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MLBの5月中旬開幕は非現実的? ブルージェイズ球団社長が明かした本音

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン開幕前に最低4週間の準備期間の必要性を明らかにしたシャピーロ球団社長(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【キャンプ地に残るのは山口俊ら3選手のみ】

 ブルージェイズのマーク・シャピーロ球団社長が3月22日(現地時間)、メディアに対し電話会見を実施し、現状説明を行った。

 その中でシャピーロ社長は、スプリングトレーニングが中断されて以降、ほぼすべての選手、コーチ、スタッフがキャンプ施設のあるフロリダを離れたが、入国に関する問題で山口俊投手、柳賢振投手、ラファエル・ドリス投手がキャンプ地に残っていることを明らかにした。

 ブルージェイズの番記者の1人、『トロント・サン』紙のロブ・ロングリー記者がツイッターで報告している。

 さらにロングリー記者の記事によれば、3投手の他に約20人のマイナーリーグ選手もキャンプ地に残っていることから、チームスタッフは彼らとの濃厚接触を回避しながら、彼らに施設を開放していることも合わせて明らかにしている。

【スプリングトレーニング中断で準備不足】

 こうした状況はブルージェイズに限ったことではない。

 MLBが3月12日にオープン戦の中止と2週間の開幕延期を発表した当初は、多くのチームがキャンプ地に残りトレーニングを続ける選択をしていた。

 ところが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が3月15日に、250人以上が集まるイベントについて今後8週間は中止もしくは延期を要請するガイダンスを発表したことを受け、MLBもガイダンスに従い、さらに開幕を延期することを発表。各チームともにトレーニング継続が厳しい状況に置かれた。

 現在は各チームに判断は任されているが、ブルージェイズのようにキャンプ地に残った選手たちにキャンプ施設を開放しているチームがあれば、マーリンズのようにキャンプ施設および本拠地球場を閉鎖し、すべての選手、スタッフを自宅待機させているチームもある。

 いずれにせよ開幕直前にスプリングトレーニングが中断されていることから、どのチームも準備不足は否めない。あるチーム関係者は中断したばかりの頃、以下のように説明している。

 「野手は(オープン戦の)出場機会が増え始め、疲れが溜まり始めてきたのでいい休養になるかもしれないですし、もう試合でプレーできるコンディションまで上がっていると思います。でも先発投手はここからあと2試合ほど登板し、開幕に備える予定だったので、みんな登板数が十分ではないです」

【シャピーロ社長が明らかにした私見】

 そんな状況を踏まえ、シャピーロ社長は電話会見で、シーズンが再開される場合は最低でも4週間のスプリングトレーニングを実施することが必要になるとの私見を述べている。

 これは至って現実的な意見だといえるだろう。現状ではほとんどの選手が自宅に戻り、個別に自主トレを続ける状態に逆戻りしている。

 しかもカリフォルニア州やニューヨーク州などでは自宅待機命令が出されており、当然のごとくスポーツジムやトレーニング施設も休業を余儀なくされており、選手たちはトレーニングの場を確保するのさえ困難な状況に置かれているのだ。

 こうした厳しい環境の中で8週間後の開幕を目指し、実戦でプレーできないままコンディションを維持するなんて、誰の目から見ても夢物語だと理解できるだろう。

【現実的には早くても6月中旬以降】

 あくまでCDCが今後どのようなガイダンスを発表するかにかかわってくるが、とりあえず8週間後の5月中旬にイベント自粛要請が解除されたとしても、そこからすぐにシーズン開幕することは不可能だ。やはり開幕に備える準備期間が必要だ。

 その準備期間が、シャピーロ社長が話すように最低でも4週間は必要になると考えれば、シーズン開幕は否応なしに6月中旬以降にずれ込むしかない。

 むしろその見方も、かなり楽観的過ぎるかもしれない。繰り返すがシャピーロ社長の私見は、“最低でも”4週間は必要だとしているのだ。しかもここ最近の米国内では新型コロナウイルスの感染が急激に拡大しており、まったく先が見通せない状況だ。

 もう1995年以来の短縮シーズンになるのは確定的な状況だが、今シーズンのMLBは果たして何試合実施することができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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