり、時価総額は1088億ドル(約11兆6千億円)と1千億ドルを突破した。マイクロソフト・チームズの1日の利用者は7500万人(昨年4月)、グーグル・ミートは同1億人。

(おわり)