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あれから5年。14年ぶりの歓喜に沸いた、あの日のヤクルトV戦士は今…

菊田康彦フリーランスライター
10月2日、神宮球場のスコアボードに映し出された「今日は何の日」(筆者撮影)

「2015年10月2日対阪神25回戦(神宮)で2-1のサヨナラ勝ち、14年ぶり7度目のリーグ優勝を決める」

2015年と今年、両方の「10月2日」にスタメン出場したのは1人だけ

 10月2日、広島東洋カープ戦のプレーボールを待つ神宮球場のスーパーカラービジョンに映し出された「What day is TODAY」。それは5年前のこの日こそが、東京ヤクルトスワローズにとって14年ぶりの歓喜に沸いた日であることを思い起こさせるものだった。

 その後に発表されたスターティングラインナップを見て、しばし感慨にふけった。5年前に優勝を決めた阪神タイガースとの試合にスタメン出場していた選手で、この日も先発メンバーに名を連ねていたのは、二塁手の山田哲人だけだったからだ。

 あらためて、ヤクルトが14年ぶりのリーグ優勝を決めた2015年10月2日の阪神戦に先発出場していた9人の顔ぶれ、そしてそれぞれの「その後」を見てみよう(年齢は2015年10月2日時点)。

一番センター:上田剛史(27歳)

 この年、プロ9年目の上田は7月に左太もも裏の張りで離脱するも、9月に入って復帰すると、終盤は一番センターに定着。自身にとって27歳の誕生日である10月2日の阪神戦では、1対1の同点で迎えた10回裏、2死三塁と一打サヨナラで優勝を決めるチャンスに、レフトフライに倒れた。

 今年はスタメン出場こそ少ないながらも、代走、守備固め、そして代打と、貴重なスーパーサブとして貢献。レフトの守備固めで出場した9月16日の横浜DeNAベイスターズ戦(神宮)で、9回2死からファウルフライをフェンス際でジャンピングキャッチした時に右足首を負傷し、翌日から登録抹消となっている。

二番サード:川端慎吾(27歳)

「バントをしない二番打者」として、この年はオールスター明けから二番に定着。規定打席以上では自身2年連続の3割台となる打率.336をマークし、プロ10年目で初の首位打者に輝くと、読売ジャイアンツを下したクライマックスシリーズ・ファイナルステージでは打率.467でMVPに選ばれた。

 2016年も3年連続の打率3割を記録するが、翌2017年に椎間板ヘルニアを発症。その後は思うような成績を残すことができず、今年1月には2度目となるヘルニアの手術を受けた。7月7日に一軍に上がり、25日の巨人戦(神宮)では代打でサヨナラ安打を放つも、主に代打で39試合に出場して打率.128、2打点の成績で、9月11日からはファームで調整を続けている。

三番セカンド:山田哲人(23歳)

 前年は主に一番バッターで打率.324、29本塁打の好成績を残し、ベストナインに輝くなど大ブレーク。この2015年はシーズン後半から三番に定着して、NPBでは13年ぶりのトリプルスリーを達成。当時としてはいずれもキャリアハイの打率.329、38本塁打、100打点、34盗塁で、本塁打王、盗塁王、MVPなどのタイトルを獲得した。

 翌2016年、さらに2018年と、NPB史上唯一となる通算3度のトリプルスリーを達成(盗塁王も通算3度)。2019年は打率こそ3割に届かなかったものの、4度目の「30-30」をマークした。今シーズンは上半身のコンディション不良で4年ぶりに登録を抹消されるなど、ここまで打率.271、11本塁打と苦しんでいる。

 先に書いたとおり、2015年、2020年とも10月2日の試合にスタメン出場したのは、この山田だけ。いずれもノーヒットに終わっている。

四番ファースト:畠山和洋(33歳)

 プロ15年目のこの年、オールスター明けから不動の四番バッターに定着。優勝を決めた阪神戦でも、初回に二番・川端の安打、三番・山田の四球でつくったチャンスで先制タイムリーを放つなど、日本人打者としての球団新記録となる105打点を挙げ、初の打点王に輝いた。

