小川ヤクルト、因縁の「5・26雨中の楽天戦」に勝利
そういえば、あの時もこんな雨の試合だったな──。
昨日、5月26日に神宮球場で行われた東京ヤクルトスワローズ対東北楽天ゴールデンイーグルスの試合中に降り出した雨を見て、ふと4年前のことを思い出しました。
今から4年前の2010年5月26日、高田繁監督(現横浜DeNAベイスターズGM)率いるヤクルトは、昨日と同じく本拠地の神宮球場で楽天との試合に臨んでいました。その時点で交流戦開幕から8連敗を喫し、借金は18。ヤクルトの取材をするようになったばかりの筆者の目にも、チームのムードが良くないのは明らかでした。
「俺達ファンも頑張るから絶対、諦めないでくれ」
試合前のライトスタンドで、ヤクルトの私設応援団「ツバメ軍団」のメンバーがそう書かれた横断幕を掲げていたのを、よく覚えています。
しかし、そぼ降る雨の中で行われた試合は、ヤクルトが2点を先制しながら、またしても逆転負け。試合後、恒例の高田監督の会見が終わると、我々取材陣は球場内の会議室に集められました。趣旨は告げられませんでしたが、誰もがその内容を察知していました。果たせるかな、会議室に高田監督を伴って現れた鈴木正球団社長オーナー代行(当時)から発表されたのは高田監督の休養。小川淳司ヘッドコーチ(現監督)が監督代行として指揮を執ることが決まったのは、この時です。
奇しくも今年の「5・26」も、試合はヤクルトが2対0とリードして進んでいきました。7回表に楽天が1点を返した時には4年前のことが頭をよぎりましたが、今年のヤクルトは違いました。その裏、4年前はまだ一軍と二軍を往復してた森岡良介選手と、当時は高校生だった山田哲人選手のタイムリーで2点を追加。先発のプロ3年目・古野正人投手から岩橋慶侍投手、秋吉亮投手のルーキーコンビにつなぐリレーで逃げ切り、今シーズンの交流戦2勝目を挙げました。
改めて4年前の試合と昨日の試合の先発ラインナップを見比べてみると、時の流れを感じずにはいられません。
●2010年5月26日
- 左翼 福地寿樹
- 二塁 田中浩康
- 中堅 青木宣親
- 一塁 デントナ
- 右翼 ガイエル
- 三塁 宮本慎也
- 遊撃 藤本敦士
- 捕手 相川亮二
- 投手 館山昌平
●2014年5月26日
- 二塁 山田哲人
- 中堅 比屋根渉
- 三塁 川端慎吾
- DH バレンティン
- 右翼 雄平
- 一塁 畠山和洋
- 遊撃 荒木貴裕
- 捕手 中村悠平
- 左翼 飯原誉士
投手 古野正人
なんと1人としてカブっていないのです。2010年のスタメンの中では田中浩康選手、相川亮二選手、館山昌平投手の3人が現在もヤクルトの選手として在籍していますが、田中選手と相川選手は昨日の試合ではベンチ入りしていたものの、出場機会はなし。館山投手は今年4月に右ヒジなどの手術を受け、現在はリハビリ中です。
もっともわざわざ4年も前のことを思い出していたのは、筆者くらいだったのかもしれません。小川監督にしても当時からいたコーチや選手にしても、目の前の試合を必死で戦っていたわけですから、そんなことに思いを馳せる余裕はなかったはずです。
それでも昨日の試合後、4年前には1番打者で出場していた福地寿樹コーチに尋ねてみると、当時のことをこんなふうに振り返ってくれました。
「もう4年も経つんですね……。(高田監督の休養は)ビックリしました。僕もまだ選手で、やってるのは僕らだったし、そういう状況にしてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいでした。それまでは勝っても負けても、一流の相手とのギリギリのせめぎ合いみたいなのが楽しいっていう気持ちがあったんですよ。野球をやってる喜びっていうか、楽しさを感じてやっていたんですけど、あれをきっかけに楽しさみたいなものはなくなった気がしますね。1つ2つ勝っても喜べないというか“いやいや、まだまだ”っていう感じでやってました」
4年前はこの「5・26」を機に小川監督代行の指揮で驚異的な巻き返しを見せ、19あった借金を完済。Aクラス入りはかなわなかったものの、最終的に4つの貯金を作りました。今年は「5・26」を終えて借金は7つ。現在セ・リーグ5位のヤクルトが小川監督の下であの快進撃を再現できれば、クライマックスシリーズ進出にも十分に手が届くはずです。