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米スポーツ界で一足先にシーズン再開を決めたNASCARが他の主要スポーツの試金石になる?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今年はトランプ大統領夫妻もNASCARの人気イベント「デイトナ500」に参加(写真:ロイター/アフロ)

【米人気スポーツの1つがシーズン再開を発表】

 米国の人気スポーツの1つ、ストックカーレースのNASCARが現地時間の4月30日、5月17日からのシーズン再開を正式発表した。同組織の公式サイトに、その詳細が掲載されている。

 現在もMLBなどの主要スポーツがシーズン再開の目処が立っていない中でのNASCARの決断は、その動向を含めて他リーグから関心を集めることになりそうだ。

【現時点では2箇所での7イベントのみが確定】

 NASCARによれば、現時点で実施が決まっているのは、5月17日から27日までの11イベントのみだ。これらのイベントは、サウスカロライナ州ダーリントンとノースカロライナ州シャーロットの2箇所で開催される予定だ。

 またイベントはすべて無観客で実施され、FOX系の地上波もしくはケーブルおよび衛星放送で生中継される。3月中旬から米国内ですべてのスポーツイベントが活動休止して以来、先週末に実施されたNFLドラフトを除けば、初の本格的なスポーツイベントとなる、

 ちなみに通常のNASCARは米国南東部を中心に全国各地のレース場を転戦しているが、今回の11イベント以降については、今後の状況を見ながら判断するとしている。

【イベント実施はあくまで異例の“コロナ仕様”】

 シーズン再開といっても、米国の現状を考えれば、通常開催は不可能だ。NASCARも新型コロナウイルス対策を考慮した、“コロナ仕様”によるイベント実施を打ち出している。

 ・イベントは原則1日開催(最後に予定されている「コカコーラ600」以外は予選、練習走行を実施せず)

 ・イベント実施中は全スタッフに防疫器具の装着を義務づけ

 ・レース場施設への入場時、退出時、さらに施設内で全スタッフの健康チェックを実施

 ・イベント期間中の全スタッフのソーシャル・ディスタンス(感染防御に繋がる一定間隔)の確保

 ・レース場施設への入場制限

 以上の5つの対策が実施されることになっている。

【イベントの成否が主要スポーツ再開の試金石に】

 今回のシーズン再開にあたり、NASCARのスティーブ・オドネル上席副社長は、以下のように見解を述べている。

 「NASCARおよび各レーシング・チームは、レースが再開できることを待ち侘びていた一方で、競技を再開するという決断について強い責任を感じている。

 NASCARは、レーサーやチームスタッフ、イベント・スタッフ、開催地の人々の安全を確保した環境の中でレースを再開するだろう。我々は、レース再開に向け先例のない支援をしてきれた業界関係者のみならず、開催都市、州、政府の関係者および医療従事者に感謝している。そして我々のレースを多くのファンが観戦してくれることを楽しみしている」

 完全バーチャル化で実施されたNFLのドラフトと違い、今回は多くの人々を開催場所に集めることになり、間違いなく感染リスクが生じてしまう。

しかも今回イベントが開催される2つの州は米国内でも比較的感染者数が少ない州ではあるのだが、ノースカロライナ州は現在も感染者数が着実に増加傾向にあるのだ。

 果たしてNASCARの決断は正しかったのか。いずれにせよ彼らの成否が、今後の主要スポーツの試金石になることだけは間違いないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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