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40歳の川﨑宗則が現役続行宣言「来シーズンは20盗塁狙います!」

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
来シーズンを見据え自主トレで汗を流す川﨑宗則選手(筆者撮影)

【決して“不惑”ではない40歳を迎えた野球選手】

 日本ではよく40歳を“不惑”と表現する。いうまでもなく孔子が記した論語に登場する「四十にして惑わず」を引用したものだが、30代まで積み上げた人生経験を元に、迷うことなく人生を突き進んでいくという意味で、まさに適した表現として使われている。

 だが野球選手に限れば、不惑という表現は適さないように思う。40歳を過ぎた選手たちは年齢を重ねる度に現役引退と向き合わなければならず、むしろ“迷い続ける”年代といえるだろう。

 今シーズン開幕時にNPBには計11人(来日しなかったデニス・サファテ選手を含む)の40代選手が存在していたが、公式戦が終了した現時点で、松坂大輔投手や鳥谷敬選手を含めた7選手が、現役引退もしくは戦力外通告を受けている。

 それほど40歳を過ぎて現役生活を続けていくことは簡単なことではないのだ。

【迷うことなく現役続行を公言する川﨑宗則選手】

 そんな中NPBではないが、40歳のシーズンを終えた今も迷うことなく「来シーズンも現役を続けます」と公言する選手がいる。昨シーズン途中からBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに所属している川﨑宗則選手だ。

 シーズン終了後は人気者らしくTV解説やイベントなどに引っ張りだこの状態だが、すでに来シーズンを見据え、時間が許す限り精力的にトレーニングを続けている。

 取材に応じてもらった11月上旬も、BC栃木が拠点とする小山市でたった1人の自主トレを実施。バッティング練習やウェートトレなどを行い、汗を流していた。

一般の人たちに混じり軟式球しかないバッティングセンターで打撃練習を行う川﨑宗則選手(筆者撮影)
一般の人たちに混じり軟式球しかないバッティングセンターで打撃練習を行う川﨑宗則選手(筆者撮影)

【2016年以来フルシーズンを戦い抜く】

 一時は体調不良もありグラウンドから離れた時期もあったが、2019年に台湾リーグに再加入した味全ドラゴンズに電撃入団し、完全復活を果たすと、昨年はシーズン途中で練習生としてBC栃木の練習に参加し、そのまま正式に同チームに加入している。

 そして今シーズンもBC栃木との再契約が決まると、シーズン開幕からチームに合流し、独立リーグのため試合数が限られる中、全60試合中45試合に出場している。川﨑選手にとってフルシーズンを戦い抜いたのは、2016年のカブス在籍時以来のことだ。

 「非常に充実していたし、楽しかったです。野球と向き合いながら、プレー面でまだまだ伸びしろというかできないことが多いなと、いろんなことを感じました。野球はうまくいかないですよね。

 現役を続ければ続けるだけ(野球という競技が)難しいのが分かります。だから現役をやっている意味があるし、野球の難しさにどっぷりハマってます。

 僕としてはプレーヤーとして求める動きができる間は続けようと思ってます」

 笑顔で話す川﨑選手が野球と向き合う真摯な姿勢は、今もまったく変わっていない。

トレーニングする先々で地元住民の支援を受けている川﨑宗則選手(筆者撮影)
トレーニングする先々で地元住民の支援を受けている川﨑宗則選手(筆者撮影)

【独立リーグの経験は「僕の人生に繋がっていく」】

 以前に本欄で報告していることだが、現役再開後の川﨑選手は自らの意思でNPBと距離を置き、台湾リーグやBCリーグを主戦場にしてきた。

 もちろんNPBから比べれば環境面は明らかに見劣りするが、そんなことは意に介せず、川﨑選手は心底野球を楽しんでいる。

 前述の自主トレに関しても、小山市内の陸上競技場、軟式のバッティングセンター、スポーツジムを回りながら練習を行っており、NPBのように効率的に練習を行うのは不可能な状況だった。

 「環境が違うことが僕にとっては大きいですから。いろんな環境を知ることが非常に大事で、独立リーグというのはNPBでは味わえない、いろいろ新しいことを体験できているので非常にいいですね。

 確かに独立リーグは厳しい環境ですから、NPBやメジャーにいた時のように、どこでも練習できたりとか、そういうのがなかなかできないですけど、その中で工夫しながら自分でやれるというのが、これからの僕の人生に繋がっていくと思います」

 川﨑選手は練習に訪れた先々周りの人たちから励ましの声をかけられ、そうした交流も含めて不遇な環境での自主トレに何の不満も感じていない。

【NPBではできないシーズン中の家族との時間】

 また川﨑選手は、試合数の少ない独立リーグの環境をうまく活用し、シーズン中にもかかわらずNPBではほぼ不可能な、家族と充実した時間も過ごしている。

 学校や幼稚園が夏休みに入ると、福岡に住む家族を小山市に呼び寄せ、球場や練習場に家族を連れて行き、息子と一緒にトレーニングする動画や画像をSNS上で公開している。

 「家族をグラウンドに連れて行ったり、家族と一緒に練習できたり、それはアメリカで学びましたね。日本はどうしても仕事重視ってなりがちなんですけど、仕事も野球も人生を楽しむ一部に過ぎないんだと…。

 野球がすべてではなく野球も人生の一部なんだと、そういう風な捉え方をアメリカでできるようになりました。それを選手の全員がそう思う必要はないんですけど、僕はその方が居心地良いですね」

 そうした川﨑選手の考え方があったのも、独立リーグを選んだ要因の1つなのかもしれない。

【来シーズンの目標はずばり20盗塁】

 最後に来シーズンに向けた個人的な目標を尋ねたところ、40歳とは思えない意外な答えが返ってきた。

 「今シーズンはいろいろ閃いて、実はテーピングをしてプレーすることが多かったんですけど、テーピングしたら40歳の僕のハムストリングが少し伸びやすくなったという発見がありました(笑)。

 最近は朝脱毛してテーピングしやすいようにして、アキレス腱とハムストリングのテーピングすることをしっかり覚えましたので、来シーズンはもっともっとスピーディな動きを見せたいなと思います。

 今シーズンは10個盗塁したいと思いながら達成できたので、来年は41歳で20個目指したいと思います(笑)」

 来シーズンも川﨑選手の元気いっぱいのプレーに期待したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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