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「舞いあがれ!」脚本家が変わりムードが激変しそうな理由

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

“朝ドラ”こと連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK)は第8週から新展開。主人公・舞(福原遥)が航空学校に入学し、航空学校編がはじまる。脚本は桑原亮子から嶋田うれ葉に変わった。ゆったりしっとりしたムードから会話のテンポが早くなり、だいぶテイストが変わって見える。制作統括の熊野律時チーフプロデューサーにその意図や、航空学校編の注目人物・柏木(目黒蓮)の存在、以前からずっと気になっている舞の兄・悠人(横山裕)について聞いた。

ーー航空学校編はテンポが早くなり、登場人物たちの言葉数も増えたように感じます。

熊野「航空学校編は、嶋田さんと佃良太さんが担当します。航空学校編は極めて専門性が高く、台本を作るにあたり、モデルとなった航空大学校に取材してやりとりしたり確認したりがものすごく時間がかかりました。それは準備の段階からわかっていたので、脚本も演出もロケ等、様々な段取りをする制作スタッフも、航空学校編チームを結成しました。もちろんベースは桑原さんの作った世界観を共有して作っています。航空学校編はいわゆる学園もの的な要素が濃くなり、パイロットという明確な目標があるワンチームと教官という世界で芝居が進んでいくので必然的にテンポやタッチが変わりました。あえて変えようと狙ったわけではないものの、専門性の高い要素を噛み砕いて一般視聴者にもわかるようにしようと思った結果、出てきたテンポなのかなと思います。専門用語が飛び交う本格的な雰囲気を出しつつ、起伏のある人間ドラマに落とし込み、はじめてご覧になるような新鮮な映像も盛り込んで、楽しんで見ていただけると思います」

ーー今週から登場する舞の同期・柏木役の目黒蓮さんの起用理由は?

熊野「柏木は航空エリートの家庭に生まれ、プライドの高く近寄りがたい人として登場しますが、徐々に違う面を見せるキャラなので、その振れ幅から滲むチャーミングさや、変化していく感じが魅力的に見えるようなかたに演じてほしいと思っていました。目黒さんはすごく真面目で誠実で努力家という印象で、柏木をひとつひとつ大事に考えて作ってくださっています。控えめな印象ながら、ふとしたときの笑顔の華やかは鮮烈で、序盤はあまり笑わない柏木が、ちょっと顔を綻ばせたときの魅力は目黒さんだからこそ出せるものだと感じています。舞との関係がどうなるかは、今、言えるのは、パイロットを目指すチームとして深い絆で結ばれていくということです。その先はーー秘密です」

ーー舞の兄・悠人(横山裕)の謎の株活動が気になります。彼だけ別のドラマのように見えます(笑)

熊野「悠人は岩倉家のアウトサイダーな感じを出そうとています。朝ドラヒロインの兄はいろいろなところでいろいろなことをやって来ていますから、今回はどんなだろうとお楽しみいただければ。決してクズではなく(笑)、妹と家族思いではあります。悠人は謎めいたところが面白さです。今後、彼にもいろいろな展開があり、視聴者のなかには時代の流れに沿って彼がどうなっていくか予測されている方もいますが、当時の時代状況に基づいたうえで、いろいろなアイデアを出しながら、皆さんの予想どおりにならないように、そう来たか!と面白がっていただけるような方向で工夫しています。悠人の行く末もお楽しみに」

「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK
「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

※第8週の脚本を書いた嶋田うれ葉さんは朝ドラだと「エール」(20年)に参加している。NHKの番組ではほかに「全力失踪」(17年)で市川森一賞候補に。2008年、小説「愛のシアワセ」で第2回JUNON恋愛小説大賞優秀賞を受賞。公開中の映画「天間荘の三姉妹」の脚本を手掛けている。

連続テレビ小説「舞いあがれ!」

総合:月~土 午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00 ※土曜は1週間の振り返り

BSプレミアム・BS4K:月~土 7:30〜7:45、出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介/吉川晃司、高畑淳子ほか

作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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