「SUITS/スーツ2」「コンフィデンスマンJP」と引っ張りだこ。小手伸也がブレイクした理由

「SUITS/スーツ」の蟹江を演じる小手伸也。役作りで爪はピカピカ 撮影:筆者

「SUITS/スーツ2」では織田裕二、「コンフィデンスマンJP」シリーズでは長澤まさみと、スターにいじられて人気者の個性派俳優・小手伸也。コロナ禍でドラマや映画がストップした際には、特別番組などに盛んに登場し楽しませてくれた。連続ドラマで脇役が人気になることは昔からある現象で、代表的なものでは「踊る大捜査線」シリーズ。スリーアミーゴス(北村総一朗、斉藤暁、小野武彦)が大活躍。脇役が活躍するスピンオフ企画も「踊る大捜査線」から一気に増えていったと思う。芸達者でフットワークの軽い脇役を活用するフジテレビのお家芸の流れにうまく乗ったのが小手伸也であった。インパクトと愛嬌のあるビジュアルとしっかりした芝居で場を盛り上げ、悪目立ちまでいかないように気遣いつつ弾けるという難しいところを攻めている小手。長らくバイトしながら演劇活動を行っていたが俳優だけで食べていけるようになったドリーム街道はどのようにして実現したのか。そして今、充実しているはずの日々のなかで彼を悩ませていることとは何なのか……。

「フジテレビさんは僕をすごくこき使ってくれてます(笑)」

自粛明け、初めて撮影した時の気持ちはいかがでしたか。

小手:テレビドラマや映画がこれから先どうなるか不安な中での自粛生活だったので、撮影が再開したときは嬉しかったですし、スタッフの皆さんがとにかくうれしそうに働いている姿がものすごく印象的でした。僕もようやく現場に帰って来ることができて感無量と言いたいところ……ですが、自粛期間中も月9ドラマのコラボレーション企画(「SUITS/スーツ2」の蟹江が「鍵のかかった部屋・特別編」にゲスト出演したり、「コンフィデンスマンJP・傑作選」では五十嵐と共演し一人二役を演じる)などで何度か撮影に呼ばれていまして(笑)、他のレギュラーの皆さんほどの感慨はちょっと薄いかもしれないです。

引っ張りだこですよね。

小手:フジテレビさんは僕をすごくこき使ってくれてます(笑)。でも僕もいろいろご恩を感じているので、僕がやれることは全部やろうと思っています。

フジテレビとのご縁は月9の「HERO」(2001年)ですか。

小手:それ以前にもドラマのお仕事はしていたもののエキストラのバイトで、民放ドラマではじめてセリフをもらったのが「HERO」の第1話でした。その後、歳月を経て「コンフィデンスマンJP」(18年)でいろいろやらせていただき、今に至っているので、月9さんにはご縁と感謝を感じています。

「コンフィデンスマンJP」の五十嵐の存在感たるや……。

小手:五十嵐という、ダー子(長澤まさみ)、リチャード(小日向文世)、ボクちゃん(東出昌大)に次ぐ4人目のコンフィデンスマンという大役をたまわり、撮影外でもドラマの副音声、次回予告やCMのナレーション、映画のイベントや番宣なども五十嵐としてやらせていただいきました。一時フジテレビ社内でも、五十嵐のキャラクターのまま始業と終業のアナウンスをしたり、社食の広報ビデオに出演したりで大活躍ですよ五十嵐(笑)。

「SUITS/スーツ」(18年)ではかなり重要な役に大抜擢され「SUITS/スーツ2」にも続投です。

小手:「SUITS」の後藤プロデューサーがオリジナル版で言うところのルイスの役を探しているというときに、「コンフィデンスマンJP」の草ヶ谷プロデューサーが僕を推薦してくれたんです。後藤さんは、織田裕二さんのライバルポジションに、この人、誰? みたいな意外性のある人を据えたいと思っていらしたようで、僕くらいの認知度の俳優がちょうど良かったんでしょうね。しかも、ルイスを演じているリック・ホフマンさんに顔や気持ち悪さがちょうど似ていたらしいです(笑)。

確かに小手さんのように欧米の俳優的な雰囲気を持っている人は日本では少ないですね。

小手:「SUITS」のシーズン1以来何かこう欧米っぽさを求められることは結構ありまして……。WOWOWのドラマに出たときも、僕が出ることによってちょっと欧米感強まったよね、みたいに言われました(笑)。

