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オリックスのジョーンズも参加! MLBの黒人選手、OBが言葉を紡いだビデオメッセージの中身とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
CC・サバシア氏が投稿したビデオメッセージ(同氏のツイッターより引用)

【CC・サバシア氏がビデオメッセージを投稿】

 昨シーズン限りで現役引退したCC・サバシア氏が現地時間の6月15日、ツイッター上にビデオメッセージを投稿した。

 55秒間に及ぶメッセージは、MLBで活躍した黒人の現役選手、OBが言葉をつなぎ、人種差別に抗議し、「Black Lives Matter(黒人の命は重要だ)」運動を呼び掛けている。

 このビデオには全部で42名が参加しており、その中には今シーズンからオリックスに移籍したアダム・ジョーンズ選手も含まれている。

【メッセージの全文を紹介】

 彼らが紡いだメッセージの全文は以下のようなものだ。

 「我々はずっと、自分たちの(人種差別に対する)請願が正しい時、正しい場所、正しいやり方ではないと言われ続けてきました。そして我々は“待つんだ”とも言われ続けてきました。

 しかし我々は、マーティン・ルーサー・キング牧師が、待つという言葉はほぼ“never(何もしていない)”と同じ意味だということを我々に警告してくれたことを胸に刻んでいます。

 我々はもう待つことはしません。自分たちの声をさらに大きくしていくでしょう。それを可能としている我々全員のために、そしてそれができなかった人たちすべてのために…。

 (白人警官が死去した黒人の首を膝で押さえつけた)8分46秒間は、膝を上げるのに十分な時間でした。

 正しいことをするために、何か声を上げるために、黒人社会の痛みを認知してもらうために…。

 皆さんは、ずっと我々を応援してくれました。しかし今こそあなた方の応援を必要としている時はありません。一緒に声を上げてくれることを我々は必要としています。

 Black Lives Matter

 我々は変化を求めて声を上げます。そして皆さんは我々のために声を上げてください。そうした声が我々を1つに団結させるでしょう。

 ワンチーム、ワンドリーム…。

 今こそ変化すべき時です」

【遂に動き始めたMLBの黒人選手たち】

 MLBに携わってきた黒人の現役選手、OBたちがこうして1つになってメッセージを発信するのは、これまでになかったことだといっていい。

 2017年にドナルド・トランプ大統領が国歌斉唱時に片膝をつく行為を行ったNFL選手たちを徹底的に批難したのを機に、大統領とアスリートの間で一触即発の大論争にまで発展した際も、NBAに膝つき行為が拡大していく一方で、MLBではブルース・マックスウェル選手(当時アスレチックス)が追随しただけで、他の黒人選手は冷静に対処していた。

 しかしミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件が、完全に潮目を変えてしまった。

 今でも国中で人種差別の抗議活動が続き、それに触発されるように、トリイ・ハンター氏がラジオ番組に出演し、ボストンで度重なる人種差別的な中傷を受け、契約には常にボストンへのトレード拒否権を盛り込んでいた過去を告白。これを受けレッドソックスは、本拠地球場でそうした事例を確認していることを認める声明を発表するに至っている。

 最近ではメッツのドミニク・スミス選手が人種差別に対するメッセージをツイッターに投稿するなど、MLBからも声を上げる選手たちが確実に増え始めていた。

 今回の彼らのメッセージも、彼らが1つになって動き始めた証と捉えていいだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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