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10年ぶり三冠王すら視野に入り始めたアーロン・ジャッジが見据えるベーブ・ルース以来のもう1つの偉業

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
13日のレッドソックス戦でシーズン57本塁打を放ったアーロン・ジャッジ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今シーズン10度目のマルチ本塁打試合で記録到達まであと4本】

 現在大谷翔平選手と熾烈なア・リーグMVP争いを繰り広げているヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が現地時間9月13日に行われたレッドソックス戦で、今シーズン10度目となるマルチ本塁打(2本塁打)を記録し、チームの勝利に貢献している。

 この結果、ジャッジ選手は今シーズンの本塁打数を57まで伸ばし、2001年にバリー・ボンズ選手とサミー・ソーサ選手が達成して以来の年間60本塁打にあと3本、さらに1961年にロジャー・マリス選手が記録したア・リーグ年間本塁打記録まであと4本に迫った。

 ジャッジ選手はシーズン後半戦に入り、1本塁打辺り9.25打席ペースで本塁打を量産しており、ヤンキースの残り試合が30もあることから、偉業達成はほぼ確定な状況になってきた。

【ベテラン記者が指摘したベーブ・ルース選手以来の歴史的偉業】

 ところでこの日2本塁打を放ったジャッジ選手に関し、「USAトゥデイ」紙のボブ・ナイチンゲール記者が非常に興味深いツイートを投稿している。

 すでに本塁打王のタイトル争いでぶっちぎりの独走状態にあるジャッジ選手だが、MLB全体で見ても2位につけるカイル・シュワバー選手との差を20本差まで広げることに成功。ナイチンゲール記者によれば、20本差以上をつけて本塁打王を獲得した選手は、過去にベーブ・ルース選手しか存在しないというのだ。

 早速MLB記録専門サイトの「Baseball Reference.com」をチェックしたところ、同記者が指摘するように、近代野球と呼ばれる1900年以降で20本差以上をつけて本塁打王に輝いたのはルース選手1人だけだった。

 とりあえず2位と10本差以上つけて本塁打王に輝いた選手たちを表にまとめてみたので、別表を参照して欲しい。約120年の歴史の中でルース選手を含め9人(延べ16人)しか存在していない。

(筆者作成)
(筆者作成)

【他選手とは一線を画していたルース選手の本塁打数】

 表をご覧頂ければ理解できるように、ルース選手1人だけで10本差以上つけたシーズンが7回もある。特に1920年と1921年は2位と35本差をつけて本塁打王を獲得しており、本塁打を打つという点において当時のルース選手は、他選手と一線を画した存在だったことが理解できる。

 そしてルース選手が最後に20本差以上をつけたシーズンが1928年のことで、ルース選手はこの年54本塁打を記録し、2位の選手2人に23本差つけている。それ以降は1932年にジミー・フォックス選手が17本差で本塁打王を獲得したのが最大で、誰1人20本差以上離すことはできていない。

 ここ最近では2010年のホゼ・バティスタ選手が12本差で本塁打王を獲得したくらいで、現在のジャッジ選手の独走態勢自体が、すでに歴史的偉業といっていいのではないだろうか。

【カブレラ選手以来10年ぶりの三冠王達成も視野に】

 ジャッジ選手は本塁打王だけでなく打点部門でも、現時点でリーグ2位につけるホゼ・ラミレス選手に14差をつけてトップを走っており、ほぼ二冠王を手中にしている状況だが、さらに2012年のミギュエル・カブレラ選手以来の三冠王達成の可能性も出てきている。

 この日のレッドソックス戦で2本塁打を含む3安打を記録し、ジャッジ選手は6月17日以来に打率を.310台に乗せることに成功し、現在リーグ首位に立っているルイス・アライズ選手(.319)に9厘差まで詰め寄っている。

 このアライズ選手の他に、ザンダー・ボガーツ選手(.318)、ホゼ・アブレイユ選手(.312)が首位打者争いに絡んできそうだが、9月の月間打率で見てみると、ジャッジ選手(.457)とボガーツ選手(.471)がアライズ選手(.286)とアブレイユ選手(.308)を上回るペースで安打を記録しており、この2選手を中心に最後まで面白い争いになりそうだ。

 いずれにせよ今シーズンのジャッジ選手は、大谷選手に負けず劣らず歴史的偉業に満ち溢れているようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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