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大谷翔平獲得の本気度を確認できるドジャースはJDマルティネスにQOを提示するのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズン完全復活を遂げたJDマルティネス選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【すでにFA2選手が前所属チームと契約合意】

 レンジャーズが現地時間11月1日に球団史上初めてワールドシリーズ制覇を飾り、翌2日から正式に2023-24年のオフシーズンがスタートしている。

 すでに日本でも報じられているように、大谷翔平選手を含めたMLB在籍日数が6年を超え、なおかつ今シーズン限りで契約が終了したすべての選手が11月2日にFAになった。

 そして同日にはブレーブスがジョー・ヒメネス投手(3年総額2600万ドル)と、またドジャースがマックス・マンシー選手(2年総額2400万ドル)との契約合意を発表している。

 ワールドシリーズ終了5日後までは前所属チームとしか契約できないとはいえ、これだけのスピード合意ができたということは、水面下で契約交渉を続けていたからに他ならない。

 エンジェルスもここまで大谷選手と契約交渉を行っている可能性が高いと思うが、彼らの独占的交渉期間は11月6日までに限られている。

【MLB公式サイトがQOを受ける選手を予想】

 現在はFA選手との契約合意以上に、チームもしくは選手(または双方)が保有している来シーズンの契約オプション権の行使、破棄の発表が続いている。

 現時点(11月4日)でジョーイ・ボット選手やランス・リン投手らのベテラン選手たちがチームからオプション権を破棄される一方で、ジャスティン・ターナー選手、マーカス・ストローマン投手、エデュアルド・ロドリゲス投手らは自らのオプション権を破棄してFA市場に加わっている。

 今後これらの動きに続くのが、11月6日(東部時間午後5時)までに明らかにしなければならないクォリファイングオファー(QO)の扱いだ。そしてQOの提示期限日を目前に控え、MLB公式サイトがQO提示を受けそうな選手たちを予想する記事を公開している。

【QO提示を五分五分だと予想するJDマルティネス選手】

 この記事ではQO提示が確実視される選手、五分五分な選手、提示の可能性がほぼない選手に分けて予想している。

 ちなみにQO提示を受ける資格を有するFA選手は、過去に一度もQO提示を受けたことがなく、今シーズン移籍することなく同じチーム(傘下マイナーも含む)に在籍していたことが条件となる。

 そしてこの条件をクリアしている大谷選手は提示が確実視される選手に、前田健太投手を提示の可能性がほぼない選手に振り分けられている。とりあえず今後の参考にしてほしい。

 ただ個人的に目を引いたのは、この2選手ではなくJDマルティネス選手へのQO提示が五分五分だと予想されていたことだ。実は彼がQO提示を受けるかどうかで、大谷選手の契約交渉に大きな影響を及ぼしそうだと考えているためだ。

【今シーズン完全復活を遂げた36歳のベテラン強打者】

 MLBの知識がある人なら聞き覚えのある選手だと思うが、MLBデビューを飾ったアストロズでは目立った活躍ができなかったが、タイガースに移籍1年目の2014年に、打率.315、23本塁打、75打点、OPS.912の好成績を残すことに成功。

 その後もダイヤモンドバックス、レッドソックスに在籍しながらシルバースラッガー賞3回、オールスター出場5回を記録するなど、すっかりMLB屈指の強打者の仲間入りを果たしている。

 だが2020年以降から打撃成績はやや下降線を辿り、レッドソックスと結んだ5年契約(総額1億1000万ドル)の終了に合わせ昨オフFAとなり、年俸1000万ドルの1年契約でドジャースと契約。

 そしてドジャースで打率.271、33本塁打、103打点、OPS.893を残し、オールスター戦の出場を果たすなど完全復活をアピール。QOを提示されてもまったく不思議ではない選手だ。

【2019年以降はDHを専門としているマルティネス選手】

 ちなみに各シーズンの年俸額上位125選手の平均で定められるQOの年俸額だが、今オフは2032.5万ドルに設定されている。マルティネス選手の今シーズン年俸額は前述通り1000万ドルだったので、倍以上の額になるわけだ。

 もちろん打撃復活を果たしたマルティネス選手なので、今オフに1000万ドル以上の年俸額で複数年契約を獲得することが可能であろう。それを裏づけるように、同じくMLB公式サイトで公開されている今オフのFA選手トップ25でマルティネス選手は9位にランクされている。

 だがその一方で、仮にドジャースがQOを提示した場合それを受諾する可能性も捨てきれないのだ。

 というのも、ドジャースで打撃復活できた理由の1つだといわれている、タイガース時代から個別指導を受けてきたロバート・バンスコイヨク打撃コーチの存在があるからだ。同コーチを全面的に信頼しているマルティネス選手からすれば、再びドジャースで一緒にやりたいという願望があったとしても何ら不思議ではないだろう。

 だがマルティネス選手のポジションは、大谷選手と同じDHなのだ。レッドソックス在籍時の2019年からほぼDHを専門にしており、今シーズンも113試合に出場し、DHの出場は110試合で、左翼で出場したのはわずか3試合(うち先発出場1試合)しかない。

 来シーズンはDHのみの出場が決まっている大谷選手をドジャースが獲得に成功するとしたならば、マルティネス選手を外野手に再コンバートするのはかなり難しく、完全にバッティングしてしまうわけだ。

 現在もメディアの間で大谷選手の契約先最有力候補だとされるドジャースが、大谷選手獲得にどこまで本気なのかを占う上でも、マルティネス選手がQOを提示されるかどうかに注目して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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