渋くていい声ですしね。

小手:お陰様で声のことはすごく褒めていただく機会が増えました。声優もやっていたとはいえ「イケボ」と言われるようになるとは思ってもいませんでしたけれど。

織田裕二とふたりきりでエチュードを

スター織田裕二さんとの共演。シーズン1から2で変化はありますか。

小手:シーズン1のとき、織田さんはおそらく僕のことを「どこの馬の骨だ?」みたいに思ってらっしゃったと思いますし、僕にどの程度の力があってどういう関係性を築くべきかいろいろ探る必要が多分あって、これは遊び感覚ですが休憩時間もずっとふたりでエチュード(フリー演技)をしていました。ブルペンでのキャッチボールみたいなものですね。織田さんはとにかくお芝居好きなので、ひとつのシーンが終わった後もそのシーンの続きを休憩所でやるんですよ。誰も見ていないのに(笑)。でもシーズン2ではあまりそれをやってないんです。そうしなくても関係性が築けてきたのかな。その代わり、織田さんは「今日はカニとのシーンないのか、さびしいな」と言ってくださることもあるし、共演シーンになると「お前には、ぜったい負けないからな」と対抗心を燃やしてくださったりしています。リップサービスだとしても嬉しいんですが、そんなこと言ったら本気で否定するような方です。織田さんは作品に対する愛情が深く、熱の高い方なので僕らもそれに応えたいがために、つい応え過ぎて燃料を投下すると織田さんもどんどん熱くなっていくんです。そういうときは慌てて冷ますのですが(笑)。天下の織田裕二がちょっとしたいじられキャラになる瞬間は面白いです。

小手さんがいじっているんですか。

小手:いや、僕がだいたいいじられるポジションなんですが(笑)。たまに僕の形勢が不利になると、鈴木保奈美さんが冷静にツッコミを入れてくれたり、いいチームワークなんですよ。中島裕翔くんも頻繁に僕をいじってくるんですが、彼に対しては同等に反撃しています(笑)。

小手さんは舞台出身で、エチュードも含め、集団で何かをやることや、いろんな球を投げたりキャッチしたりすることに慣れているのでしょうね。

小手:そうですね。その部分はすごく強みとしてあると思います。なのでドラマや映像の現場で実戦のみ積み重ねながら活躍しているような方から、舞台で演技の基礎を学んできた人として変に先輩扱いされることがあります(笑)。

小手さんの主宰する劇団innerchildはエチュードで作っていたのですか。

小手:いや、うちの劇団は完全に脚本ありきでしたが、訓練としてはずっとやっていました。

早稲田の演劇はエチュードに定評がありますよね。大学では演劇倶楽部でしたっけ。

小手:エンクラこと演劇倶楽部ですね。

演劇研究会と演劇倶楽部のふたつがあって、研究会には堺雅人さんがいらっしゃいました。エンクラ出身者はほかに誰がいますか。

小手:後輩に安藤玉恵さんがいます。僕の教え子なんですよ。僕が3年のときの1年生で、僕は新人に半年間演劇の基礎をたたき込む役割をやっていたんです。それを言うと彼女の友人でもある長澤まさみさんが「偉そうに」とか言うんです、本当のことなのに。

八嶋智人や古田新太に育ててもらった

小手さんの中の演劇の基礎――何を一番大事にして今もやっていらっしゃいますか。

小手:難しいですね……。一般的な僕に対する印象とはかけ離れているかもしれないですが、僕は共演者第一主義で、相手役のためにお芝居をすることが一番だと思っています。「そんなことを言って、お前、我が強い芝居ばっかりじゃねえか」というご批判をいただくのは間違いないんですが(笑)、自分ばかり目立とうとしてはいけないと本当に思っているんですよ。自分一人では何もできないし、かといって相手に委ね過ぎると相手の負担にもなるし、そういう意味で、共演者に寄り添ったり、逆にすごく刺激を与えたりする役者でありたい。僕が面白いだけでも駄目で、相手が面白いだけでも駄目で、相手と僕との間が面白くなくちゃいけないという感覚があります。そこにちょっとだけ自分のやりたいことを混ぜるという感じですかね。

すばらしい考え方ですね。

小手:昔は悪目立ちしてよく煙たがられてたんです。野田秀樹さん主宰のNODA・MAP公演「オイル」(03年)に出たとき、観に来てくれた先輩の八嶋智人さんに「お前、大丈夫か?」と釘を刺されたし、その後、さらなる大先輩の古田新太さんにも心配されまして……。自分の役割は客席を沸かせることで、僕はそれを実践しただけだと本気で思っていた。大舞台で注目されて舞い上がっていたんですね……。ところが、反省して「透明人間の蒸気」(04年)に粛々と臨んだときは、古田さんに「何かつまんなくなった」と言われて、マジでどうしたらいいかわからなくなりました(笑)。振り返れば、そうやって、演劇界の先輩方に様々な方向から叱咤激励され育てていただいたから今の僕がいるのだと思います。ああでもないこうでもないと言われ続けて悩み続けた結果が今なので。だから、僕、テレビに出始める時期が遅くてよかったと思うんですよ。