 その後は故障に泣かされ、2018年には代打5打席連続安打の球団タイ記録(のちに雄平が更新)を樹立し、ピンチヒッターとして存在感を発揮するが、2019年シーズンを最後に引退。現在はヤクルトの二軍打撃コーチを務めている。

五番レフト:ウラディミール・バレンティン(31歳)

 前年のシーズン終盤に受けた左アキレス腱手術の影響で出遅れ、4月24日の巨人戦(神宮)から戦列に加わるも、プレー中に負傷。左大腿直筋肉離れと診断され、その後は自宅のある米国で手術を受けた。リハビリを経て、ペナントレースが佳境を迎えていた9月18日の巨人戦(神宮)から復帰。来日5年目で初めて優勝の美酒に酔ったが、シーズンではわずか1本塁打に終わった。

 翌年から再びチームの主砲として4年連続で30本以上のアーチを架け、2018年には自身の持つ球団記録に並ぶ131打点で初の打点王に輝くも、2019年オフに退団。今季は福岡ソフトバンクホークスでプレーしている。

六番ライト:雄平(31歳)

 投手から外野手に転向して5年目の2014年に打率.316、23本塁打とブレークし、この2015年は開幕から四番を務めた。シーズン後半は五番、バレンティン復帰後は六番が定位置となり、10月2日の阪神戦では延長10回裏、2死一、三塁からライト線にサヨナラタイムリーを放って14年ぶりの優勝を決めた。

 2018年にはキャリアハイの打率.318をマークし、翌2019年も2年連続の2ケタとなる12本塁打を放ったが、今シーズンはここまで打率.223、0本塁打と精彩を欠き、現在はファームで調整中。

七番ショート:大引啓次(31歳)

 オリックス・バファローズ、北海道日本ハムファイターズを経て、FAでこの年からヤクルトに移籍。それまで不在だった正遊撃手の座に収まり、堅実な守備でプロ9年目にして初めての優勝に貢献した。

 その後は度重なる故障もあって、2018年には三塁手に転向。2019年限りで13年間の現役生活にピリオドを打った。今年2月には古巣・日本ハムの特別研修コーチとして、同球団の業務提携先であるテキサス・レンジャーズに派遣された。

八番キャッチャー:中村悠平(25歳)

 前年は自己最多の99試合に出場して打率.298をマーク。この2015年は正捕手としてシーズンを通してマスクをかぶり、初のベストナイン&ゴールデングラブ賞、そしてエースの石川雅規とともに最優秀バッテリー賞にも輝いた。

 翌年以降も正捕手として5年連続で100試合以上に出場も、今年は開幕戦当日にぎっくり腰で離脱。8月20日に復帰したのもつかの間、9月9日の広島戦(マツダ)で相手走者と交錯した際に負傷し、再び登録抹消となった。9月27日にイースタン・リーグの千葉ロッテマリーンズ戦(戸田)で実戦復帰し、一軍再昇格を見据えて調整を続けている。

九番ピッチャー:小川泰弘(25歳)

 ルーキーイヤーの2013年に16勝を挙げて最多勝、新人王などのタイトルを獲得。この年はエースの石川に次ぐ11勝をマークし、優勝を決めた阪神戦では勝ち星こそ付かなかったものの、6回無失点と堂々たるピッチングを見せた。

 その後は2ケタ勝利からは遠ざかったが、今年は8月15日のDeNA戦(横浜)で球団史上8人目のノーヒットノーランを達成するなど、優勝した2015年以来の2ケタ勝利に王手をかけている。

勝ち頭の石川は今も現役、カムバック賞の館山は昨季で引退

 優勝を決めた日の先発投手は小川だったが、13勝を挙げてこの年の勝ち頭となったのがサウスポーの石川。40歳になった今も現役で、3年ぶり9回目の開幕投手を務めた今季はなかなか勝ちが付かなかったものの、9月30日のDeNA戦(横浜)で自身通算172勝目となる、今季初勝利を挙げた。

 また、3度目のトミー・ジョン手術から復活して6勝を挙げ、カムバック賞に輝いた館山昌平は、昨年限りで現役を引退して現在は東北楽天ゴールデンイーグルスの二軍投手コーチ。プロ初勝利を皮切りに破竹の6連勝をマークしたアンダースローの山中浩史は、ヤクルトで現役を続けている。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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