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MLB屈指の人気マスコットがグラウンドから姿を消す?! フィリーズがファナティックの使用権を巡り提訴

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ファナティックの使用権でフィリーズが提訴(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB屈指の人気マスコット「ファナティック」】

 MLBファンなら、フィリーズの人気マスコット「ファナティック」を知らない人はいないだろう。多くのチームのマスコットを揃える中で元祖的な存在で、その人気もMLB屈指だ。

 過去には日米野球などで来日経験もあり、日本人ファンも楽しませている。日本でもその認知度はかなり高いように思う。

 そんなファナティックが、来シーズンにもグラウンドから姿を消す危機に陥っているというのだ。ロイター通信が2日、報じている。

【デザイン会社が来年6月で使用権消滅と主張】

 きっかけはファナティックをデザインした『ハリソン/エリクソン社』から、フィリーズ側に出された要求がきっかけだった。

 ファナティックは1978年4月に誕生し、その後フィリーズと同社は1984年にその使用権について契約合意し、フィリーズから同社に21万2000ドル(現在のレートで約2300万円)が支払われていた。

 ところが同社は最近になって1984年合意の見直しとこれまの追加使用料の支払いがなければ、著作権侵害で提訴するとともに、ファナティックは2020年6月でFAとなり、フィリーズの使用権も消滅すると主張してきたのだ。

【生涯使用権を主張するフィリーズ】

 もちろんフィリーズとしては、デザイン会社側の要求に納得できるはずもない。1984年合意は現在も有効で、デザイン会社や他のスポーツチームがファナティックを使用、ファナティック関連グッズを販売することも認められていないと主張し、2日にデザイン会社を提訴する手続きを行った。

 またフィリーズは1984年合意で、ファナティックの生涯使用権を得ているとともに、これまで41年間にわたりマスコットへの投資を続けており、デザイン会社がフィリーズ・ファンからファナティックを奪う権利はないと主張している。

【沈黙するしかないファナティック】

 かつてファナティックを担当しているパフォーマーと遭遇する機会を得て、彼にそれとなく取材を申し込んだことがあったのだが、元々ファナティックは一切言葉を話さないマスコットであり、「夢を壊すから」という理由でやんわり断られた。

 いうまでもなく今回の訴訟問題についても、ファナティック本人が意思表示をすることはないだろう。だがこれから彼は、どんな思いでグラウンドに立たねばならないのだろうか。多少切なさすら感じてしまう。

 とりあえずは裁判の行方を見守るしかなさそうだが、今回一番の被害者は間違いなくファナティックではないだろうか。 

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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