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新天地で打率4割超! 元ヤクルト飯原誉士「現役にこだわってよかった」

菊田康彦フリーランスライター
今シーズンから生まれ故郷の栃木でプレーしている飯原(筆者撮影)

「野球を通して元気な姿を見せられるのは幸せなこと」

  昨年限りで東京ヤクルトスワローズを退団し、今シーズンから独立リーグのルートインBCリーグ、栃木ゴールデンブレーブスに活躍の場を移した飯原誉士(35歳)が、新天地で順調なスタートを切った。

 4月は全12試合中10試合に出場し、打率はチームトップの.429(28打数12安打)。11日の群馬ダイヤモンドペガサス戦では、ホームランも打った。

「ホント楽しいです。野球少年に戻った気分? 極端に言えばそうかもしれないです」

 チームカラーの金を基調としたユニフォームに身を包み、飯原はそう笑顔を浮かべる。栃木県小山市に生まれ、白鴎大から大学生・社会人ドラフト5巡指名でヤクルトに入団するまで、小山一筋で過ごした。そんな彼にとって、小山市をホームタウンとする県民球団はまさに「おらが街のチーム」だ。

「(地元で)知り合いがたくさん見に来てくれて、元気な姿を見せられるのが一番いいですね。ヤクルトを退団して『ホントに元気なのかな?』っていうふうに周りが思ってたところで、野球を通して元気な姿を見せられるっていうのは幸せなことです」

ヤクルトは“地元”のようなもの

 地元で「元気な姿」を見せたかったのはもちろんだが、飯原には他にもその姿を見せたかった人たちがいる。

「ヤクルトファンの方も(試合を見に)来てくれてますし、それも嬉しいですね。ヤクルトには12年もいたんで、“地元”のようなところがありますから」

 昨秋、そのヤクルトから戦力外通告を受けた際にはフロント入りの打診もあったというが、それを固辞して現役にこだわった。今改めて、その選択は間違っていなかったと話す。

「(現役にこだわって)ホントによかったです。今があるのはいろんな人のおかげなんですけど、ましてや地元でやらせてもらえてるっていうのは、すごく感謝しています」

 その地元、小山で今年初めて行われた公式戦には、BCリーグでは異例の4162人もの観衆が詰めかけた。その光景には、鳥肌が立つような思いがしたという。

「ここ(小山運動公園野球場)の開幕戦、4月8日の試合は(外野の)芝生席まで埋まったんで『おおっ!』ってなりましたね。(地元の)小山ですし、NPBから来てるっていう目で見られてると思うので、思ったよりも緊張感はあります。でも本当に楽しくというか、楽しく真剣にやらせてもらっています」

「村田さんには2000本安打を達成してもらいたい」

兼任コーチとして、若い選手には熱のこもった指導をする(筆者撮影)
兼任コーチとして、若い選手には熱のこもった指導をする(筆者撮影)

 現在の飯原は選手兼任コーチ。プレーをするだけでなく他の選手に指導し、試合に出場しない時はベースコーチにも立つ。その立場で、今シーズンは大きな目標が2つある。

「もちろんチームの優勝というのはありますけど、やっぱり僕がNPBに復帰するのと、(他の)選手をNPBに送り出すっていうことですね。それは1年間、変わらずに思ってやっていきたいです。今はコーチでも一生懸命やっているので、1人でも多く行ってもらいたいっていう気持ちが強いですね」

「送り出す」というのは、何も若い選手に限った話ではない。飯原が、NPBに復帰してほしいと願うベテランが、チームメイトにいる。

「村田さんにはなんとかNPBに戻って、2000本安打を達成してもらいたいっていうのは強く思います」

 横浜ベイスターズ、読売ジャイアンツで昨年まで15年間プレーし、通算2000安打にあと135本まで迫りながら戦力外通告を受け、飯原と同様に今季から栃木でプレーしている村田修一。自身も時にアドバイスを仰ぐこともあるという「松坂世代」のベテランに、なんとかNPB通算2000安打を達成してほしいというのが飯原の思いである。

「これだけお客さんが入るのも、村田さんのおかげです。せっかくこうやって一緒にプレーできてるわけだし、(グラウンド)整備とかも一緒にやってくれて、本当に一生懸命な姿を見てますから」

今年は登場曲と同じく「アグレッシブに」

 飯原はヤクルト時代と同様、新天地でも女性シンガー、BoAの歌う『Aggressive』を登場曲として使用している。そして今シーズン、自身のテーマに掲げているのもズバリ「アグレッシブに」だ。

「もっともっとアグレッシブに、いろんなことにチャレンジしていきたいです。もっと走れるなって思ったし、もっともっと攻めるというか、アグレッシブに行けるかなって。(ヤクルト時代の)最後のほうは、やっぱりどうしても守りに入っちゃう部分が強かったかもしれないです。『もっと行けたんじゃないかな、もっと走れたんじゃないかな』っていうのがあるんで、自分の体に鞭打つじゃないですけど、アグレッシブにトライしていきたいと思います」

 ヤクルト時代は2008年に自己最多の28盗塁をマークするも、最後の3年間は一軍での盗塁はゼロ。だが、今年は4月7日のシーズン開幕戦で初盗塁を決めるなど、新たな舞台で走塁においても積極的な姿勢を見せている。ここ数試合は出場から遠ざかっているが、ヤクルト時代と同じ背番号9のユニフォームで「アグレッシブに」プレーする飯原の姿を、1人でも多くのファンに見てもらいたい。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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