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年俸33億円超え7投手のうち4人が集結したドジャースの行く末は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ドジャースへのトレードが決まったマックス・シャーザー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【シャーザー投手を獲得したドジャースのチーム事情】

 現地時間の7月30日午後4時(東部時間)にトレード期限を迎える中、当日だけで27件の駆け込みトレードが成立した。

 今シーズンに地区優勝9連覇とワールドシリーズ連覇を目指しているドジャースも、緊急補強を断行し、ナショナルズからマックス・シャーザー投手とトレイ・ターナー選手を獲得している。

 これ以外にも、ロイヤルズからダニー・ダフィ投手を獲得しており、明らかに先発投手陣の整備に乗り出している。

 というのも、ここ最近のドジャース先発陣は完全に火の車状態だった。

 今シーズンのドジャースは、クレイトン・カーショー投手、トレバー・バウアー投手、ウォーカー・ビューラー投手、フリオ・ウリアス投手、ダスティン・メイ投手の先発ローテーションで開幕を迎えたが、まずメイ投手が開幕1ヶ月後に右ヒジ靱帯損傷で戦線を離脱。その後トミージョン手術を受け、今シーズン中の復帰はなくなった。

 続いてカーショー投手が7月に入り、左ヒジと上腕の違和感で負傷者リスト入りし、ようやく模擬試合に登板できるようになったものの、復帰までもう少し時間がかかる状態にある。

 さらに女性への暴行容疑でMLBから謹慎処分を受けている、バウアー投手も未だに復帰の目処が立たず、是が非でも計算できる先発投手を補強せざるを得ない状況にあった。

【トレード拒否権を破棄したシャーザー投手】

 シャーザー投手は間違いなく、現時点でMLBを代表する先発投手の1人だ。2013年のタイガース時代に初のサイヤング賞を受賞すると、2015年にナショナルズにFA移籍以降も、2016年から2連続でサイヤング賞を獲得。37歳になった今シーズンも、オールスター戦でナ・リーグの先発投手を任されるなど、今も第一線で活躍を続ける。

 ところがシーズン後半戦が始まり7月18日に登板した後、上腕三頭筋の違和感で次回登板を回避するアクシデントに見舞われたものの、チームは即座にシャーザー投手の右ヒジ、右肩のMRI検査を実施し、健康的な問題がないことをアピール。29日に登板し、6回を3安打1失点の好投で今シーズン8勝目を挙げていた。

 5月中旬から東地区下位に低迷しているナショナルズには、今シーズン限りで契約が切れるシャーザー投手をトレードに出すとの噂が続いていた一方で、トレード拒否権を有していた彼自身も、トレードに前向きな姿勢を見せていた。

 現在はワイルドカード圏内を維持し、地区首位奪取さえ狙える位置に入るドジャースなら、ポストシーズンに進出する可能性が高く、シャーザー投手にとってもトレード拒否権を破棄してでも移籍する価値があるチームだったというわけだ。

【年俸33億円超の投手が4人に!】

 シャーザー投手が加わり、さらにカーショー投手とバウアー投手が復帰してくれば、MLB屈指の先発投手陣が完成することになる。そうなれば短期決戦のポストシーズンを優位に戦えるようになり、他チームにとってはこれ以上の脅威はないだろう。

 単に顔触れが豪華なだけではない。その年俸額もとんでもないことになってしまった。

 今シーズンの年俸がMLB4位の3450万3480ドル(約38億円)のシャーザー投手が加わったことで、同8位3200万ドル(約35億円)のデビッド・プライス投手、同9位3133万3333ドル(約34億円)のバウアー投手、同10位3100万1ドル(約34億円)のカーショー投手と、年俸3000万ドル(約33億円)超えの選手が4人も集結してしまったのだ。

 ちなみにUSAトゥデー紙のデータベースによれば、今シーズンの年俸が3000万ドルを超える選手は12人(うち投手は7人)しかおらず、その中の4人がドジャースに集まることになった。アルバート・プホルス選手も今シーズンの年俸は3000万ドルだったので、実質は5人集まっているのだが、エンジェルスからDFAされた時点でFAとなり、ドジャースはMLB最低年俸で再契約している。

【シーズンオフに残る投手は誰なのか?】

 どんなかたちでシーズンを終えたとしても、ドジャースが来シーズンにこれら4投手をすべてチームに残すのはほぼ不可能と言っていいだろう。

 シャーザー投手とカーショー投手は今シーズン限りで契約が切れるわけだが、彼らと再契約するにはそれ相応の高額年俸を用意しなければならない。

 また来シーズンまで契約が残るプライス投手は今シーズン、基本的にリリーフに回っており、ピークを過ぎた感は否めない。年俸の半額は旧所属先のレッドソックスが負担しているとはいえ、是が非でも残しておきたい存在とは言い切れない。

 また昨オフに3年契約で合意したバウアー投手は、契約解除できるオプション権を有しているので、本人次第でチームを去ることも考えられる。ただ謹慎処分を受けている現状を考えれば、他チームで現在の内容以上の契約を得られそうにないので、残留する道を選ぶ可能性が高い。

 またドジャースは2023年シーズン終了後にFAになるコディ・ベリンジャー選手との大型契約の契約延長を目指していると言われており、早ければ今シーズンオフにもその予算を用意しなければならない。

 果たして高額年俸4投手の内、何人の投手が来シーズンもドジャースのユニフォームに袖を通すことになるのだろうか。

 残りシーズンでの4投手の活躍も、彼らの将来を大きく左右することになりそうだ。そうした意味でも彼らの投球に注目していきたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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