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あと2本塁打で再びベーブ・ルースを超えようとしている大谷翔平が控える本塁打記録とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン前半戦の本塁打数でもベーブ・ルース選手を超えようとしている大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【シーズン前半戦で松井秀喜選手に並んだ大谷選手】

 すでに日米の主要メディアが大々的に報じているように、大谷翔平選手が現地時間の7月4日に行われたオリオールズ戦で今シーズン31号本塁打を放ち、2004年に松井秀喜選手が記録した日本人選手の年間最多本塁打記録に並んだ。

 7月上旬の時点で松井選手に並んでしまっただけでなく、MLBの本塁打部門でトップを走り続ける大谷選手の長打力は、最早日本人という枠を完全に超えてしまっている。

 そして現在の本塁打量産ペースは、MLB史上でも名だたるスラッガーたちに匹敵するものであり、度々比較されるベーブ・ルース選手の記録を再び追い越そうとしているのをご存知だろうか。

【シーズン前半戦で31本塁打以上記録したのは20人】

 大谷選手はオールスター戦まで公式戦を6試合残して31本塁打に達したわけだが、オールスター戦前のいわゆるシーズン前半戦で31本塁打以上の本塁打を放った打者は、MLB史上でも大谷選手以外では20人(延べ26人)しか存在していない。

 とりあえず表にまとめてみたので参照して欲しい。

(筆者作成)
(筆者作成)

 さらに32本塁打以上に絞ると、13人(延べ18人)になり、33本塁打以上になれば、10人(延べ12人)──と、これから大谷選手が本塁打を積み重ねれば重ねるほど、彼は更なるエリートクラスへの仲間入りをしていくことになるのだ。

 それだけ今シーズンの大谷選手は、MLBの歴史に名を刻むようなスラッガーになれる打撃を披露しているということだ。メディアやファンが驚喜乱舞するのも当然のことだろう。

【20人中11人がステロイド時代の選手たち】

 しかも、だ。上記20人のうち過半数の11人が、いわゆるステロイド時代(1980年代から2000年代後半)に活躍してきた選手たちだ。2010年以降では、クリス・デービス選手(2013年)、クリスチャン・イエリチ選手(2019年)、ホゼ・バティスタ選手(2011年)の3人しかいないという事実は重みがある。

 さらにMLBは今シーズンから低反発球を導入したことで、極端な投高打低傾向で推移しているにもかかわらずだ。大谷選手の価値が、さらに輝きを増しているのが理解できるはずだ。

 その一方で、ステロイド時代以前の選手たちで31本塁打以上記録している選手も6人存在しているが、そのうち5人が戦後に活躍した選手たちで、戦前の選手はベーブ・ルース選手しかいない。しかも彼は3度にわたり32本塁打を記録しており、当時の彼が突出した選手だったことがこの点からも明らかだろう。

 そんなルース選手を、あと2本塁打で抜き去ることができるのだ。ただ1921年のルース選手は投手として2試合しか登板していないし、1928年は登板無し、1930年も1試合の登板に止まっている。二刀流という意味では、現在の大谷選手とまったく状況が違っている。

【ア・リーグ記録も十分に狙える位置に】

 また現在の大谷選手は、直近の6試合で放った6安打すべてが本塁打という圧巻の打撃を披露しており、2013年のデービス選手と1969年のレジー・ジャクソン選手が記録した37本塁打というア・リーグ記録に追いつく可能性も十分にある。

 果たして大谷選手は、どんなかたちでシーズン前半戦を締めくくってくれるのだろうか。とにかく彼の打席に注目して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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