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大谷翔平の今季年俸額19%増は妥当? 本当の意味でチーム評価が確認できるのは2年目オフ以降だ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
大谷選手の年俸を注目すべきなのは今シーズンではなく来シーズンだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【大谷翔平の今季年俸は前年比19%増】

 すでに各メディアが報じているように、エンゼルスが年俸調停権を有しないMLB在籍期間3年未満の選手の1人として、大谷翔平選手と年俸65万ドル(約7200万円…日本円換算はメディアによって変化)で今シーズンの契約を結んだ。これはMLBの最低年俸額54万5000ドル(約6000万円)からスタートした前年と比較して、わずか19%増に留まっている。

 MLB界に二刀流選手というインパクトを与え、さらに新人王を獲得した選手の評価としては妥当なのかと疑う日本人ファンもいることだろう。NPBなら新人王を受賞したような選手なら、当然のごとく賞獲得のボーナスを含め大幅アップしてもおかしくないところだ。年俸3000万ドル(約33億円)を超える選手すら存在しているMLBとは思えない倹約ぶりだ。

【MLBは2年目のジンクスを嫌う?】

 こちらもメディアが解説しているように、MLB在籍期間が3年を超え年俸調停権を得るまで、選手たちの年俸は抑えられる傾向なのがMLBの特徴だ。つまりMLBでは1年間だけの活躍では大きな評価を受けることはない。米国でも「2年目のジンクス」という表現があるように、すべての選手が活躍した翌年に前年並みのパフォーマンスができるわけではない。それはNPBも同じだ。複数年活躍できることが証明されないと、本当の意味で評価を受けることはないのだ。

 それは裏を返せば、2年目のシーズンもしっかり成績を残せば、年俸調停権を得る前でもチームからある程度の評価を得られるようになるということだ。実は大谷選手のみならず、1年終了後の契約ではどの選手も横並びの状態だが、2年目オフ以降、3年目の年俸から確実に差が生じ始めてくるのだ。

【チームの評価を確認できるのは2年目オフ以降】

 繰り返しになるが、MLB在籍期間が3年未満の選手の契約はチーム側が完全に主導権を握っている。それだけに年俸調停権を得る前の方が、その年俸額に選手に対するチームの評価、期待度が如実に表れるといえるのだ。

 例えばマイク・トラウト選手とクリス・ブライアント選手は年俸調停権取得前に、大幅な年俸アップに成功した選手として知られている。2人の年俸額の推移は以下の通りだ。

 ●マイク・トラウト選手

 1年目(MLB在籍期間83日) : 49万2500ドル

 2年目(同1年70日)     : 51万ドル(前年比3.6%増)

 3年目(同2年70日)     : 100万ドル(同96.1%増、年俸調停権取得前の選手として史上最高額)

 4年目(同3年70日)     : 608万3000ドル(同508.0%増、年俸調停を避け前年3月に6年総額1億4450万ドルの契約延長に合意)

 ●クリス・ブライアント選手

 1年目(MLB在籍期間171日): 47万1448ドル

 2年目(同1年171日)    : 65万2000ドル(前年比38.3%増)

 3年目(同2年171日)    : 105万ドル(同61.0%増、トラウト選手を抜いて史上最高額)

 4年目(同3年171日)    : 1085万ドル(同933.3%増、年俸調停権取得1年目の史上最高額)

 如何だろう。両選手が年俸調停権取得前に高額年俸を獲得しているのが理解できるだろう。ブライアント選手の場合2年目から38.3%増を達成しているが、これはかなりのレアケースだ。ただNPBと比較すれば、1年目に新人王獲得、オールスター戦出場を果たしている選手としては増加率は決して高くない。

 ここで理解して欲しいのはトラウト選手、ブライアント選手のような若手トップ選手であれば、2年連続でしっかり成績を残せば、ある程度の評価を受け、シーズン3年目で100万ドルの大台に乗せることができるのだ。現時点でMLB内での大谷選手の評価はこれら2選手に匹敵するものだ。今シーズンの活躍次第では2選手と肩を並べることができるはずだ。

【大谷もトラウト、ブライアント並みの評価を受けることができるか?】

 つまり大谷投手も2年目シーズン終了後、3年目の年俸でどんな額を得るかで、エンゼルスの彼に対する評価を確認することができるはずだ。まずは2年目シーズンで、大谷選手がチームの期待通りの活躍をするというのが絶対条件になってくる。

 ただ今シーズンの大谷選手は打者専任になるため、二刀流として本来のパフォーマンスを披露することができない。それがどういった影響を及ぼすのかも気になるところではある。

 果たして大谷選手は、トラウト選手やブライアント選手のような王道を歩んでいくことができるのだろうか。さらにはブライアント選手の年俸調停権取得前の最高額を上回ることができるのか。まずは今シーズンの活躍ぶりを注視したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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