もうちょっと前だったら、ただの目立ちたがり俳優として終わってしまった危険があると。

小手:危なかったです、ほんとに。だから“遅咲き”で良かったです。

ちょっと目立ちたがりみたいな話といえば、「コンフィデンスマンJPプリンセス編」が公開延期になったとき、自粛中の俳優たちが一言しゃべる映像で、小手さんの構成が見事で脚本家の古沢良太さんが「俺はいらないじゃないか」というようなことをTweetしてからかわれていましたよね。劇団では自分で脚本も書かれていますね。

小手:自分で脚本を書くことも20年以上やってきたこともあって、キャラクターになり切った自分を自分で演出するのは割と得意な方です。決して出しゃばりたい訳でも目立ちたい訳でもなく、ただ僕個人の言葉を発信するよりも、キャラクターの言葉の方が作品のファンの方が喜ぶかなと。そのための創意工夫に昔取った杵柄が役立ってるだけです(笑)。いつかはまた、自分で脚本を書いて演出した作品を発表したいと思っていますが、劇団は完全休止状態のうえ、今回のコロナ禍によって演劇界が激しく変動を起こしているので、これからどうするべきかは課題ですね。

蟹江を嫌ってほしい

いよいよ再開する「SUITS/スーツ 2」の見どころを教えてください。

小手:ファーストシーズン2では名前しか出てなかった上杉という人物が登場してきて、演じるのが吉田鋼太郎さんという、またすごい俳優が投入されました。上杉が事務所にやって来て、みんなに演説するシーンが1話の終わりから2話の頭にかけてありましたが、吉田さんによるガチのお芝居を見たファームのメンバー全員が驚愕していました。「あの人と戦うの?」と保奈美さんが慄いたくらいで(笑)。

これまでメンバーの中では小手さんが演劇界代表みたいな存在だったのが、吉田さんという演劇界のーー今は割と頂点にいそうな感じの人が登場したわけですね。

小手:芸術監督来たーって思いましたから(吉田鋼太郎は蜷川幸雄亡き後、彩の国さいたま芸術劇場の「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の2代目芸術監督に就任している)。

Q:シェイクスピア俳優、来たーって感じですよね(笑)。

小手:シェイクスピア劇の数々の主役を演じてきた圧倒的な演技力で吉田さんが演じる強敵からファームを守るため、皆がどう立ち向かうのか。それがセカンドシーズン2の見どころになります。事件も大きくなりますし、ファーストシーズン1よりも群像劇の色合いがかなり増して、彩り豊かになっています。オリジナルの「SUITS」もシーズン2から本格的に面白くなってきたと言われていて、日本版もそうなっていると思います。そんな中で、蟹江は、ファームと上杉との対立構造の中間地点にいて、暗躍します。どっちに付いたら自分にとって得策か見極めながら状況をひっかき回していく蟹江は、視ている人にとってすごく煩わしいと思います。「あの野郎〜」といい感じに嫌っていただけたら幸いです(笑)。

五十嵐と蟹江の演じ分け

「コンフィデンスマンJP プリンセス編」も7月23日公開でやっと見られますが、小手さんは「SUITS」と「コンフィデンスマン〜」と両方宣伝をしないとならない状況になっていますね。

小手:そうなんですよね。本当なら少しずれるはずだったんですが(「SUITS」は4月はじまり「コンフィデンスマン〜」は5月公開予定だった)、どっちも足並みがそろってきましたため、両者で僕のスケジュールを奪い合っているような状況でして、「SUITS」の撮影をしながら「27時間ぐらいテレビ」のMCをやるのは重労働です(笑)。(※「27時間ぐらいテレビ」は事情により中止になった) とはいえ、「コンフィデンスマン〜」の無茶ぶりには全力で応える必要があります。なにしろコロナ禍で、ワールドプレミアも全国を回るイベントもできないから、動画配信などの新しい形でファンの皆様に応えていきたいですから。一方、「SUITS」も大切な作品なので手は抜けない。とにかく睡眠時間を削って頑張ります。ただちょっと気を付けなきゃいけないことは、五十嵐と蟹江が混ざらないようにすることです。

やっぱり混ざりますか。

小手:「コンフィデンスマン〜」傑作選の「SUITS」とのコラボで、五十嵐と蟹江の演じ分けをしたときに、スタッフさんから「今、五十嵐に蟹江入っていましたよね」と指摘されたんですよ(笑)。その逆もあって……。

