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生瀬勝久は「踊りたくない」と言いながらノリノリだった。帽子の扱いもお見事 「ブギウギ」

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

タナケンが帽子を逆さにかぶろうとするのは生瀬のアイデアだった

サブタイトルは「コペカチータ」でもいいかなと思ったと福岡CP

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)が戦後に入って新展開。

スズ子(趣里)は人気喜劇俳優・タナケン(生瀬勝久)の舞台に俳優として出演、コメディエンヌとしての才を発揮、新曲「コペカチータ」も披露して、新たな扉を開いた。

制作統括の福岡利武チーフプロデューサーは、第16週は「別れと挑戦」を見どころとして描いたと振り返った。

「スズ子と小夜が、お互いに自分らしくやっていこうねと確認し合います。スズ子は大阪弁で演技をし、小夜はアメリカに向う。それぞれが自分らしさを発揮しました」

長らく、スズ子の付き人として共に過ごしてきた小夜(富田望生)がサム・ブラウン(ジャック・ケネディ)についてアメリカへ旅立つ。

小夜がサムとの愛に生きるという自分の道をみつけスズ子から離れることと、スズ子が演技に悩んだすえ、原節子のような上品な演技ではなく、大阪のちゃきちゃき感で勝負すること。このふたつが重なって、第16週のサブタイトル「ワテはワテだす」の言葉を輝かせる。

「僕はサブタイトルは『コペカチータ』でもいいかなと思ったのですが、スタッフたちの賛成を得られませんでした」と福岡CPは笑った。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

タナケンの登場で、今後は演劇エピソードも増えるのだろうか。

第76回の舞台「舞臺(舞台)よ!踊れ!」は前半、ドタバタ喜劇で、途中から歌と踊りになる。スズ子のモデルである笠置シヅ子が喜劇王・榎本健一と共演した舞台のあらすじをもとに、演出の盆子原誠さんと、舞台演出担当の荻田浩一さんが知恵を出し合いドタバタ喜劇の内容に構成した。

「コペカチータ」ではスズ子のみならずタナケンの踊りが傑作だった。福岡CPによると、生瀬さんはタナケンの役を演じることには積極的で、当時の喜劇俳優の研究もして臨んだそうだが、こと、踊りの場面に関しては、「踊りたくない」と言っていたそうだ。

「歌と踊りは勘弁してほしいなあとおっしゃっていましたけれど、やったらやったでノリノリでした(笑)」(福岡CP)

生瀬勝久は舞台歴が長く、劇団の座長経験もある。喜劇もシリアスもオールマイティ、主演として華もあり、脇にまわっても主役を輝かせることができる俳優だからこその信頼度の高さ。帽子を逆さにかぶる動きも抜群にユーモラスだった。

「あれは生瀬さんのアイデアです。何かをすぐ笑いにできるのはやっぱりさすがだと思いました」

生瀬勝久の俳優としての資質を福岡CPは絶賛する。

「タナケンは非常に難しい役です。普段は何を考えているのか分からないようなところや、気難しさのある役柄ですが、『ブギウギ』は明るく前向きな作品にしたいと思ったところ、生瀬さんなら気難しさだけが前面に出ないように演じていただけるのではないかとお願いしました。最高にお茶目で、気難しく、かっこいいという、複雑な面を見事に演じてくださいました」

ちなみに、現在、生瀬は、沢口靖子主演の舞台「パートタイマー・秋子」に出演しているが、そこでも彼は歌っている。これもまたとってもユーモラスで最高なのだ。

スズ子のモデル笠置シヅ子は実際、戦後は俳優の仕事も行い、舞台や映画で人気を博す。タナケンの登場で、今後は演劇エピソードも増えるのだろうか。

「俳優としてのお芝居の話も描きますが、ここからはヒット曲『東京ブギウギ』に向かってっていうところがあるので、また歌の話になります。俳優の仕事もしながら歌も歌っていくというような流れですね。いまはまだ詳しくお話しできませんが、笠置さんは、ある時点で歌手を辞めて役者さんになっていきます。『ブギウギ』でもスズ子が歌を辞めるところは非常に最後の大事なところと考えています」

まだまだ見どころはたくさんありそうだ。

連続テレビ小説「ブギウギ」

総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り

NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>

【音楽】服部隆之

【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里

【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか

【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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