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祝!「神宮のアイドル」つば九郎、成人(鳥)

菊田康彦フリーランスライター

1994年4月9日──今からちょうど20年前のこの日、1羽のツバメがデビューしました。そう、「神宮のアイドル」として現在も絶大な(?)人気を誇る東京ヤクルトスワローズのマスコット、つば九郎です。

4月5日のつば九郎の成人(鳥)式では小川監督らの同席で鏡割りが行われた
4月5日のつば九郎の成人(鳥)式では小川監督らの同席で鏡割りが行われた

デビューは15年ぶり日本一の翌年

実はこの日は、1994年のシーズン開幕戦当日。前年、野村克也監督の下で15年ぶりの日本一に輝いたヤクルトは、本拠地の神宮球場に阪神タイガースを迎えていました。その試合前のセレモニーでファンにお披露目されたのが、新キャラクターとして誕生したばかりのつば九郎だったのです。

筆者はそのセレモニーを、神宮球場の三塁側スタンドから見ていました。三塁側にいたのは阪神を応援するためではありません。今ではちょっと信じがたいことかもしれませんが一塁側、すなわちヤクルト側の指定席券は前売りの段階ですべて売り切れで、三塁側の席しか残っていなかったのです。15年ぶりに日本一のチャンピオンフラッグがスコアボード上に翻ったこの試合には、それだけ多くのヤクルトファンが詰めかけていたことになります。

応募総数3万4644通の中から命名

ヤクルトが、それまでペットマークとして採用していたキャラクターをリニューアルすると決めたのは、前年の夏のことでした。当時の資料を見返すと、公募が始まったのが7月。9月20日の締め切りまでに1万265通の応募があり、10月1日の「ペットマーク審査会」で選ばれたのが、東京都在住の男性がデザインしたキャラクターでした。もっともその時点ではまだ名前は決まっておらず、さらに応募総数3万4644通の中から「つば九郎」と命名。開幕前に、球団激励会で新マスコットとして紹介されていましたが、初めて神宮のファンの前に姿を見せたのがこの開幕の阪神戦でした。

あれから20年が経ち、そのつば九郎も首脳陣を除けば今やチーム最古参。2009年発売の「つば九郎のおなか」などの書籍に加え、2012年には音楽プロデューサーとしてシングル「つば九郎音頭 ~おとなのじじょう~」もリリース。2010年から都内各地を訪問している「つばさんぽ」では、つば九郎目当てのおっかけファンまで現れるほどの人気者になりました。その存在感は、プロ野球マスコット界でも中日ドラゴンズのドアラとともに群を抜いています。

成人(鳥)式には小川監督も参列

先日、4月5日の阪神戦終了後には、つば九郎の生誕20周年を祝う成人式ならぬ成鳥式(鳥なので!)が開催され、多くのファンのみならずヤクルトの衣笠剛球団社長兼オーナー代行や小川淳司監督らも参列しました。さらにホーム1400試合連続出場を達成した翌6日の試合後には「バースデーパーティー」が開かれ、20周年の軌跡を振り返るVTRが上映されましたが、改めて誕生時の姿を見てみるとこれが実にツバメっぽい(笑)。時に「ペンギン」と揶揄される現在の姿がウソのようにスリムで、表情も今より精悍。ウインクができたのも、その当時ならではのことでした。球団公式ホームページの「つば九郎のあゆみ」に、その頃の写真が掲載されているので、気になる方はチェックしてみてください。

もっとも、つば九郎の人気が上昇し始めたのは、自由奔放な振る舞いが目立つようになり、体型も徐々にメタボ化して「ゆるキャラ」としてのスタイルが確立されてから。今後も球団の顔として、エライ人に怒られない程度に(?)自由に暴れてもらいたいものです。つば九郎先生、改めて成人(鳥)おめでとうございます!

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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