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前ロッテ福田秀平、引退よぎるも「本当に長いリハビリだったので、また野球ができるのがモチベーション」

菊田康彦フリーランスライター
清水庵原球場で行われたハヤテ223合同練習初日の福田(筆者撮影)

 静岡県を拠点に今年からプロ野球(NPB)の二軍、ウエスタン・リーグに参加するハヤテ223(ふじさん)。その合同練習がスタートし、初日の1月11日には静岡市の清水庵原球場に24人の選手が集まった。

 練習前には選手1人ひとりの自己紹介が行われ、トリで「赤堀(元之)監督を胴上げできるように、みんなで頑張っていきましょう!」と声を上げたのが、福岡ソフトバンクホークス、千葉ロッテマリーンズで主に外野手として17年間プレーした福田秀平(34歳)である。

FA移籍のロッテでは右肩のケガに泣き戦力外に

 高校生ドラフト1巡目で2007年にソフトバンクに入団した福田は、国内フリーエージェント(FA)権を行使して2020年にロッテへ移籍。ところが、その年の開幕直前に行われた練習試合で死球を受けて右肩甲骨を骨折したことが尾を引き、2022年のオフには手術を受けるなど、移籍後の4年間で計89試合の出場にとどまった。2022年8月24日の埼玉西武ライオンズ戦(ZOZOマリン)で見せたライトフェンスに激突しながらのスーパーキャッチのようにファンの胸を熱くするプレーもあったが、思うような成績を残せずに昨年限りで戦力外となった。

「そうですね、そこがロッテ時代すごく苦しんだところなんですけど……。元どおり投げれるかって言われたらそれは難しいところもありますけど、痛みなく、ある程度投げれる状態にはなったので、もう1回トライしたいなっていう思いです。引退っていうところはすごく自分の頭の中にありましたけども、この肩のケガにはいろいろなドクターとかトレーナーの方に携わっていただきましたし、こういうふうに最後のほうですけど良くなることができたので、もう1回自分の元気な姿を応援してくれてる方に見せることができればなっていう思いで、現役続行をやらせていただいてます」

 現在の右肩の状態について、福田はそう話す。「ある程度」とはいえ、痛みなく投げられる状態まで戻ってきたからこそ、そのままユニフォームを脱ぐわけにはいかなかった。今年からファームに参入する球団に入団する選手は、NPB在籍経験がなければドラフト指名を経ないとNPB12球団への移籍はできないが、福田のような選手はシーズン途中でもNPB球団との契約が可能となる。

「FAで勝負をかけて臨んだんですけど、夢半ばで破れたという形なので」

 福田も「そこはやっぱり目標としてはありますけど」としながらも、「NPBっていうよりも、自分が元気に野球をもう1回するっていうところが僕の中では最上位にあるので。その姿を家族や周りで応援してくれている身内の方であったり、僕のリハビリ生活を知っている方たちに、しっかりと元気にやれるようになったということを伝えていきたいなというふうに思います」という。それだけに現在の最大のモチベーションは「野球ができること」だ。

「やっぱり今、体が元気になったので。本当に長いリハビリだったので、今野球ができている、そしてさらにまた野球ができるっていうのがすごくモチベーションになってます。若い子と一緒にもう1回、高いレベルを目指して切磋琢磨できるのがすごく楽しいです」

「正直、FAで勝負をかけて臨んだんですけど、そこは夢半ばで破れたという形なので、本当に初心に戻ってもう1回、イチから若い子と挑戦するっていう気持ちでやってます」とも語る福田が、このハヤテ223を“新天地”に選んだ決め手はどこにあったのか?

山下大輔GMは「野球に対する真摯な気持ち、熱い思い」を評価

「66年ぶりに(球団増で)参入して、いずれ16球団構想になるまず1歩目の球団ということを、メディアを通して僕は知って。また既存の球団が参入するわけでもなく、イチからのチームっていうところがすごく……2年目、3年目とかではなく、チームを作るときに僕はこういうチャンスをいただけるっていうのをすごくご縁に感じて。自分にとってプラスになるんじゃないかなっていうふうに思って、決断しました」

 昨年12月7日に発表された29人のハヤテ223入団内定選手のうち、NPB経験者は10人。その中でも福田のNPB在籍17年、通算785試合出場はナンバーワンである。だが、地元・清水市(現静岡市清水区)出身で、現役時代は8年連続ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)の名遊撃手だったハヤテ223の山下大輔GMは、実績以上に福田の「気持ち」を評価する。

「ロッテにフリーエージェントで行ってね、あんまり活躍はできなかったけども、この年齢になってこういう新しいチームができたときに、そこでもう一度やってみたいっていう発言も聞いてたんでね。野球が本当に好きなんだなっていう気持ちを感じたし、そういう気持ちはすごく大事なんじゃないかな。もちろん彼のパフォーマンスもこのチームには貴重なんだけど、まず野球に対する真摯な気持ち、熱い思いっていうか、そういうものを持ってるってことはすごく大事なことだと思う」

静岡の思い出は「小さい頃、毎年夏に家族旅行で下田へ」

 神奈川で生まれ育ち、高校は東京の多摩大聖ヶ丘高、プロでは福岡、千葉を本拠地とするチームを渡り歩いた福田だが、静岡にはちょっとした思い出があるという。

「(静岡)草薙球場に(試合で)来たっていうのは何度かあるので、そういうイメージはありますね。あとは小さい頃、下田にはよく行ってました。毎年夏に家族旅行でっていうのが恒例でした」

 その静岡を拠点とするハヤテ223で迎える再出発。現在の合同練習は一般非公開で行われているが、1月25日から始まる春季キャンプはファンにも公開される。ケガに泣かされた4年間を経て、もう一度、元気に野球をする姿を1人でも多くの人に見てほしい──それが今の福田の願いだ。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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