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前半戦はロジャー・マリスと全く同じ!平均打数で考察する大谷翔平の年間60本塁打の可能性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷翔平選手は年間60本塁打を達成できるのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【トレード市場で売り手に回ったエンジェルス】

 いよいよ8月に突入し、MLBの2021年シーズンも残すところ2ヶ月となった。

 7月30日のトレード期限を前に、ポストシーズンを見据えた各チームが戦力補強に着手する中、エンジェルスは売り手に回り、主力先発のアンドリュー・ヒーニー投手と主力リリーフのトニー・ワトソン投手を放出している。

 ここ最近のエンジェルスは勝率5割前後で推移しているものの、地区首位のアストロズから10ゲーム以上(8月1日時点で11.5ゲーム)離されている状況を考えれば、実質的にチームはポストシーズン進出を諦めたと言っていいだろう。

 そうなるとエンジェルス・ファンにとっての残りシーズンの楽しみは、間違いなく大谷翔平選手ということになってくる。特に本塁打王争いでは、現在も37本塁打でMLB単独トップを走り続け、エンジェルスとして2000年のトニー・グラウス選手以来のタイトル奪取の期待がかかる。

 ファンにとってこれ以上の楽しみはないだろう。

【年間60本塁打は本当に可能なのか?】

 シーズン後半戦が始まった当初は打撃不振に陥り、周囲を心配させた大谷選手だったが、1日の休養を挟み再び本塁打を打ち始め、現時点で2位のブラディミール・ゲレロJr.選手に4本差をつけている。

 また打点部門でも現時点で82まで伸ばし、MLBトップを走るゲレロJr.選手に1差まで肉薄。二冠王の可能性も出てきたため、さらにファンを喜ばせている。

 メディアの中には、今もMLB史上6人目の年間60本塁打を期待する声が挙がっている。だが本欄ですでに指摘しているように、シーズン前半戦で33本塁打以上を放った打者は、そのほとんどが後半戦で打率を下降させている。

 シーズン途中で選手会がストライキに入り、シーズンを全うできなかった1994年のケン・グリフィーJr.選手とマット・ウィリアムス選手を除き、延べ10選手が前半戦で33本塁打以上を記録しながら、年間60本塁打を達成できたのは、2001年のバリー・ボンズ選手、1998年のマーク・マグワイア選手とサミー・ソーサ選手、1961年のロジャー・マリス選手──の4人に止まっている。

 改めて各選手の打率の推移をまとめた表を掲載しておくので、ぜひ参考にしてほしい。

(筆者作成)
(筆者作成)

【打率以上に重要になってくる平均打数】

 だが上記4選手にしても、ボンズ選手を除けば皆後半戦で打率を落としているのだ。それでも年間60本塁打以上を記録しているのだから、打率の推移だけで判断するのはやや早計だとの考えに至った。

 もちろん前半戦で33本塁打以上を放っていれば、後半戦で各チームはその打者に対し警戒心を強め慎重に攻めてくるのだから、打率も下がるし、四球が増え打数も減ってくることになる。

 その中で本塁打を放っていくには、効率よく本塁打を打っていかねばならない。それを示す指標こそ、打率ではなく1本塁打辺りの平均打数だと考えた。

 そこで上記の表から1994年の2選手を除いた延べ10選手と、大谷選手のシーズン前半戦と後半戦の平均打数を改めて表にまとめてみた。ちなみに大谷選手の後半戦のデータは、7月31日終了時点のものだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

【大谷選手の前半戦平均打数はマリス選手と全く同じ】

 如何だろう。年間60本塁打以上放っている4選手は、全員が後半戦に入っても平均打数がほぼ変わっていない。その一方で60本塁打に届いていない打者は、一様に後半戦で平均打数が大幅に上昇している。

 残念ながら大谷選手もその1人であり、このままの状態で推移していけば、60本塁打に届くのはかなり難しくなってくるのは明らかだ。現状は2001年のルイス・ゴンサレス選手に類似しており、予想本塁打数は57本前後ということになる。

 だがシーズン前半戦の平均打数は、1961年に61本塁打を放ったマリス選手と全く同じなのだ。つまり後半戦の平均打数が10.32に近づいていければ、60本塁打は可能ということになる。

 果たして大谷選手は残り2ヶ月間で、どこまで平均打数を下げることができるだろうか。期待しながら見守りたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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