日本高野連に届いて欲しい! 先駆けて球数制限導入を決めた全日本軟式野球連盟・宗像専務理事の言葉
今年春の県大会で球数制限の試験導入を発表していた新潟県高野連に対し、日本高野連が理事会を開き、再考を求める決定を下したことが今なお世を賑わせている。
すでに本欄でも報告させてもらっているように、新潟県高野連は長年にわたり県一丸となって青少年野球界の改善に取り組んでおり、あくまでその一環として球数制限導入を決定したもので、時代の潮流を意識した単なる思いつきではなく、県の総意であることを理解して欲しい。だからこそ新潟県高野連は日本高野連の決定に対し、3月末まで検討を続けていく方針を示しているのだ。
ただ日本高野連は単に再考を求めるだけではなく、新潟県高野連も招聘し4月から投入制限について検討する有識者会議を開催することを明らかにしており、新潟県高野連にも配慮している部分はあるのは確かだ。だが高校野球における投手の投げ過ぎはすでに何年も前から社会問題にもなっており、そうした状況も合わせ新潟県高野連はすでに“待ったなしの状態”だと考えたから、独自で球数制限を導入しようと決めたわけだ。やはり日本高野連の対応はかなり後手であるのは否定できないだろう。
奇しくもちょうど時を同じくして、軟式野球を統轄する『全日本軟式野球連盟』は今月14日に評議員会を開催し、今年から小学生を対象とした全国大会で球数制限を導入することを決定している。
すでにこのニュースは大手メディアが報じているので詳細は省くが、まずは連盟が先導して全国大会で球数制限を導入していきながら1年間の猶予期間を設け、各都道府県の支部でも地方大会で導入を期待しながら、来年から本格的に球数制限を徹底していきたい方針だ。さらに将来的には小学生のみならず、中学生や女子野球にも拡大していきたいとしている。つまり軟式野球界では統轄する全国組織が率先して球数制限導入に乗り出したのだ。
今回の決定に関し、全日本軟式野球連盟の宗像豊巳(むなかた・とよみ)専務理事は以下のように説明してくれた。
「我々は小学生の選手を預かっている以上、整形外科医の先生を含め多くの専門家の方々が言われるように、未成熟児として骨が完璧なものになっていない中で投げさせるのは疲労が溜まり、障害に繋がってくるのというのはデータ的にも明らかです。今のところ1人の投手が勝つために1試合7イニングを100球から130球くらい投げているんです。当然障害が出てくるという観点から、やはり“待ったなしの状態”は確かですよね
特に中学生、高校生よりも小学生に関しては、危険な状態になるというのは確かですよね。いろいろな先生方から4割から5割の選手たちがひじや肩に違和感があり、障害が生じていると言われています。これでは全日本軟式野球連盟は何をしているんだという話になってしまう。恐ろしいことです。そうした負の遺産をつくってはダメなので、早めに解消していくということですよね」
今年に限っては投球制限を全国大会のみに限定したのは、各支部やチームの事情を配慮したためだ。投球制限を導入すれば、必然的に複数の投手を用意しなければならない。全国大会に出場できるようなチームなら連戦を考慮して複数の投手が揃っているだろうが、選手数の少ないチームとしては容易なことではない。まずは1年間の猶予期間の中で、指導者たちの意識改革を促せればと考えているようだ。
宗像専務理事も前向きに捉えている。
「連盟の役員の方は(投球制限に)前向きでしょうけど、むしろ1万2000弱の(加盟)チームの監督、コーチの人たちはやはり勝つために1人のピッチャーに投げさせたいという勝利至上主義があるわけですよね。そうなると1人のエースピッチャーをつくり上げて、彼に完投させるというのが勝利の方程式になってきます。それを考えると、チーム編成の上で2人以上(の投手)をつくれと言うのは難しい事情もあるし、温度差もあると思います。
でも監督さんや指導者の方々は投球制限を決めないと子供たちが危ない状況にあると感じている方はかなり多いと思います。整形外科の先生や理学療法士の先生たちがそういう話を野球教室などを通じて話してくれていますから、今は随分認識されていると思います。
(球数制限導入を発表した)2月14日以降2週間ほど経っていますが、大きな苦情というか、何を言っているんだと反対してくる方は少ないようです。なので前向きな姿勢で取り組まれていくと思います」
今回は小学生だけが対象になっているが、中学生、高校生の置かれた状況に大きな差はない。青少年野球界はまさに“待ったなしの状態”なのではないか。ならば全日本軟式野球連盟にできて日本高野連ができないわけはないはすだ。先導するのは各県の高野連ではなく、日本高野連であるべきだ。