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「舞いあがれ!」柏木が舞の実家に挨拶に行く展開を作り手はどう考えているのか聞いてみた

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

朝ドラこと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)の第11週はドラマの前半戦、航空学校編のクライマックス。ついに空を飛ぶことを体感し、飛ぶこととは何かを厳しい訓練のなかで学んだ舞。ひとりでは飛べないということを人力飛行機編でも感じてはいたとはいえ、プロフェッショナルの世界のなかでいかに飛ぶことが厳しいか体験して成長していく。そんななかで、柏木との恋もはじまる。ラベンダー畑のデートシーンはスイーツ映画のような美しい画だった。そしてあれよあれよという間に柏木は舞の実家に挨拶に行く。この展開は早過ぎて逆に面白く感じた。制作統括の熊野律時プロデューサーに振り返ってもらった。

熊野「僕も台本を読んだとき面白いと感じました。つきあうならまずご両親に挨拶をという柏木くんの生真面目さが微笑ましいですよね。実家に直接ではなく隣のお好み焼き屋さんに行くのも、舞のお父様とお母様にどうご挨拶しようか散々考えた末の行動だという気がしてそれも可笑しい。お好み焼きを食べながら和やかな雰囲気で話をしたうえで交際の挨拶をするという柏木なりのシミュレーションがあったのだろうと想像できました(笑)。

柏木がうめづで浩太(高橋克典)とめぐみ(永作博美)、うめづの夫妻(山口智充、くわばたりえ)や、工場の従業員、笠巻(古舘寛治)、結城(葵揚)たちに囲まれる場面は、俳優の皆さんがめいめいリアクションを楽しみながらやってくださいました。

柏木がまっすぐ思いきって浩太に舞への思いを語り、浩太がなんだかんだ言いながら、最終的に潔い柏木を認める。それを見ているめぐみさんは、柏木さん、いいんじゃないと嬉しそうという、これまでの岩倉家の親子関係がよく現れた面白いシーンになりました。

航空学校編では家族のシーンは少なかったですが、ここでうまくドッキングしたことで、学校で舞がやってきたことを家族にも共有できたと思います」

――柏木同様、舞も飛ぶことばかり考えていたのが、第54回のデートシーンなどすっかり恋する女の子という感じになりました。彼女の心境をどう解釈していますか?

熊野「柏木とは、同じ目標をもって学ぶ中で互いの心がぐっと近づいていったのでしょう。第48回で『好き』と告白されたとき自分も好きだという気持ちが芽生えたことをぐっと噛み締めた。いままでとは違う新しいことが舞のなかで起きた瞬間を福原さんが魅力的に表現してくれていると感じました。よかったね、舞ちゃん、という気持ちに誰もがなるシーンだったのではないでしょうか」

――デート場所の風景もきれいで、会話は馬の耳の話など、自然な感じで良かったです。

熊野「帯広の航空大学校からわりと近い場所にすてきな公園があったのでそこで撮影しました。デート中の会話は現場の状況を取り入れて撮影時に加えたものです。福原さんも目黒さんも初々しい舞と柏木のやりとりを真摯に演じてくれました。夕日を見つめるシーンは照れくさかったようですが(笑)」

「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

12月19日(月)からの第12週は「翼を休める島」で再び五島が舞台に。

連続テレビ小説「舞いあがれ!」

総合:月~土 午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00 ※土曜は1週間の振り返り

BSプレミアム・BS4K:月~土 7:30〜7:45、出演:福原遥、横山裕、目黒蓮、山下美月、山崎紘菜、濱正悟、醍醐虎汰朗、佐野弘樹/永作博美、高橋克典、吉川晃司ほか

作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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