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好調エヴェッサで主力スコアラーとして台頭し始めた橋本拓哉のシューターとしての覚醒

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シューターとして覚醒し始めた大阪エヴェッサの橋本拓哉選手(筆者撮影)

【チーム力差を見せつけ新潟アルビレックスBBに連勝】

 2020年最初の試合となったBリーグ第16節で、大阪エヴェッサは新潟アルビレックスBBとホームで対戦し、第1戦を89対61、第2戦を92対74と大勝で連勝を飾った。

 アルビレックスは第1戦の第3クォーター途中で、主力のラモント・ハミルトン選手が負傷で戦線離脱のアクシデントに見舞われた影響もあったが、両試合ともにエヴェッサが徐々にアルビレックスを圧倒し、一方的な試合展開に持ち込んだ。

 西地区で琉球ゴールデンキングスを1ゲーム差で追うエヴェッサに対し、中地区で4位に沈むアルビレックス。両チームの現在のチーム状況をそのまま反映する試合内容となった。

【両試合で活躍が光った日本人選手たち】

 前節で2試合とも接戦を演じながらも、リーグ3連覇を目指すアルバルク東京に連敗したエヴェッサ。天日謙作HCはアルバルクとの差はないとする一方で、試合の中で個人の力で打開しようとボール共有が緩むチーム・オフェンスの改善を指摘していた。

 またチーム・キャプテンのアイラ・ブラウン選手や、主力のジョシュ・ハレルソン選手らも、彼らに続く日本人選手台頭の必要性を力説。念願のチャンピオンシップ初進出を狙う上でも、更なるチーム力向上は必要不可欠としている。

 そうした面でアルビレックス2試合は、日本人選手の活躍が光った。第1戦では橋本拓哉選手がチーム2番目の20得点を奪う活躍をみせると、第2戦ではブラウン選手がわずか6得点に終わりながらも、日本人選手(帰化選手のブラウン選手を除く)でチーム全得点の過半数以上となる47点を奪い、外国籍選手らを見事にサポートしている。

【シューターとして一本立ちし始めた橋本】

 そんな日本人選手の中でも目を見張る進化を見せているのが、同チームのシューターとして期待されている橋本選手だ。天日HCも「こういうゲーム(アルビレックス戦第1試合)があるというのは成長する選手にとってすごく大事なので、いつでもこうなれるように貪欲に練習して、試合で積極的にいいシュートを選んで打つということをやっていって欲しいですね」と期待を寄せる。

 そんなコーチの期待通り、橋本選手は徐々にシューターとして覚醒し始めている。今シーズンここまでの平均得点は9.3得点(自己最高ペース)だが、12月以降の試合に限ると12試合で11.8得点まで跳ね上がり、着実にチームの主要得点源になりつつあるのだ。

オフェンスのみならずディフェンスでも全力プレーを続ける(筆者撮影)
オフェンスのみならずディフェンスでも全力プレーを続ける(筆者撮影)

【天日HCに課せられた新しい役割】

 実のところシーズンの橋本選手は、天日HCから従来とは違う役割を課せられている。これまではドリブルからドライブを仕掛け自らシュートを狙ったり、オープンスペースを創出するPG的な役割が主だったが、今シーズンはボール運び役から完全に外れ、コート中を駆け回りながらオープンスペースに回り込み、シュートを狙うウィングに専念している。

 シーズン開幕当初は新しい役割に馴染み切れず戸惑いもあったようだが、前述通りシューターとしての才能が開花し始めている。

 橋本選手も現在のプレーを、以下のように自己分析している。

 「天日さんが求めているのが僕のアウトサイドシュートだと思うので、それはシーズン前から言われてきたことなので練習からずっとそれだけを意識して、以前とは違うプレースタイルになったのかなと思います。

 それまではアタックが自分のストロングポイントだと思っていました。でも今は中がしっかりしているので、僕にアウトサイドシュートという仕事を与えられているという使命感があるので、後はディフェンスを頑張って走るというのは(シーズンで)共通してやろうかなと思っています。

 前の自分とは真逆になりましたね。最初は絶対にアタックするというマインドだったんですけど、今はまずリングを見て(シュートを)打とうという感じです」

【夏はシュート練習に明け暮れる日々】

 橋本選手の変貌ぶりはデータでも実証できる。これまで3点シュート数が最多だったのは、2016-17シーズンの100本だったが、今シーズンはすでに98本の3点シュートを放っており、次試合で自己記録更新が確実な状況だ。

 また3点シュート成功率も初めて4割台をキープしており、より確実性の高いシュートを打てるようになっている。

 その裏には夏に行ったひたむきなシュート練習があったようだ。

 「(夏の練習で)天日さんからこれまでの自分のプレーを怒られて、『お前はシュート上手いんだからシュートを打て』と…。天日さんはあんまり誉めてくれないんですけど(笑)、シュートだけは誉めてくれたので、打ち切ろうという考えになりました。

 夏は(練習が)きつくて、人生で初めてシュートしすぎてテーピング巻きました(笑)。腕が上がらないくらいシュートを打っていたので、その結果かなと思います」

【昨シーズンの悔しい思いを胸にコートに立つ】

 橋本選手といえば、昨シーズン開幕前に自らの不祥事で1年間の出場停止処分を課せられ、結局処分は短縮されたものの、わずか2試合の出場に留まった。

 処分明けの橋本選手は出場停止中に社会活動を行うなどして「人間的に成長できた」としながらも、バスケの面では「何もできなかった」と悔しさを滲ませていた。それだけに今シーズンは、昨シーズンの分まで成長したいという強い思いもあることだろう。

 橋本選手が天日HCの求めるようなシューターになった時こそ、エヴェッサは更なる強さを発揮することになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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