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「光る君へ」謎の男が散楽をやっていた四条万里小路、まひろが代筆していた高辻富小路はどのあたりか

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
大河ドラマ「光る君へ」より 写真提供:NHK

謎の男はただの役者とは思えない

大河ドラマ「光る君へ」(NHK)第3回のサブタイトル「謎の男」とは、あっちこっち暗躍している様子の、散楽(能や狂言の元祖と言われている)の役者・直秀(毎熊克哉)のことを指していたと思われる。

役者で身軽とはいえ、忍者みたいだった。あんな感じで、貴族の屋敷に忍び込み、貴族ネタを芝居にしているのだろう。道長(柄本佑)と詮子(吉田羊)の会話もどこかで聞いていたに違いない。だからやたら「弟よ」と道長をからかうように呼んだのだろう。

大河ドラマ「光る君へ」より 写真提供:NHK
大河ドラマ「光る君へ」より 写真提供:NHK

謎の男―まひろ(吉高由里子)にとっては道長も謎の男である。

まひろは逃亡中の盗賊らしき男・直秀をかばってウソをついたことで、三郎こと道長が捕まってしまった。

もう一度、道長に会いたくて、へた過ぎる似顔絵(サムネイル画像)を書いて太郎(高杉真宙)に探してもらうが似顔絵が下手すぎて見つからない。

でも直秀が逃してくれた礼なのか、道長は無事だと伝えにくる。さらに、直秀の協力によってまひろと道長はまたも出会ってしまう。

何度も偶然の出会いがあることから、まひろと道長には運命的なものがあるのではないだろうか。

さて、この何度も偶然に出会ってしまう絵の下手なまひろと文字が個性的過ぎる道長だが、それもそのはず。ふたりの行動範囲はわりと狭いのである。

まず、まひろが第2回で代筆屋をやっていた高辻富小路の絵師の店(この富小路は現在の麩屋町通)と、散楽をやっている広場のある四条万里小路の辻あたり(万里小路は現在は柳馬場通)は、どちらも現在の京都の烏丸線・四条駅、あるいは阪急京都線の京都河原町の近辺で、歩いて5分くらいの距離感である。

(高辻通と四条通は京都を東西に、富小路通や柳馬場通は南北を通っている。ただ、万里小路は「までのこうじ」でドラマでは「まりのこうじ」だったので別の世界線かも)。

高辻富小路や四条万里小路あたりと、まひろの邸宅(現在の京都御苑の東側、廬山寺のあるあたり)で、歩いて3〜40分ほどである。歩けない距離ではない。

何度もセリフに出てくる東三条殿(藤原詮子〈吉田羊〉が帰ってきた藤原道家〈段田安則〉の邸宅)は四条駅から烏丸線でひと駅、烏丸御池駅から歩いて10分ほどのところにひっそり石碑が経っている(ちなみに近くに金運のご利益があると言われる御金神社があるから、行ったら立ち寄ってみて)。

第3回でまひろが訪問し、偏合わせをして遊んだ土御門殿は、廬山寺から10分くらいである(現在の京都御苑のなか)。土御門殿はやがて道長の邸宅となる。そのそばには道長が建てた法成寺もあったそうだ。このふたり、ずっと近いところにいたんだなあと思うとソウルメイト設定もナットクしてしまう。

紫式部や道長の生活していた京の地を散策するのは楽しい。1000年も前の地名も残っていたり、建物の跡の石碑があったりして、1000年の時間がぐっと身近に感じられるから。

平安京の跡は、現代に立てられた石碑しかないとはいえ、無数に点在している。陰陽寮跡(晴明神社ではない)や清涼殿跡などもあって、ひととき楽しめる。

大河ドラマ「光る君へ」

【放送予定】2024年1月~12月

【作】大石静

【音楽】冬野ユミ

【語り】伊東敏恵アナウンサー

【主演】吉高由里子

【スタッフ】

制作統括:内田ゆき、松園武大 

プロデューサー:大越大士、高橋優香子

広報プロデューサー:川口俊介

演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう ほか

「光る君へ」相関図 提供:NHK
「光る君へ」相関図 提供:NHK

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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