端的に分けると、蟹江と五十嵐ってどう演じ分けているんですか。

小手:五十嵐はキザな色男風です。あくまで「風(ふう)」であって彼は自分を色男と思っているナルシストですが、蟹江は割と天然なんですよ。美的センスがちょっと人とずれていますが、これが好きっていうポリシーが強いだけであって、ナルシストなわけではないんです。ネイルをきれいに磨いているのも彼なりのポリシーです。これが五十嵐だったらモテたいからやりますが、蟹江は美意識でやっているだけでモテたいわけではないんです。

そういう性格が表情とかしぐさにも出てくるのでしょうね。

小手:そうですね、身体の使い方も違ってきますよね。五十嵐は曲線的で、蟹江は直線的。五十嵐は格好つけたいので表情にもタメがありますが、蟹江の表情筋は心情に対してクイック。体形というか蟹江と五十嵐の骨格の差みたいなのものも意識しています。座り方ひとつにしても、五十嵐は骨盤をずらして緩く座りますが、蟹江は常に胸を張って堂々としています。蟹江の方が育ちが良く筋肉も発達している。そういう身体の差はイメージしていますね。

いまのポーズの違いを動画で見せられないことが残念です(笑)。

小手:こんなふうに僕は頑張って差をつくって役を演じているのですが、見ている方からしたらみんな一緒に見えていたりすることもあるようで(笑)。小手伸也はどの芝居をやらせても結局クドイっていうふうに書かれたりもします。誰もが全作品を追ってくれているわけじゃないですから、印象に残る役柄で作品に貢献できれば僕は一番だと思っていて。そういう意味で、蟹江にとって五十嵐はすごく強敵です。蟹江も結構頑張ってはいるんですけども、今のところ、五十嵐ファンのほうが圧倒的に多いみたいで……。

「いたのか、五十嵐」っていうキャッチフレーズがインパクトありますからね。

小手:蟹江は嫌われキャラという設定でもありますしね。

蟹江を演じるとき、嫌われキャラだけど視聴者には好かれたいというような野心がちょっとでも入るとキャラがぶれますから、そうしないところに小手さんの俳優の矜持を感じます。

小手:愛されキャラでも嫌われキャラでも、どちらにせよ、“小手伸也”はいらないです。僕の名前はほんとみんな覚えてくれなくていい。役と作品だけ印象に残ればと思っています。

大丈夫です、もう絶対覚えていますから。人気者ですから。

小手:それは完全に僕自身ではなく、作品の人気の賜物だと思っています。どの程度皆さんのご期待に添えるかわかりませんが、僕は引き続き全力でやれることをやらせていただくだけです。

Profile

Shinya Kote

1973年12月25日、神奈川県生まれ。早稲田大学在学中に演劇活動を開始、舞台を中心に活動していたが、2016年大河ドラマ「真田丸」(NHK)、17年「仮面ライダーエグゼイド」(テレビ朝日)、18年「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ)で注目され、テレビドラマ出演が急増した。「SUITS/スーツ」、連続テレビ小説「なつぞら」、よるドラ「いいね!光源氏くん」、連続ドラマW「鉄の骨」等多数。映画「コンフィデンスマンJP―プリンセス編―」が7月23日公開。

SUITS/スーツ2 月曜よる9時〜 フジテレビ系

出演:織田裕二 中島裕翔 新木優子、中村アン、小手伸也、吉田鋼太郎、鈴木保奈美ほか

第3話は7月27日(月)放送

取材を終えて

小手伸也さんのことは彼が小劇場に出演しているとき、その怪優ぶりをよく観ていた。自身の劇団は魔術的な不思議な世界を描いたものだったが、客演すると必殺の飛び道具的な役割を果たしていた。

やがて、大河ドラマ「真田丸」では名刺を配って自己アピールに余念のない人物を演じ、「コンフィデンスマンJP」ではメインの3人の詐欺師の中には入れない補欠的な存在ながら一歩も引かずいつの間にかなくてはならない存在になっていた。そして「SUITS/スーツ」では物語に関わってくる役に。みるみるどんどんテレビドラマ界で存在感が増していった。

バイプレーヤーブームもすっかり定着した今、小手もそのひとりに仲間入りした感がある。自分で脚本を書いたり演出もしたりするからドラマのキャラを理解して番宣番組などでそれらしい気の利いた創作セリフが言えるのが人気の秘密のひとつかと思う。ドラマ世界を視聴者と一緒に広げてくれる、SNS時代にぴったりの存在である。そのうえ、口調や文章が丁寧でどこか知性を感じさせるところが、信頼感にもつながっている気がする。取材原稿の修正でも整った文章を書いていた。おじさんになればなるほど面白くなっていく俳優だと思う。