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やはり本物だった! ドラフト指名当時の輝きを取り戻したカーター・スチュワート・ジュニアの可能性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
初参加のキャンプでも順調な調整を続けていたスチュワート投手(筆者撮影)

【堂々たる1軍デビュー】

 昨年5月に鳴り物入りでソフトバンク入りしたカーター・スチュワート・ジュニア投手が、3月20日のロッテ戦で、遂に1軍デビューを飾った。

 結果は5回を投げ、3安打、1失点、5三振、5四球。やや制球力に不安な面を覗かせたものの、無観客の練習試合だったとはいえ、失点はブランドン・レアード投手のソロ本塁打のみに抑えた投球は、文句なしの内容だったといえよう。

 キャンプ中にプロ2年目の目標として「できれば1軍で投げたい」と話してくれたが、今回の投球を見る限り、意外に早い時期に公式戦でも1軍デビューできそうな魅力を感じさせてくれた。

【ドラフト指名当時の球速、回転数に迫る】

 この練習試合はDAZNが生中継していたのだが、画面には球速の他に、回転数も表示されていた。それがスチュワート投手の球の性質を確認する上で、貴重な参考データとなった。

 そうしたデータからしっかり確認できたのが、スチュワート投手が2年前にMLBでドラフト1巡目(全体の8番目)指名を受けたことが決してフロックでないことを証明するだけの高い潜在能力だった。

 2年前にドラフト指名を受けた当時のスチュワート投手のスカウティング・レポートは、「155キロ前後の速球に加えカーブが一級品で、その回転数は毎分3000回転を超え、MLBでもトップクラスにランクされる」というものだった。

 残念ながらロッテ戦では155キロに到達することはなかったが、まだ3月にもかかわらず150キロ台の速球を連発。シーズンが進むにつれ、まだまだ球速は上がってくる可能性は大だ。

 それ以上に凄かったのが、やはりカーブだった。スカウティング・レポートにあるように、MLBでもトップクラスの回転数を記録していた。

 自分がチェックした限り、5回に入りやや回転数が落ちる傾向にあったものの、1回のレアード選手に投じた3球目のカーブが3131回転だったのをマックスに、大半のカーブが3000回転を上回っていた。

 ちなみに昨シーズンのMLBで、カーブの平均回転数が3000回転を超えている投手は、わずか12人しか存在しない、それほどスチュワート投手のカーブは、MLBでも最大級の評価を受けられる一級品なのだ。

【昨年とは明らかな変貌をみせる】

 だが昨年のスチュワート投手は、まったく違った評価を受けていた。

 フィジカルチェックで右手首の異常を指摘され、結局指名先のブレーブスと契約交渉がうまくいかずプロ入りを断念。翌年のドラフト指名を目指し、地元フロリダの短大に進学していた。

 だが短大での彼の投球は別人になっていた。当時のスカウティング・レポートを確認しても、平均球速は140キロ台後半まで落ち込んでいるし、他のレポートでもカーブのキレも落ちていると指摘されたいた。

 この時点でメディアや関係者の評価も下がり、「もうドラフト1巡目指名を受けられる逸材ではなくなった」というものに変わっていた。

 そうした状況を踏まえた上で、代理人のスコット・ボラス氏はソフトバンクに打診をし、ドラフト直前に契約合意に至ったというわけだ。

 ただ昨年の米国での評価も決して間違っておらず、ソフトバンク入り後は3軍で登板を重ねてきたが、やはり球速は140キロ台中盤に留まり、ドラフト指名を受けた当時の投球は完全に影を潜めていた。

【MLB関係者も地団駄を踏む?】

 つまり現在のスチュワート投手は、ソフトバンクで練習を積みながら2年前の輝きを取り戻しつつあるのだ。

 あるMLB関係者から聞いた噂話ではあるが、短大時代のスチュワート投手は基本的にチームから指導を受けていなかったらしいのだ。もしそれが真実ならば、一度崩れた投球を自分1人で立て直すのは簡単なことではない。

 それがソフトバンク入り後は多くのコーチ、スタッフに囲まれ、彼らと対話を重ねながら納得した上でトレーニングを続けており、本人も「日本に来たのは正しい選択だった」と話しているほどだ。

 現在のスチュワート投手なら、間違いなくMLBで再びドラフト1巡目指名を受けられていただろう。それだけに今後の成長にもますます期待が高まってくる。

 いずれにせよMLB関係者たちは、スチュワート投手の復活に地団駄を踏んでいることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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