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人気スパイ007は慢性アルコール依存症

木村正人在英国際ジャーナリスト

ウオッカマティーニをこよなく愛す英人気スパイ「007」ことジェームズ・ボンドは慢性アルコール依存症で、国際テロ組織との銃撃戦より肝臓病か飲酒運転で命を落とす?

こんな診断を英ノッティンガム大学病院などの医師3人が下し、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表した。

3人は約半年かけて英作家イアン・フレミングの007シリーズ14冊を読破し、ボンドがいったいどれぐらいお酒を飲んでいるのかをチェックした。

対象になったのは123.5日。敵の結社にとらわれていたり、入院していたりしたため、お酒が飲めなかった日は36日。残り87.5日のうち、お酒を飲まなかったのはわずか12.5日だけだった。

ボンドは1週間で平均65~92アルコール単位を摂取しており、成人男性の適量とされる週21~28アルコール単位の4倍に達していた。1アルコール単位はワインなら小さなグラス1杯分に当たる。

「カジノ・ロワイヤル」(1953年発表)で、ボンドは39アルコール単位を飲み干したあと、愛車のベントレーでカーチェイスを繰り広げ事故を起こし、2週間入院。

「ロシアから愛をこめて」(57年発表)では1日で50アルコール単位を摂取。「007は二度死ぬ」(64年発表)では1週間で132アルコール単位も飲み干していた。

医師チームは、国際テロとの戦いや高額ギャンブルの緊張から逃れるため、ボンドのアルコール摂取量は増えていると診断。

ボンドは慢性アルコール依存症で手が震え、国際テロ組織との銃撃戦より肝臓病か飲酒運転事故で命を落とすだろうと指摘している。

美しきボンドガールとのベッド・インもお馴染みの場面だが、「この飲酒量では男性器はいざというとき役に立たなかったはず」という。

最新の007映画「スカイフォール」でボンド役のダニエル・クレイグは酒浸りとなり、「日常生活に支障は来さないアルコール依存症」と診断されるが、ボンドは昔からそんな状態が続いていたようだ。

アルコール依存症で手が震えるボンドに核兵器の起爆装置を外す任務を依頼するのは難しいというのが医師チームの結論だ。

ちなみにMI6(英情報局秘密情報部)出身のボンドの生みの親、イアン・フレミングは美食に加えて、タバコとお酒を好きなだけ楽しんで、56歳のとき心臓麻痺で急死した。

ハードボイルドに生きるのは難しい。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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