東大かく敗れたり 激化する世界大学ランキング競争に言い訳は通じない

東京大学入学式(今年4月)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

足を引っ張る論文引用数と国際性

英高等教育専門誌タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)の「2018年世界大学ランキングトップ1000」で東京大学は順位を7位下げ、46位まで後退しました。トップ200校に入ったのは日本では東京大学と京都大学の2校だけで、アジアの大学と比べると日本の地盤沈下が一目瞭然になりました。

先のエントリーでキングス・カレッジ・ロンドン医学部の大津欣也教授が指摘されたように、世界大学ランキングで日本の大学の評価が低く出るのは、論文引用数と留学生、外国人教員の比率が低いからです。下は世界ランキング1位、2位のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学と東京大学、京都大学を比較したグラフです。

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【トップ200校に入ったアジアの大学数】

日本2校(前年2校、人口1億2675万人)日本語

中国7校(4校、13億8500万人)中国語

香港5校(5 校、737万人)公用語は中国語と英語

韓国4校(4校、5144万人)韓国語

シンガポール2校(2校、560万人)国語はマレー語、公用語は英語、中国語、タミル語

台湾1校(1校、2355万人)公用語は北京語

日本のエリート大学の言い訳

世界大学ランキングについて、スーパーグローバル大学トップ型指定校13校のうち11校(北海道大、東北大、東大、早稲田大、慶應大、名古屋大、京大、阪大、九州大、筑波大、東京工業大)で構成される学術研究懇談会(RU11)は昨年7月に次のような見解を出しています。

「多種多様な価値が集積する大学をランキングという1つの順位指標で評価すること自体がそもそも無理」「評価に用いられた論文データベースには2万2000誌の論文が収録されているが、日本の学術誌は400誌程度であり、圧倒的に欧米の学術誌で占められている」

「日本語で論文が記述されている場合には、英語論文と同等に引用されることは困難」「非英語論文はそれを読む研究者が英語論文に比較して少ないために、被引用数も伸びにくい」

「世界大学ランキングについて過剰な反応をすることなく、あくまでもある側面から大学を見たときの外部の視点・意見の一つとして冷静かつ客観的に受け止めながら、今後の大学改革に生かしていきたい」

「教育、 研究や社会貢献など大学の持つすべてのミッションをひっくるめ、普遍的で唯一のランキングがあるかのごとく扱う風潮が一部に見られることに私たちは懸念を抱いている」「ランキングを政策的な方針や計画あるいは政策実施後の成果達成指標として安易に利用するべきではない

言葉の壁が歴然としているので、世界大学ランキングが低く出るのは仕方がないというわけです。

「10年間で世界大学トップ100 に 10 校以上」

昨年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」は「世界大学ランキングは、評価方法や評価機関によって大きく変動するため、順位に振り回されるべきではない。しかし、それぞれの客観的指標については継続して把握・解釈を行うことが重要」と指摘しています。

同年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」では「今後10年間で世界大学ランキングトップ 100 に 10 校以上入る」という数値目標を掲げました。

それなのに2年間で計133億円の予算が組まれたスーパーグローバル大学トップ型指定校の大半が口をそろえて「多種多様な価値が集積する大学をランキングという1つの順位指標で評価することは無理」と言い訳していては、シンガポール国立大学、中国の北京大学、清華大学といったアジアのライバルとの差は広がる一方です。

日本は少子高齢化で自国の学生数が減っています。THEデータによると、教員1人当たりの学生数では東京大学6.7人、京都大学8.7人。世界ランク1位、2位のオックスフォード大学11.2人、ケンブリッジ大学10.9人比べて少なくなっています。数字上、教員の余裕はあるはずなのに、論文数は主要国に比べ伸びていません。

伸びない論文数

文科省の科学技術・学術政策研究所の「科学研究のベンチマーキング 2017 論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況」(今年8月)にあるグラフを見ていきましょう。

科学技術・学術政策研究所の報告書より抜粋
科学技術・学術政策研究所の報告書より抜粋

日本では国内論文は減少傾向にあるのに、それを埋める国際共著論文が思ったように増えていません。留学生や外国人教員比が少なく、海外で活動を続ける日本人研究者も限られているため、知の世界ネットワークから外れているためです。

世界大学ランキングの論文引用数もさることながら、そもそも論文数が他国に比べるとそれほど増えていないのです。

注目度の高いトップ10%補正論文(被引用回数が各年各分野で上位10%に入る論文)数も伸び悩んでいます。学術研究懇談会(RU11)は事態をもっと深刻に受け止めるべきでしょう。

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下のグラフは、論文生産への貢献度で見た分数カウント法によるトップ10%補正論文数の変化です。金融バブルの崩壊とともに、すごく減っていることが分かります。

同

日本は金融バブル崩壊後、投資の手控えが進み、大学も例外ではありませんでした。今、世界に目を向けると新興国では中産階級が急激に膨らんでいます。それに伴って進学熱も高まっており、大学や大学院は明らかに成長ビジネスで、湯水の如くオカネがつぎ込まれています。

言葉の壁があるのは分かりますが、大リーグのダルビッシュ有、田中将大、サッカーの英プレミアリーグの岡崎慎司、吉田麻也のようなトップ選手は日本のトップ校のように弱音は吐きません。弱音を吐くと負けたことになるからです。

日本は天然資源に恵まれていません。ヒューマンパワーだけが頼みです。高等教育機関で働く「知のエリート」の教員はプロのスポーツ選手と同じで、世界という大きな土俵で戦うことで国際競争力をつけるべきです。

プレミアリーグのように門戸開放を

スーパーグローバル大学を名乗るからには、教員ポストを国際的に公募し、まず大学が自らを厳しい国際競争の中に置く必要があります。もちろん、こぼれる教員も出てきますが、勝負の世界では自然なことで、世界で挑戦すれば良いのです。

すべての大学がすべての教員ポストを公募し、論文数や引用回数といった客観的な研究成果で教員を選ぶようになれば、上向きの競争が起きて若手研究者の意欲を引き出せます。外国人教員が増えると国際共著論文のネットワークも広がるはずです。

そのためには文科省主導ではなく、東京大学で起きたような論文不正を見破る実力を持った公正で透明な独立の評価機関が求められ、論文数、引用回数や各種ランキングをもとに毎年、公的資金の投入額を見直す必要があるでしょう。

留学生の比率も東京大学10%、京都大学8%からオックスフォード大学やケンブリッジ大学並の35~38%に引き上げて行くべきです。義務教育と違って、エリート教育とは厳しい競争を伴うものです。

1992年にどん底だった英イングランドのフットボールリーグから分離したプレミアリーグが外国人選手、外国人監督、外国資本を呼び込んで大成功したように、日本の大学は優位性が残っている間に世界に門戸開放しないとアジアのライバル校との差を縮めることはできないでしょう。

【トップ200校に入ったアジアの大学】

22(24)シンガポール国立大学、シンガポール

27(29)北京大学、中国

30(35)清華大学、中国

40(43)香港大学、香港

44(49)香港科技大学、香港

46(39)東京大学、日本

52(54)南洋理工大学、シンガポール

58(76)香港中文大学、香港

74(91)京都大学、日本

74(72)ソウル大学校、韓国

95(89)KAIST 、韓国

111(137)成均館大学校、韓国

116(155)復旦大学、中国

119(119)香港城市大学、香港

132(153)中国科学技術大学、中国

137(104)浦項工科大学校、韓国

169(201-250)南京大学、中国

177(201-250)浙江大学、中国

182(192)香港理工大学、香港

188(201-250)上海交通大学、中国

198(195)国立台湾大学、台湾

(おわり)