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ヘンリー王子の婚約者メーガン・マークルさんはオシャレじゃないが、輝いて見えるワケ 10代は熱狂的歓迎

木村正人在英国際ジャーナリスト
マークルさんの薬指に光るダイヤの婚約指輪(筆者撮影)

[英イングランド北部ノッティンガム発]11月27日に婚約を発表したばかりのヘンリー英王子(33)=王位継承順位5位=とメーガン・マークルさん(36)が12月1日、初公務でノッティンガムのHIV支援団体と公立学校を訪れたので、追っかけてきました。

ヘンリー王子とマークルさんを待つ沿道の市民(筆者撮影)
ヘンリー王子とマークルさんを待つ沿道の市民(筆者撮影)

ロンドンから電車で1時間50分。ノッティンガムは雪が残り、歩道には薄っすら氷が張る寒さでした。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)保有者を支援する団体テレンス・ヒギンス・トラストに2人が姿を現したのは午前11時すぎ。沿道にはその5時間以上前から市民が集まってきました。

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遠くからざわめきが伝わってきましたが、2人とも地味な格好をしていたので最初は全く気づきませんでした。ヘンリー王子とマークルさんは沿道の両端を行ったり来たりしながら、市民と握手したり、声をかけたりしていきます。王室と国民の距離の近さを改めて感じました。

ノッティンガムを訪れたヘンリー王子とマークルさん(筆者撮影)
ノッティンガムを訪れたヘンリー王子とマークルさん(筆者撮影)

「ヘンリー王子は良い選択をしました。2人とも多くの共通点を持っています。彼女がアメリカ人で離婚歴があることも全く気になりません。とても愛らしい人。彼女の母親はヨガの先生でしょ。私もヨガをしているから好きよ。若い人たちが力を合わせて善い行いをしているロイヤル・ファミリーの未来は明るいです」と年金生活者の女性パット・ハリスさん(75)は声を弾ませました。

ウィリアム王子の妻キャサリン妃よりファッションが注目されるようになったマークルさんですが、派手なところがなく、この日のオシャレと言えば、ヘンリー王子からプレゼントされたダイヤの婚約指輪を左手の薬指にはめているぐらいでした。

従来のロイヤル・ファミリーのファッションと言えば、エリザベス女王を見れば分かるように、すごく目立つカラーを使って華やかなのが特徴です。

2人はラブラブとは言え、カメラのファインダーを通して見たマークルさんの笑顔は自然な美しさがあふれているように感じました。心が洗われる思いでした。地元紙によると、マークルさんは「私はメーガン・マークルと言います」「とても幸せよ」と1人ひとりに声をかけたそうです。

次の訪問先である公立学校ノッティンガム・アカデミーの回りにはインドやパキスタンからやって来た移民女性がいました。黒人男性もいました。かつて七つの海を支配した大英帝国はイギリス各地に多様な民族と文化を残しました。

「昔、イギリスの王族は離婚歴がある人とは結婚できませんでしたが、時代は変わりました。最愛の母親を失ったヘンリー王子は幸せになる資格があります。ロイヤル・ファミリーの伝統に新たにミックスド・レース(父親が白人、母親がアフリカ系)のマークルさんが加わります。素晴らしいことだと思います」

35年前にインドからやってきた女性、リカ・バシュダさん(56)は笑顔で語りました。

ノッティンガムの人口は2011年の国勢調査では30万5680人。このうち白人は71.5%です。イングランド全体の85.5%に比べて、パキスタンやインド、アフリカやカリブ系の非白人人口の割合が多くなっています。

ノッティンガム・アカデミーは生徒たちが犯罪や暴力に走るのを防止するプログラムを進めています。生徒たちを見ると、若い世代は多様化がさらに進んでいます。ヘンリー王子とマークルさんは自然体で生徒たちと交流しました。

公立学校と生徒たちと交流したヘンリー王子とマークルさん(筆者撮影)
公立学校と生徒たちと交流したヘンリー王子とマークルさん(筆者撮影)

2人が学校を去る時、「キャー」という叫び声が学校全体に響き渡りました。多様な背景を持つ10代の子供たちにとって、王子様と婚約したマークルさんはまさに現代のシンデレラなのです。

マークルさんは子供の頃、食器用洗剤が「すべてのアメリカ女性に」とうたっているのを疑問に思い、当時は弁護士だったヒラリー・クリントン氏に手紙を書いて「すべてのアメリカ人に」と改めさせたことがあります。それ以来、熱心にチャリティーに関わるようになりました。

ヘンリー王子はそんなマークルさんに、HIVを保有する子供を抱き上げた母ダイアナ元皇太子妃の面影を見たのかもしれません。2人は見つめ合っているというより、同じ方向を見ているように感じました。

マークルさんの美しさは、黒人やイスラム教徒への差別主義を撒き散らすアメリカのドナルド・トランプ大統領の醜さの対極にあります。

肌の色や宗教を二分法で分断するトランプの単細胞ぶりは世界を狂わせますが、さまざまな体験に培われた2人の優しさに美しい強さを感じたのは筆者だけではなかったでしょう。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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